15話 体育祭

 体育祭準備は文化祭準備ほど大変ではない。そのため生徒会の仕事は当日がメインとなっている。事前準備は2つあり、まず1つ目は生徒会と先生の話し合い。2つ目はクラス旗の配置する位置を決める事。先生方と話すことは、生徒の誘導や体育祭で使う道具の配置。クラス旗は体育祭の最後に順位を発表する。最優秀賞は来年度まで学校に飾られることになっている。また3年生最後の仕事なので、先輩方が大抵の仕事は行ってくれる。だから1年生は特に行う仕事がない。




 ホームルームで体育祭に出場する競技を決める。競技は男子200mリレー、女子100mリレー、障害物競走、背中渡り、二人三脚、棒取り(女)、男女100mリレー。




 俺と優輝はクラス対抗男子200mリレーに出場することが決まった。また伊藤が棒取り、森本とシャルロットはクラス対抗女子100mリレーに出場する。そして伊藤を除く4人はクラス対抗男女100mリレーに出場することが決まった。




「だいくんに上野よろしくね」




「よろしく、結衣にシャルロット」




「こちらこそよろしくお願いします」




「俺たちの連携で1位取ろうぜ」




「「「おぉー!」」」




 俺も含めて全員本気で1位を取りに行く雰囲気。そのため毎日放課後リレーの練習をすることになる。俺は100m13秒。優輝は100m12秒。森本とシャルロットは100m15.5秒。全員そこそこのタイムなので、バトンパスとかでどれだけタイムを縮められるかが体育祭までの課題。











 体育祭が始まる3日前まで毎日リレーの練習をした。全員なかなか上達ができたと思う。伊藤はいつも俺たちの練習を見ていてくれて、悪い点などを言ってくれる。伊藤からのアドバイスがすごく役に立ったと思っている。




 生徒会の仕事で先生方と話した時は特にトラブルとかもなく終わる。クラス旗の配置の方でもめてしまったため、体育祭当日まで早朝登校などをすることになってしまった。だけど先輩たちのフォローもあって、俺はリレーに集中することができた。











 体育祭当日、俺はクラスではなく生徒会専用の部屋で仕事をしている。仕事と言う仕事もないが、先生や親御さんが来た時の対応をしなくてはいけない。そのため1年生と2年生が待機するのが毎年の恒例らしい。




「大輔くんは何に出るの?」




「俺は男子リレーと男女リレーです。楓先輩はどの競技に出るのですか?」




「私は何にも出ないわよ」




「え? それってありなんですか?」




「無しに決まってるでしょ! でも今年はやらないわ」




「そうですか。来年は期待してますね」




「そうね。大輔くんも頑張ってね」




「はい」




 楓先輩に応援してもらったところで、クラス対抗男子200mリレーが始まる1つ前の種目になったので、移動する。俺は3走者目で、優輝がアンカーだ。2走者目の人は陸上部なので、足を引っ張らないようにしたい。




 1走者目の子は3番目で2走者目に渡した。俺がバトンをもらうまで待っていると、隣の男子が




「俺が勝ったら森本さんに告白するからな」




 よくわからない奴が俺に宣言してすぐ、バトンが回ってきた。その時は2番手になっていて




「一ノ瀬頼んだ」




「任せろ」




 俺が走り始めると先程話しかけてきた奴が後ろからものすごいスピードで追いかけてくる。さっき言われたことで、闘志がより出た。俺はいつも以上のスピードを出して、1番手に後少しと言うところで優輝にバトンを渡す。バスケ部でレギュラーの優輝が他クラスの男子に負けることはなく、男子200mリレーは1位で終わった。




「大輔くんに上野くん、やりましたね」




「だいくんに上野おめでとう!」




「ゆうくんに一ノ瀬おめでと」




「「ありがとう!」」




「結衣にシャルロットも頑張れ」




「「当然です」」




 俺たちのリレーの後、昼食が入って午後一発目は棒倒し。伊藤はよく頑張っていたけど、初戦敗退で終わった。その後のクラス対抗女子100mリレーは2位で終わり、最後のクラス対抗男女リレーに入る。




