13話 主人公の過去

 優輝と話す内容なんてわかってる。俺と森本の関係の事。




「で、お前はもう森本の事が好きじゃないのか?」




 優輝は遠回しに言ってくるタイプではないので、本題を言ってくる。




「いや、わからない。でも告白したときほど好きではないと思う...」




「でも気にはなってるんだろ?」




「あぁ」




「じゃあシャルロットは?」




「わからない。でも森本ぐらい気になってると思う...」




「じゃあこうゆうことだな? 森本のことは昔ほど好きじゃないけど今も気になってる。そしてシャルロットのことも同じぐらい気になっている」




「うん」




「まあ男女問わずに、誰しもが一度はあることだと思うぜ。この世が二人以上の人を好きになっちゃいけないことはない。現に不倫や二股って言葉があるしな」




 そう言われたが、俺は心のどこかで不誠実なんじゃないかって思っていた。でも気持ちに嘘はつきたくないし、どうすればいいかわからなかった。




「まあ気持ちってものは時間がたてば変わると思うし、お前も小学校や中学校の時に好きなことかできただろ?」




「...。好きになったことはあると思うけど、わからないんだ。」




「は?」




「小さいころからスキーやってたんだよ。でも小学5年生の時、斜度の厳しいコースを一人で滑りに行ってた時、単独事故したんだよ。それで一部の記憶がなくてさ...。」




 俺は小さいころに事故をしたことがあった。その日から数日間は眠気や頭痛がひどい。その時はなんとも思わなかったが、数日たったある日、親が昔は海外で住んでいた事を話し始めた。俺はその事を覚えていない。その話で初めて記憶がなくなっている事に気づいた。その後は病院に行って診断や治療を受けたが記憶は戻らない状態で今になっている。記憶がなくなった事で中学校に入ってからは同級生にいじめられたし、すごくつらい3年間だった。




 親は俺が記憶をなくした事で、昔の話はしなくなった。だが一ヶ月前にアークレイ家と会った際、お互いの両親が初めて会う感じじゃない雰囲気をしていたことから俺はイギリスに住んでいたのかなって思い始また。けど昔の俺を知らないのにそこを触れるのはすごく怖い。






「悪い。嫌なことを聞いたな」




「いやお前には話したいと思って話したから気にすんな」




「じゃあ小学校までの記憶はないの?」




「あぁ」




「俺はそんな体験したことないから軽く言えないけどさ、今からいい思い出を作っていこうぜ」




「そうだな」




 この話は終わって少し雑談をした。優輝は最初の方こそ気を使っていたが、いつもみたいに気を使わないで話をしてくれたことが心底うれしい。




「本題に入るけど、お前はどっちかと付き合いたいの?」




「付き合いたいとは思ってる。けど二人のことが気になっている内は付き合わないかな」




「告白されてもか?」




「そうだな。その時はちゃんと気持ちを伝える。そして俺の気持ちが整理できてから告白するだろうな」




「そうか」




 気持ちの整理がつくまでどれぐらいかかるかわからない。だけどもう後ろばっかり向いているわけにもいかない。だから今度、親に昔の話を聞こうと思った。




 その後はゲーセンで遊んだ。帰る前に俺がここ最近思っていることを優輝に聞く。




「優輝さ、伊藤のこと好きなの?」




 そう尋ねると優輝は驚いた顔でこちらを見て




「やっぱり気づいたか? 好きだよ。でもまだ告白はしない。俺が自分に自信を持った時に言うよ。それにさ、今の関係もここ最近は悪くないなって思ってるからさ。じゃあな」




 そう言って二人は帰宅した。




 居間で母親の顔を見た瞬間、先ほど決意したことが頭によぎる。でも4年間も聞けなかったことを今すぐ聞く勇気はなかった。




 こんなことを考えていても埒が明かないと思い、自室で勉強を始めた。今日の勉強内容は数1の2次関数と数Aの平面図形。数1の勉強はそれなりにすぐ終わったが、問題は数A。




 俺は計算問題は好きだが、図の問題が苦手。並行や垂直などを理解するのにいつも以上に時間がかかってしまった。また今やっている章の問題は証明なども多い。




 家に帰ってきたのは6時で自室に行ったのは6時30分。今の時刻は10時なので、3時間30分も勉強していた。




 居間に行き、夜ご飯を食べて就寝した。




 次の日、学校で優輝と二人で勉強をした。その次の日は物理基礎、化学基礎の勉強。1日づつやる科目を割り振って勉強していたら、あっという間に期末試験当日。




 テスト当日。いつも通り一緒にシャルロットと登校していると




「今回はテストには自信があります。私たちも雪奈ちゃんたちみたいに勝負しませんか?」




 シャルロットからテストの勝負を持ち掛けられたが、テストで俺が負けることはないと思う。だから




「シャルロットには悪いけど俺も学年TOP10を狙ってるから勝負にならないと思うよ?」




 そう言うと




「わかってます。だからルールを決めましょう。英語を抜いた科目で私が3つ以上勝ったら私の勝ちってことでもいいですか?」




 シャルロットが英語を抜いた3教科勝つなんて無理だと思った。英語以外の科目の最高点数が前回は70点前後だったはず。俺より15点ぐらい低い。




「あ、今無理って思いましたね? 勝ちますからね! 勝ったらなんでも1つゆうことを聞くってことで!」




「あぁ」




 そう言って、勝負することになった。学校に着くとみんなが中間試験同様に勉強をしていた。席に着くとすぐに先生がやってきて




「テストが始まるからみんな頑張れよ。このテストが重要なやつとかもいるだろうしな」




 話が終わるとすぐにテストが始まった。

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