第109話 帰路 3

「ああん?お前何言ってやがるんだ?譲ってもらった?最初から俺が持ってるスキルだぜ。喋り方をバカにしたのは悪かったけどよ、そんなこと言う事ねえだろ?」


 レフの発言に、ランズベルクは反論すると、レフはランズベルクのスキルの核心に迫った。


「喋り方なんて気にしてないさ。なんでって、君のスキルに譲渡されたってあるからさ。誰かに譲ってもらったってことだろうさ。」


「そんな訳あるかよ。なぁマイトランド?」


 レフの発言に、ランズベルクはマイトランドを向くと、同意を求めた。

 マイトランドとランズベルクは幼馴染であり、お互いがお互いのスキルを良く知っている。

 

「ああ、ランズベルクが自力で発現させたスキルだ。」


 マイトランドが過去を思い返し、ランズベルクとレフに答えると、レフはスキルについて語りだした。


「ランズベルクはさ、上級の風属性魔法を使えるさ。でも上級を習得する過程でつ開ける様になっているはずの初級、中級が見当たらないさ。いきなり上級から使えるなんておかしいと思わないかい?」


「「それは確かに。」」


 マイトランドとランズベルクの2人は、なるほどと顔を見合わせると、そこから先の言葉に躓いた。

 言葉に困る2人を見ると、レフは困惑し話を逸らした。


「でもさ、悪いことじゃないさ!気にしない方がいいさ!それよりもゲルマー少尉の紹介をするさ!」


 お前が言い出したんだろう。と言わんばかりに眉間にしわを寄せレフをキッと睨むと、マイトランドは気分を改める様に上を向き、向き直ると、これまでの間ずっと黙って立っていたヘルムートに目をやり、頭を下げ、ランズベルク達にヘルムートの紹介をした。


「こちらはゲルマー少尉、ヘルムート・ゲルマー少尉だ。帝国軍第18軍団所属の将校だ。皆失礼のないように。」


 ランズベルク達は、他国の軍であっても上位者であるヘルムートに敬礼をすると、ヘルムートもまた、帝国式の敬礼で返し口を開いた。


「私は帝国軍第18軍団第60猟兵連隊、第7偵察大隊所属、ゲルマー少尉です。敵正面部隊を偵察中に敵に捕まり、トレーナで捕虜になっているところ、こちらのラッセル隊長に救われました。今作戦終了までお世話になります。」


 そう言うとヘルムートは敬礼の手を下げた。

 これに反応したのはランズベルクだ。


「ゲルマー少尉。なんで自分より階級の低いマイトランドを隊長って呼んでるんだ?ですか?マイトランドは2等兵だぜ?です!」


「あっバカ!お前!」


 マイトランドは、ランズベルクを手で塞ぐと、後に続くであろう言葉を遮った。

 ヘルムートは、ランズベルクの口を両手で遮るマイトランドの肩に手を置くと、頷きながらマイトランドに伝えた。


「隊長。知っていましたよ。知っていながら隊長と呼ばせて頂いているのです。私と、私の部下の命を救って頂きましたから。帝国には、帝国軍人たるものその恩を忘れるべからず。という言葉があります。隊長に受けた恩はまだ返していませんから。」


 マイトランドはヘルムートの善意に深く頭を下げると、その後でポエル、アツネイサ、ランズベルクと紹介をした。


「ゲルマー少尉、こちらの獣の耳の女の子がポエル。リザードマンがアツネイサ。今喋ったのがランズベルク。皆紹介が終わったらそれぞれに与えた任務の報告をしてくれ。」


 ポエル、アツネイサ、ランズベルクはそれぞれ自己紹介を終えると、マイトランドに報告した。

 ポエルはトレーナ平原の敵部隊の動向であるが、トレーナ平原には斥候部隊以外は基本出ておらず、平原東部に駐屯した敵部隊はおよそ2~3個軍団。その内、斥候部隊を出しているのは最西部にある敵師団規模で、一時間置きに約24個中隊を平原東部に巡回させている。という物であった。


 アツネイサの報告は敵の罠の位置についてであるが、平原中心にはウェスバリア第2軍、カルドナ王国軍、両軍の斥候が入り乱れているため、敵の罠はほとんどなく、ウェスバリア第2軍の斥候が少なくなる、平原東部に近づけば近づく程罠は多くなり、その罠の位置は、敵軍団規模の駐屯する地域手前まで、全て把握してきたとの事であった。

 

 ランズベルクは、帝国軍第18軍団の正面に構えるカルドナ王国軍第3軍12軍団と第8銃歩兵師団を、帝国軍第18軍団に備えさせるという任務であったが、これ問題なく終了し、敵は帝国軍第18軍団に備えているという事だ。


「紹介と報告も終わったところで、敵の反応もない。ランズベルク、全員に支援魔法をかけてくれ。ここから一気に司令部に戻りたい。」


「あいよ。」


 ランズベルクは支援魔法を全員にかけると、一隊9名は、一路旅団司令部のあるグルナブルットを目指し、その進路をとった。

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