 森本→俺→シャルロット→優輝




 の順番。会場に入る前に俺たち5人で円陣を組もうとしたら




「私も入っていいの? 私はリレー走らないよ?」




「今まで一緒に頑張ったのでここで仲間外れはないでしょ。それに5人だったからこそここまで実力をあげられたんだよ」




「「そうそう、雪奈がいなかったら無理(だったよ、でしたよ)」」




 なぜか優輝は無言だったけど、最後に円陣を組んで




「「「「「1位取るぞ」」」」」




「「「「「おぉ」」」」」




 俺たちは会場に入るところで伊藤が泣いていたところを優輝が慰めているのが目に入った。俺たち3人は無言で会場に入る。




「雪奈って友達を作るのは早いけど、誰に対しても表面上だけの友達だったと思うんだよね。だけど私たちが友達になって、さっきだいくんが言ったことで雪奈の居場所があるってちゃんとわかったんじゃないかな?」




 伊藤は友達が多いからそんな不安はないと思っていた。でもその不安を俺たちで取り除けたならよかったと思う。俺もこのメンバーがいなかったら今の生活はここまで楽しくない。だから今の環境はすごく恵まれていると実感した。




 リレーが始まると森本が隣に走っている女子と当たってバトンを落とした。6番手で俺に回ってきた時




「ごめんなさい」




「まだ終わってない」




 俺は森本が泣いている姿を見て、いつも以上の本気を出した。シャルロットに渡すときには4番手まで上がっていた。




「頼んだ。1位取るぞ」




「はい!」




 シャルロットも2人抜いて優輝に回るときには2番手。




「お願いします」




「任せろ」




 優輝はゴールの手前でギリギリ抜けずに2位でゴール。表彰が終わり、全員で集まると




「本当にごめんなさい。私が落とさなければ1位になれた」




「俺さ、1位って目標があったからみんなで頑張れたんだと思うんだよね。別に1位を取れなくても、ここまでの努力とかはなくならないじゃん。リレーのおかげで俺たち今まで以上に仲良くなったと思うよ! それにリレーって団体戦じゃん。俺がもっと人数を抜いていたらとかさ、いろいろ反省すべきはあるんじゃないかな? 森本1人のせいじゃないからそんなに自分を追い詰めるなよ」




「そうそう。私なんて走ってないしさ」




「俺だってラストで抜けなかったんだしさ」




「そうですよ。私だってもっと抜いていれば」




「でも!」




「でもじゃない。個人競技じゃなくて、団体競技なんだからそんなに自分を責めるな」




「うん」




「じゃあ俺は体育祭の片付けがあるからバイバイ」




「じゃあな」




 生徒会室に着くと、先輩方や優花さんから惜しかったという言葉をもらいつつ、また来年頑張ればいいって言ってもらえた。体育祭で使用した道具などを片し終わったら、先輩方が




「今日で俺たちは引退。だけどちょくちょく遊びに来るから」




「私も後輩の面倒見たいしたまに来るからね!」




「「「「はい」」」」




 まだ先輩たちとは少ししか一緒にいないけど、涙が出そうだった。











 まず体育祭後に先輩方が引退した。そのため俺たち4人で仕事を回すから大変になるだろうと思っていたけど、体育祭後は特に仕事がないらしい。だから生徒会室に任意で来るようになった。その次に5人で文化祭と体育祭の打ち上げをして、中間試験が近いことから勉強会を行った。




 あっという間に中間試験が終わって、結果として俺は学年1位を取ることができた。森本も9位、シャルロットと優輝と伊藤も自己最高の順位を取っていた。




「今回の試験はみんないい順位だったね」




「そうだな。11月は特にやることがないよな」




「だな。でもこの時期は台風が来るから俺は嫌な時期だけどな」




「だな。学校休みにならないかなー」




 優輝と話した週に台風が俺たちの住んでいるところに直撃した。高校の近くの川が氾濫して、学校が2週間ほど休みになった。すると父さんが学校が休みだからいい機会だと言ってきた。父さんはシャルロットの父親と話たらしく、シャルロットと一緒にイギリスに言って来いと言われ、明日から1週間ほどイギリスに行くことが決まった。こんなに早くイギリスに行くとはな。


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