第7話 護衛騎士
「・・・どうぞ。」
静かに開けられた扉の向こうには、綺麗な金髪を
「失礼いたします、今よろしいでしょうか?」
おずおずとした口調でこちらの都合を確認するように尋ねてきた。
「ええ、大丈夫ですよ。」
彼女を部屋に迎え入れテーブルへと案内した。すると、テーブルに置いてある日本刀ナイフに気づいた。
「あら、またナイフをお作りになっていたのですか。・・・先程とは少し違っているようですね?」
「ええ、自分の能力の確認をしておりまして、知識をより詳細に思い浮かべることで先程の物よりも良いものができたのではと思っています。」
言いながらナイフの刃の部分を持ち、グリップの方を彼女に向けた。
「では鑑定してみましょう。」
こちらの意を悟って彼女が鑑定を申し出た。すると、先程の様に白い魔石を使わずに使用する魔法名を呟いた。
「【鑑定】。・・・凄いです!あのナイフよりもこちらの方が切れ味も耐久力も段違いに高いですわ!」
「それは良かった。ところで、この世界ではそのナイフはどの程度の価値があるのですか?」
「そうですね・・・切れ味のレベルで言えば聖騎士の精鋭が所持しているものと同等かそれ以上ですね。ただ、あくまでナイフですので戦闘で使えるかはまた別の問題ですね。」
精鋭と言うからにはかなりの実力者なのだろう。つまり本来の日本刀の大きさで作った場合は、トップ騎士の持つ武器より高性能の物が簡単に作れることになってしまう。
(沢山作ってこの国に恩を売っておくか。しかしそれが原因で危険人物と見なされる可能性もあるから、もう少し情報を集めてからにしよう。)
「そうなんですね、では今後はもっと大きなものが作れるように練習しておきましょう。」
「もし火乃宮様がその武器を我が騎士団に提供いただけるなら感謝の念に
「もちろんその時は喜んでお渡しいたしますよ。ところでご用件はなんでしたでしょうか?」
あまり武器に関して突っ込まれるのもこれからの関係性を考えて居心地が良くないと感じたので話題を変えた。
(人々の生活に役立つようなものを作れたほうが受けが良さそうだから準備しておこう。)
「そうでした。昼食の準備が出来ましたのでお呼びさせていただきました。また、王国に向かう際に同行する火乃宮様の護衛騎士を紹介させていただきたいので、昼食にご一緒して顔合わせを行いたいのですがよろしいでしょうか?」
「わざわざ護衛の人手を割いていただきありがとうございます。是非お願いします。」
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「初めまして。俺は聖騎士のカイ・オースティンだ!カイと呼んでーーウゴッ!」
距離感の近い挨拶をした彼に間髪入れずに肘鉄が飛んできた。
「馴れ馴れしいぞ馬鹿者!火乃宮様は我が国の重要な要人として王国に行く人物なのだぞ。もっと
カイと名乗った彼は20台半ば位の私より少し低い170cm程の身長で、茶髪の短髪でサイドを刈り上げていた。元の世界で言うならイケイケの兄ちゃんだ。
対して彼に肘鉄を喰らわしていたルナという子は、彼と変らない身長で年齢も同じくらいに見える。目に鮮やかな深紅の髪をしており、肩にかからないくらいの長さにしていた。
そしてどちらの人物も鍛えているのだろう、握手しただけで手が痺れてしまった。
「よろしくお願いします。私は火乃宮 蓮と言います。」
「この二人と私を含めた4人が王国へ向かいます。飛行船で1日程で着きますが、到着後国王への挨拶と簡単な
横からクロスティーナが今後の予定を伝えてきた。おおよそ想定していた通りの内容だが、早くも魔物と相対することになるのかと思うと不安が込み上げてくる。
「分かりました。心の準備をしておきます。ところで、まだ1日以上ありますのでこの世界の書物があれば読んでみたいのですが。」
「もちろんございますよ。よろしければ書庫がございますのでそちらでご覧になられてはいかがでしょうか?」
「ありがとうございます、クロスティーナさん。では後程案内いただけますでしょいか?」
「では食後に書庫へ向かいましょう。」
その後4人で少し話ながら昼食を終えてクロスティーナと書庫へと向かった。
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おおよそ1日以上の時間をかけて歴史、経済、魔法の入門書的なものを探してもらい読みふけった。
「 ・・・なるほど、ようやくこの世界の基本的なことが分かってきたな。」
まずこの世界は豊穣を司る女神アスタロトが創造したとされる世界であり、今は1350年になるということだ。かつては多くの国があり幾度も領土拡大のため争っていたが、いつ頃からか悪魔が現れ始めたために次第に淘汰されていき今の五つの国が出来たとされている。
この五つの国は互いに不戦条約を結んでいるがその根底には、戦争によって負の魂を悪魔に捧げてしまい結果的に自らの滅亡を招いてしまうと理解しているためである。
また経済においては驚くべきことにキャッシュカードのようなものが発達しており、自らの魔力が識別されることで、 他人の使用が不可能という優れものである。
この世界の通貨はクローナという単位が使われているらしく、一般市民の一か月に必要な金額はおおよそ10万クローナと言われている。
さらに魔法については女神が人々に一人一つの魔法の才能を与えているとされ、物心がつく5歳か6歳の時に鑑定の魔石を使って確認している。魔法にはその難易度において第5位から第1位までが存在しており、一般的には第3位程度しか到達できない。才能と努力を怠らなかったごくわずかな者が第2位、さらにこの世界でも有史以来数えられる程度しか存在しなかったとされる第1位に到達することができるとされている。
「経済の規模は半世紀ほど前だが、仕組みや機能は同等くらいだ。魔法については細かいとこまでは分からないが、第2位以上になるとだいたいスカッドミサイル程の威力があるらしい。ただ一番不安な点は各国のバランスだな。」
溜息の出る問題だが、現状において悪魔が各国のバランスを保っている可能性を心に留めて王国に向かうことになる。
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