第111話 会戦準備 2

 次に戦線正面以外の陣容である。


 第7重装歩兵師団の後方に布陣するのは、白地に紺の刺繍の旗。身の丈175前後52歳、モノクルを装備し、伸ばした口髭を蝋で固めて左右を上へ跳ね上げて逆"へ"の字にした様なカイゼル髭で周囲を魅了する、貴族ギャストン・ド・ブロイ中将指揮する第13弓兵師団、将兵合わせて17112名。装備は各員が矢を背負い、長弓と片手剣で武装している。


 その右翼、第3重装歩兵師団の後方、白地に紺の刺繍の旗。身の丈180前後48歳、堀が深く色黒、黒の短髪である、新貴族ギー・シャミナール少将指揮する第6弓兵師団、将兵合わせて15999名。先の第13弓兵師団と同じ武装である。


 第21歩兵師団の後方に予備の歩兵師団として布陣するのが、紺地に白い刺繍の旗、身の丈180前後52歳、トリコルノという帽子を頭に乗せ、それを支える4カールのカツラが他の目を引いている、貴族ジャン=クリストフ・ド・ブランシャール中将指揮する第18歩兵師団、将兵合わせて16008名。丸いラウンドシールド、鋼鉄槍、ロングソードといった武装である。


 同じように第22歩兵師団の後方に予備の歩兵師団として布陣するのが、紺地に白い刺繍の旗、身の丈180前後52歳、金色短髪の色白である、貴族マウリッツ・フォン・フォルマン中将指揮する第17歩兵師団、将兵合わせて15990名。丸いラウンドシールド、鋼鉄槍、ロングソードといった武装である。


 歩兵師団の最後になるのは、第24歩兵師団の後方に位置する紺地に白い刺繍の旗、身の丈190前後46歳、黒の全身鎧に身を包んだ、貴族ヴァルター・フォン・シュライヒ中将指揮する第2歩兵師団、将兵合わせて15800名。丸いラウンドシールド、鋼鉄槍、ロングソードといった武装である。


 第13弓兵師団の後方、黒地に金の刺繍の旗である、ウェスバリア第2軍旗を掲げ、本作戦の全軍の総司令官である、バルト・ハインリヒ・フォン・ツェッペリン大将が指揮をとる、ウェスバリア第2軍司令部。将兵合わせて2565名。即座に移動可能な指揮所が全軍を支える。


 司令部の右翼、赤地に紺の刺繍の旗、マイトランドの配属先である、ライアン・ヴァイトリング准将指揮する第72魔導砲兵旅団の配置はここである。将兵合わせて4956名。


 司令部の左翼に、赤地に紺の刺繍の旗、身の丈170前後年齢不詳、黒ローブをその身に纏う、新貴族アルフレート・ドルンベルガー准将指揮する第73魔導砲兵旅団、将兵合わせて4980名。


 そして後詰部隊として、主力部隊の最後を飾るのは、青地に白の刺繍の旗、司令部のそのまた後方、エバーハルト・フォン・ハルリンクハウゼン中将指揮下の第81銃歩兵師団、将兵合わせて18000名。ハイデンベルグ帝国より貸与された、旧式のドルトン銃、通常よりも短いサーベルで武装する。

 

 この他に後方支援として連絡、通信、補給、糧食の支援を行う、後方支援連隊9個連隊、将兵合わせて38002名が銃歩兵師団のさらに後ろに布陣する。


 これがウェスバリア第2軍、主力部隊25万5460名の配置である。

 この他に別働隊として、”常勝将軍”を自称するヴェルティエ中将の指揮する、第29騎兵師団を主軸とした4個騎兵師団を纏めた第2軍団、将兵合わせて66963名がトレーナ北側より侵攻し、後方輸送路、連絡路の遮断を行う。


 もちろんマイトランド達のキスリング連隊もここにはカウントされていない。レフとヘルムート以下帝国軍4名を加えての、キスリング連隊、将兵合わせて1256名。


 ウェスバリア第2軍総勢33万3679名の堂々たる編成である。

 報告を聞き終えると、マイトランドは顎を組んだ手に置くと、口を開いた。


「40万は言いすぎたな。ディアナに悪いことをしたな。」


マイトランドがそう呟くと、ランズベルクがマイトランドに尋ねた。


「おい、これよ、楽勝なんじゃないか?敵は10万くらいだぜ?。」


「ああ?難しいだろう。敵の正面部隊は銃で武装しているぞ。こっちの銃歩兵師団はどこにいる?戦線正面の重装歩兵師団がどこまで耐えるかがカギだな。」


「あ、うん。ここじゃあ弾丸は届かないぜ。」


 2人が黙り込むと、ドワイトは知らない顔に気付き、マイトランドに尋ねた。


「おい、マイトランド、この5名はなんだ?」


「ああ、遅れました。帝国軍士官のゲルマー少尉です。それとレフ、こいつは後で軍に登録してやってください。新兵教育に回さないように・・・。」


 マイトランドが話を進めると、ドワイトは思いついたように飛び跳ね、直立不動の姿勢を取ると、ヘルムートに敬礼をした。


「挨拶が遅れました!ドワイト分隊分隊長、ドワイト曹長であります!知らなかったとはいえ失礼いたしました!」


 ヘルムートはドワイトに帝国式の敬礼を返すと、それに答えた。


「ドワイト曹長、帝国軍第18軍団第60猟兵連隊、第7偵察大隊所属ヘルムート・ゲルマー少尉と申します。本作戦終了まで、こちらのマイトランド隊長の指揮下に入ります。どうぞよろしくお願いいたします。」


「は?はぁ、少尉が2等兵の指揮下にでありますか?ちょっと意味が分かりかねます!」


「そんなにかしこまらないで下さい。帝国軍とウェスバリア軍では階級も作法も違いましょう。それに捕虜になっていたところ、隊長に救われました。私以下4名は喜んで隊長の指揮下に入りましょう。」


 礼節を持って対応したヘルムートに、普段の上位者である少尉を自分の部下にできると気を良くしたドワイトは、姿勢を崩すと鼻をほじり、その場にいた誰もが凍りつく様な返答をした。


「ああ、そうなの?じゃあ俺と一緒に、旅団司令部来てくれるか?捕虜救出ならまた階級上がっちゃうしな。」


「あんた、部下になると知って反応変わりすぎだろ。いい加減にしてくださいよ。」


 当然マイトランドがドワイトに詰め寄ると、ドワイトはどこ吹く風と、怒るマイトランドに尋ねた。。


「大尉か?俺は大尉位になれるか?少佐も夢じゃないな!どうだ?いけそうか?」


「あんた、人間のレベルは新兵以下ですよ。」


 辛辣なマイトランドの返答にその場の全員は再び凍りつくのであった。

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