第65話 最終学科試験 1

 最終学科試験当日、アルファイマーはマイトランドを呼び出した。


「マイトランド君、筆記試験を受ける前に少しいいですか?」


「ああ、どうした?」


「以前、私のスキルについて、説明しましたね?」


「ああ、開発と予知夢だったか?」


「ええ、その開発というスキルについてなんですが、今ある武器を、新しく作り変えたり、全く新しいものを作ったりできるんですが、何か良いアイデアが、あったらと思いまして。我々は師団司令部などに配属となりますが、マイトランド君は平民ですからね。前線、もしくはモンスターの討伐部隊に配属となるでしょう。だから身を守る武器は必要でしょう?もちろん今すぐと言う訳ではありません。試験結果が発表されるくらいまでに、考えておいて頂ければ結構ですよ。」


「開発かぁ、そうだな、一つ考えている物がある。後でお願いするよ。」


 アルファイマーは頷くと、試験会場に向かった。


 マイトランド班は試験会場へ向かうと、不正が無いように、試験官とは別に試験監視が人数分配置され、各々別室にての筆記試験となった。


「みんな、落ち着けば大丈夫だ。泣いても笑っても最後の試験、これまでの努力の成果を遺憾なく発揮してくれ!」


 そう言ったマイトランドに、皆は頷くと、試験開始を待った。


 試験が始まるとマイトランドはものの数分で答案を書き終わり、不正を疑われない様に退出、試験会場を後にした。


 全員の試験が終わると、マイトランド班は一堂に集まり、自己採点、答え合わせをは始めた。

 マイトランドが、問題を記憶から探り当て声に出すと、その問題の答えを班員が回答していく様式だ。

 5問目を読み終わり、6問目を読むマイトランド。


「歩兵部隊の兵科記号を書け、答えは長方形書いて、その頂点からバツ印になるように対角線を引くだけだ。」


「マイトランド君!それは問題が違いますぅ。歩兵部隊の兵科記号を記入せよ。またこの歩兵部隊を旅団規模の、部隊規模を記入せよ。ですぅ!」


 フランがマイトランドに間違いを指摘すると、マイトランドは感心して答えた。


「それは、別問題だろ?答えはバツ印を兵科記号の上に1個な。って言うか、フランお前問題を全部覚えていたのか?」


「ええ、もちろんですぅ!マイトランド君に何か一つでも勝ちたかったんですぅ。」


「そ、そうか、なら俺の負けだな。フランの様な物覚えの良い副官がいたら、その隊の司令官は楽だろうな。さあ、時間がないから次行くぞ。」


 マイトランドはそう言うと、フランの頭をなで答え合わせを続けた。

 全ての答え合わせを終えると、マイトランドが班員全員に尋ねる。


「ん?お前ら、皆、間違っていないのか?誰も手を上げないけど。恥ずかしがる必要ないんだぞ?」


「誰も間違ってないんだろ?俺は間違っていないぜ。文字だってしっかり確認したしな。あんまり俺達を舐めない方がいいぞ?全員全問正解ってことじゃねぇか?」


 ジェイクが自慢げに語ると、エリオット、ロブ、ダンも同じように答えた。

 マイトランドは、班員が座る後方に目をやると、アツネイサに声をかけた。


「アツネイサ、お前大丈夫だったのか?問題自体がわからないとかじゃないのか?」


「ウン、ダイジョウブ。オレ。セイカイ。マチガイナイ。」


「言葉はまだ片言なんだな。」


「ウン、シャベル、カク、チガウ。モンダイナイ。」


「そうか、申し訳ない。こう言っちゃなんだが、俺はアツネイサが一番心配だったんだ。その手じゃペンも持ち辛いだろう?」


 マイトランドが笑いながらフレデリカに感謝すると、アツネイサも独特な声で、ケタケタと笑い出した。

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