第81話 まちのなかでしゅ

 馬車に乗ったまま、大通りをゆっくりと抜けていく。大通りや、その合間にある細い路地の両脇や片側には商店や屋台が建ち並び、人々が行き来していて活気も凄い。

 十代前半くらいだろうか。割と若い子たちが革の防具と武器を携え、屋台に群がっている。どうやらお肉の串焼きらしく、手渡されたものをその場でかじりついていた。


 どうみても冒険者のスタイルなんだが……この国って冒険者って必要だったっけ? 

 そういえば、Eランクくらいまでは必要と言っていたような……?


 考えてもわからないことは素直に聞くべし! ということで、博識な大人しんじゅうたちに聞いたところ、ごく稀に発生するホーンラビットやスライムの変異種の討伐をしたり、森に群生している薬草採取の仕事。他にも町の中で人手不足解消を狙い、短期間ではあるがそれらの仕事を請け負う子たちがあの若い子たちなんだそうな。

 あれか、期間限定のバイトか。


「ランクアップを目指す子たちは、ここで基礎を学んでから他国へと移動するのだよ」

「基礎さえしっかりと学んでおけば、他国へ行ってもそのまま冒険者としてやっていけるからね」

「ほえ~」


 バトラーさんとテトさんの説明に納得する。確かに弱い魔物しか出ない国ならば、きっちりと基礎を学ぶことができるものね。


「逆に、高齢や回復魔法、液体薬ポーションで治らない怪我をして引退した冒険者がこの国にやってきて、ギルド職員になって若い子たちに基礎を教えたり、武器の扱い方を教えたりもしているわ」

「もちろん魔法もね」

「しょうなんれしゅね」


 それは凄いな。

 つうか、回復魔法や液体薬ポーションでも治らない怪我もあるんだね。ファンタジーあるあるで、欠損した腕とか目が生えたり治ったりするのかと思ってたよ。

 そう言うと、ないわけじゃないけれど、欠損を治す魔法は光魔法の最上級にあたるので、神族の中でもごく一部の人間しか使えないせいで、神官などの神殿に属する人たちには使えない。液体薬ポーションも同じく作れる人間が数人しかおらず、材料も特殊だったり死の森の浅いところや魔の森の最奥でしか採れない薬草やキノコ、果物が必要だったりするので、バカ高い値段になってしまうため、買えない人ばかりなんだとさ。

 買えたとしてもお金を持っている商人や貴族、冒険者でもギリギリAランク以上という、無理ゲーすぎる値段だそうな。

 そりゃあ、欠損したら冒険者を辞めざるを得ないよね!

 で、辞めたあとの就職先が自分がやりたかったことだったり、ギルド職員になって後進を育てることを決める人が多いらしい――自分が培ってきた技術や冒険者のノウハウを伝える意味で。

 なるほどねぇ。ちゃんと考えられているんだね。

 ふむふむと感心していたら、ベッドの絵が描かれている看板がぶら下がった場所に停まる馬車。しかも、真っ黒い狼の絵もついてるし。

 なるほど、ステイシーさんが経営している、〝黒狼の憩い亭〟系列店ってことですな。本当にあちこちにあるんだなあ。

 ステイシーさん本人はいないだろうけれど、一族の人か信頼を得た人がいるはず。どんな人がいるのかな。熊さんの料理人さんみたいな人もいるのかな。

どちらにしても楽しみー♪



***


いつも以上に短いいですが、キリがいいのでご勘弁を。


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