第十話 選択

——《冒険者ギルド》——


 ギルドに到着した俺たちはそのまま掲示板へと向かい、どうやら先ほど貼り出された依頼書を確認していた。


「これなんかどうですか?【スライムの群れの討伐】。簡単そうですよ。」

「キングならまだしも普通のスライムだしなぁ。普通の大人なら農具振り回してるだけで駆除できるぞ。こんなん自分で駆除するのが面倒だからギルドに依頼した奴だろ。・・・これはどうだ?【遺跡に現れた巨大ゴーレムの討伐】。」

「さすがに今の私では少し厳しいと思います。足を引っ張ってしまうかと。」

「まあ確かに流石にこのレベルは早いか。ぶっちゃけオーガと戦ったこと自体早いからな。」


 俺たちは今日受けるクエストを悩んでいたとき——


「お!ライと駆け出しの子じゃないか!お前たちもクエスト選びに悩んでるのか?」


 後ろから聞き慣れたクッソ面倒臭い声が聞こえ、俺の肩にポンと手を置いた。


「・・・なんだエリック?今忙しいんだ。あっち行け!シッシッ。」

「うわっ。ひでぇ奴だな。」


 このチャラい男の名前はエリック。青い鎧を見に纏い、背中には大剣を携えている。いつもはこいつも自分のパーティーと一緒にいるはずなんだが。


「ああ?パーティーは今日みんな休みだよ。たまには休息も必要だからな。」

「じゃあお前はなんでここにいるんだよ。」

「やる事なくて暇なんだよな。特定の趣味がある訳でもないし。やっぱ冒険者ならクエストしてなきゃな。」

「そうか。頑張れよ!1人で。」

 

 俺はコイツとの会話を切り上げ、また掲示板の方へと向き直りクエストを選ぶ。


「おいおい。2人だと何かと不安だろ?どうだ?今回は俺もパーティーに入れてくれないか?」

「寝言は寝て言え。」

「そう硬いこと言うなって!なあ駆け出しの、えーと・・・そう!ソラちゃん!!」

「サラです。」

「サラちゃん!駆け出しだとやっぱ不安だろ?少人数だったら尚更だ。俺はそこのいけすかないクソ野郎より早く冒険者を始めたんだ。腕には自信があるぜ?」

「言っとくが、俺たちは今まで何回か2人でクエスト達成してるからな?お前の助けなんてお呼びじゃないんだよ。」

「ウルセェ!お前に聞いてねぇ!!」


 遂に逆切れしやがった。どんだけ1人でクエストに行きたくないんだ。しつこく迫られているサラも困ってるし、そろそろ手を出した方がいいな。


「えっと・・・私はやっぱり人数が多い方が安心かな・・・って。」


 そう言った後にサラは申し訳なさそうにこちらを見る。


「だろだろ!やっぱこう言うのは助け合いだもんな!」

「お前俺が金ない時にクエスト同行しなかったよな?」

「さあ!それじゃあ受注するクエストを選ぼうぜ!」

「無視するなよ。」


 エリックは俺の言葉を無視して掲示板に目を通しだす。だが残念ながら受注するクエストはもう決まっている。さっきコイツの不快な声を聞いた時にこのクエストを思い出し、貼り出されているか探していた。


「あ!ライさんクエスト決まってたんですか?」

「なに?どんなクエストなんだ?出来るだけ骨のあるクエストに・・・【マンドラゴラの採取】?」

「ああ。悪いが今回は俺1人で事足りるかもな。」


 俺は手に持った依頼書をクエスト受注カウンターへと持って行き、許可証の発行を求めた。おすすめ道具の"耳栓"は必要ない。

————

———

——


——《伏魔の森》——



「ギィヤアアアァァァァァァァァ!!!!!」


 森一帯に聞くに耐えないおぞましい悲鳴が響き渡る。俺はその悲鳴を発する原因を自分の風魔法で小さな竜巻のようにして取り囲み、動きを封じたところでそれを掴み取る。

 マンドラゴラ。根が人の顔のような形をしており、先端は二つに分かれて足のようになっている不気味な植物。普段は土に埋まっており、成熟すると自分でそこらを歩きだすが、引っこ抜かれると悲鳴を上げ、それを聞いた者は精神に異常をきたし、最悪の場合死に至る。

 俺はそのマンドラゴラを手で掴み、耳を手で必死に塞いでいるサラとエリックの元に向かった。

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