第149話 新たなる戦線 2

 イドリアナ連合王国海軍の厳重な護衛の中、陸軍上陸部隊第1陣1個師団のウェスバリア沿岸部到達は、ウェスバリアに対しての宣戦の布告から2日後のことであった。


 海軍を持たないウェスバリアは、グリルファウスト大将の指揮の元、数百の漁船をかき集めことに成功し、イドリアナの海軍に対し必死の抵抗するもあえなく玉砕。グリルファウスト大将は、同時期にハイデンベルグ帝国へ海軍兵力の救援を要請するも、救援の到着は早くとも4日後になるとの返答であった。


 ウェスバリアの海上戦力を叩いたイドリアナは、開戦から3日後ウェスバリア北東部カリーの海岸線に上陸用舟艇を上陸させると、上陸を待っていたウェスバリア第3軍第2軍団に包囲されるも、海上の海軍よりの魔導砲撃と精強な赤服上陸部隊により、カリー沿岸部に橋頭保を築くことに成功した。


 イドリアナ海軍による、海上からの魔導砲撃に苦戦を強いられるも、イドリアナ上陸部隊との兵力差からカリー沿岸部にイドリアナを封じ込める事に成功したウェスバリア第3軍第2軍団は、続けて攻勢をかけようとするも、海上からの魔導砲撃に幾度となくさらされ、攻勢を断念した。


 一方でイドリアナの赤服上陸部隊は、後続である上陸部隊の第2陣と第3陣の到着を待ち、一気に攻勢に出るため、海上からの援護が届く範囲での攻勢準備をしていた。


 しかし、このイドリアナのウェスバリアへの攻勢計画は、上陸部隊第1陣と第2陣の2個師団と共にウェスバリア名カリー海峡の深い海中に沈むこととなる。


 到着したハイデンベルグ帝国海軍の軍艦による的確な魔導砲撃により、虚を衝かれた護衛であるイドリアナ海軍の殆どが沈黙すると、その後に到着した上陸第2陣は撃沈、海の藻屑となった。

 これを確認した上陸部隊第1陣は、残った護衛船のもと引き返そうとするも、帝国海軍の魔導砲撃にさらされ、敢え無くその7割が戦死、残っていた3割もウェスバリア第3軍第2軍団の猛攻を受け戦死、イドリアナのウェスバリア沿岸部への上陸作戦は夢と消えた。


 全滅した海上戦力など多数の損害を出しながらも、帝国の力を借りなんとかイドリアナの上陸を退け、損害をそこそこに浮かれるウェスバリア第3軍であったが、その喜びもつかの間、イドリアナ海軍は帝国軍艦艇の撤収を確認すると、上陸部隊第3陣から第6陣の船艇をガリア同盟の港湾都市デ・ハーンへと寄港させると、全ての人員を降ろし、自国へと引き上げて行った。


 その4日後、マイトランドの予言は現実のものとなる。ウェスバリア北東、ハイデンベルグ帝国北西である都市国家同盟ガリア同盟が、同盟の全会一致でウェスバリア、ハイデンベルグ帝国の2国への兵力の配置を終えると宣戦を布告。


 当初よりこの行動を察知していたハイデンベルグ帝国は、国境に配備してあった第21軍団、第22軍団の他に、新たに第38軍団を配備すると、その3個軍団をもってガリア同盟領へと侵攻を開始。

 訓練された帝国兵と新式装備の前に、対ハイデンベルグ帝国様に配備していた、ガリア同盟第3軍は、一時戦線を大きく後退させるも、その後イドリアナからの上陸部隊1個軍団と配備すると、ハイデンベルグ-ガリア戦線は膠着状態になり、しばしの間両軍のにらみ合いとなることとなった。


 対してウェスバリア-ガリア戦線はというと、イドリアナ上陸部隊4個師団を中心に編成された、6つの都市国家から選出された6個軍団からなるガリア第1軍は、まだ配備を完了していないウェスバリア第3軍方面、海岸沿いにへと侵攻を開始。また別の第2軍を組織し、それもってウェスバリア中編部へと向け侵攻する準備を開始した。


 ガリア第1軍はカリー手前である要塞都市ダンカークまで到着すると、多数の攻城兵器をもって攻撃を開始、防衛部隊が1個大隊ほどしか駐屯していなかったダンカークは一夜にして陥落、ガリア第1軍は全ての住民を惨殺すると、ダンカークの要塞化を開始、カリーからクレイブラインまで迫ったウェスバリア第3軍の到着を待った。


 ダンカーク陥落の報を受けたウェスバリア参謀本部は、第3軍をガリア第1軍へ、新たに徴兵し、訓練もまだ十分でない新兵達を国中からかき集めると第4軍を編成、帝国より情報のあったガリア第2軍へと当てるべくガリアとの国境南部へと第4軍を配置した。

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