第九話 朝
「シスター!サラお姉ちゃんから手紙となんか荷物が届いたよー!」
教会の子供たちが手紙と包みを持って聖堂に入る。そこには祭壇に向かって何やらブツブツと何かを喋っているシスターの姿があった。
「宿泊用のお金を忘れるなんて。気づいて町に仕送りしたのも村を出てから3日後だしあの子の元まで届くにはもっとかかるわ。あれだけのお金じゃろくな宿にも泊まれない。」
「・・・・シスター?」
「まさかそれまでずっと野宿していたんじゃ!いや!あの子の元までお金がしっかりと届いたかもわからない!まさか今も路地裏で生活してるんじゃ!?」
「シスター!お姉ちゃんから手紙が届いたよー!」
「こうなったら私自ら町まで!!」
「シスター!!!」
子供たちの呼びかけにようやくシスターは気付く。だが自分の送り出した子供がロクにお金も持っていないとなればこうなるのも無理はない。
「あら貴方たちどうしたの?」
「だからお姉ちゃんから手紙と荷物が届いたんだってばー!」
「!。あの子からの手紙!!」
シスターは子供達から渡された手紙の封を切り、中を確認した。
——拝啓 シスターと子供たちへ
みんな元気ですか。私は元気です。お手紙遅れて申し訳ありません。ハチノミ村は辺境の村なため、そこ宛の便が少なく、出すまでに時間が経ってしまいました。シスターは気付いているかもしれませんが、もしかしたら部屋にお金を忘れているかも知れません。初めは泊まる宿がなくて焦りましたが、ライ=アルレイドさんという先輩の冒険者の方とクエストへ行き、その報酬でなんとかことなきを得ました。今はそのライさんのパーティーに入れてもらっています。初めの頃は大変でしたが、何度かクエストをこなす内、だんだんとこの生活に慣れ始めています。今後も村の皆さんや仲間の冒険者さんの期待に応えられるよう、頑張っていきたいと思います。お体にお気をつけ下さい。
サラ=ウィズルネットより
P.S. この前クラーケンの討伐クエストで海に行ったとき、漁師の人からお礼にとお魚を頂きました。この手紙を送る前日に頂いた、箱には開封するまで氷魔法によって冷凍されているの、よければみんなでお早めにお食べ下さい。
シスターはサラからの手紙を読み終わると、安心したかのように息をはいた。
「サラお姉ちゃん無事で良かったね!」
「魚だって!お刺身にする?」
「日にちが経ってるから焼き魚は煮物ね!」
「・・・・良かった・・・。」
——《東の町シラクス》——
冒険者の朝は早い。時計を見ると時間は10時過ぎ。俺はベットから降り自室を出て、寝癖のついた頭をかきながらリビングへと向かう。
そこにはソファーに座り、本を読んでいるサラの姿があった。
「あ!おはようございます!朝食は食べますか?」
「ああ、食べる。」
「わかりました!今すぐ温めますので!」
「すまん。ありがとう。」
その数分後、机に座った俺の前に温められた朝食が並べられる。
「いっつもすまないな。」
「いえ、住まわせてもらってるんです。これぐらい当然です。そもそも今日の朝食当番は私ですし。」
一週間ほど前。俺たちの、と言っても今は俺だけだが、パーティーに新しいメンバーが加入した。名前はサラ=ウィズルネット。
俺のパーティーメンバーは全員、この広さはそこそこある俺の借家に住み、シェアハウスのようにして暮らしているため、宿屋をまだ見つけてないという彼女もこの家に迎え入れた。
「何の本を読んでたんだ?前まで読んでいたのとは違うようだが。」
「あ、これですか?ギルドのカーナさんに同じ魔法使いのよしみで簡単な魔導書を一冊貸してもらったんですけど、これがなかなか難しくて。」
「お前が貸りたってことは火属性と雷属性の魔導書か?」
「はい。火と雷は私の適正属性の一つですから。ライさんの適正は風属性と土属性でしたっけ?」
「いや、土に関してはあの木の根を操ること以外はサッパリだ。だから俺の適正は風属性だけ。」
「そうなんですか?でもあの根だけでもかなり強力だと思いますよ。」
「まあ一応気にいってはいるからな。」
そんな何気ない会話を交わしながら、俺は朝食を食べ終わり箸を置く。
「ごちそうさん。」
「おそまつさまです。今日もギルドに行くんですか?」
「ン?ああ、もちろん。今日はちょうどクエストが多く張り出される日だからな。稼げそうなのあれば良いんだがなぁ。」
「わかりました。では早めに出た方がいいですね。」
「茶碗は自分で洗うから支度してこい。」
「はい。」
そう言って彼女は装備を整えるために自室に戻っていった。
サラはとてもいい子だった。俺以外変人のこの家において、まさにオアシスと言って良い存在になるだろう。アイツらが戻ってきたときに驚く表情が目に浮かぶ。
俺は朝食の茶碗や皿を洗い、自室に戻って装備を整えた。俺は比較的軽装備だから、そこまで時間はかからない。
俺が部屋を出ると、新調したローブに身を包み、ロッドを持ったサラがすでに玄関で待っていた。
「んじゃ出るか。」
「はい。」
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