Episode11-D 間違い ※閲覧注意!(特に男性は……)
私の幼稚園時代からの親友が、ある男子大学生に弄ばれた挙句に妊娠し、堕胎を選択することになった。
よくも私の大切な親友を……絶対に許すものか、復讐してやる。
普通の人間だったら、金を積んでその道のプロに復讐を依頼するだろう。
けれども、私にはその必要はない。
なぜなら私は超能力者、それも「時間停止」という力を持つ超能力者なのだから。
空を飛びゆく鳥の時も、空を流れゆく雲の時をも、私は止めることができるのだから。
私は親友より、男の名前と住んでいるアパートの部屋を聞くことができた。
さっそく時間を止めた私は、アパートの横一列に均等に並んでいる窓ガラスの数を数えた。
おそらく、あの部屋だ。うん、間違いない。
誰にも聞かれることなく窓ガラスを割った私は、標的の部屋にするりと忍び込んだ。
男子大学生の一人暮らしだというのに、綺麗に整理整頓され、掃除までも行き届いていた。
そのうえ男は、教員採用試験の過去問を手に勉強中だ。
親友から聞かされていた男のイメージとはどこか違う。
けれども容赦なんてしない……するものか。
親友と親友のお腹に宿っていた自分の子供を守ろうともしなかったくせに、何が教員採用試験だ。
あんたみたいなクズが教師になったところで、子供たちに何を教えられるというのか。
私は懐より、タオルにくるんでいた出刃包丁を取り出した。
そのまま、男の喉を掻っ切るのかって?
そんな”慈愛に満ちた制裁”で済ますつもりはない。
ちょっとばかし手間取ったも、私は男のズボンとトランクスを脱がすことができた。
親友を弄んだ憎い”それ”の根元に、私はそっと出刃包丁の刃先を当てる。
やる時は徹底的に。
こいつが二度と立ち上がれなくなるように。
いや、勃ち上がれないの間違いか(笑)
世の中には許されることとそうでないことがあると思い知らせてやるのだ。
私はやり遂げた。
まるで厄介な大掃除を終えた後のごとき高揚感に包まれていた。
私が再び時間を動かした時、こいつがどれほどの激痛と絶望に襲われるのかと思うと、ワクワクせずにもいられなかった。
さて、そろそろ帰ろうか?
汚らしい肉片が付着した出刃包丁をタオルでぬぐった私は、ふと壁に掛かっていた賞状に目を止めた。
それは何やら、スピーチ大会で優秀な成績を収めた男を表彰したものであった。
当たり前だが、賞状には名前が書かれている。
…………あ、やべ、部屋、間違えた。
(完)
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