第11話 プロローグ 10

 10ヶ月後、首都から帰った2人は村の異変に気付く。

 村の中央に村人という村人がすべて集まっていたのだ。


「おぉ!マイトランド、ランズベルク最近何処に行っているかわからないと思ったら!お前達今度は何したんだ!お前達に首都から役人が来てるぞ!」


 そう言ったのはランズベルクの父親だった。

 不思議に思った2人は、村の中央の人込みをかき分け中心へと進む。


 中心には鎧を着た兵士が2人、4頭の馬を連れて、誰かを待っているようだった。


「あのぉ、マイトランドとランズベルクです。自分達に何かありましたか?」


 兵士はマイトランド達に正対し、手に持っていた羊皮紙を肩の位置まで上げると、読み上げた。


「故アレクシス大将夫人、故トロンダ中将夫人からの感謝の馬である。拝領せよ。」


 そう言って、2頭の馬の手綱をマイトランドとランズベルクに渡す。

 マイトランドには茶色の馬、ランズベルクには黒い馬だった。


「続いて、故ソルダーノ少将御父君よりの感謝の品を拝領せよ。」


 兵士はそう伝えると、2人に箱を手渡す。

 2人が確認すると中には、革製の防具一式と、金貨入りの袋が入っていた。


「続いて、故トランガ少将夫人と兄君よりの感謝の品を拝領せよ。」


 兵士は、また別の長細い箱を2人に手渡す。

 渡し終えると、2人が確認する暇もなく、


「私たちはこれで失礼する。目録大切に扱うように。では」


 そう言ってその場を去って行った。


 兵士が去ると、村人たちが2人を囲み騒ぎ出す。


「お前達いったい何をしたんだ?」


「すごいじゃないか!感謝の品をもらえるなんて!見直したぞ!」


 皆思い思いの言葉を口にする。

 ランズベルクの父親も、


「少し前までは、毎日遊びほうけて、このまま軍に入って大丈夫かと心配してたんだぞ!」


 そう言って涙を流す。


 そんな村人たちを見て、2人は少し相談すると、ソルダーノ少将夫人からもらった金貨の袋を取り出し、そこから金貨1枚をそれぞれ抜き取ると、残りの金貨が入っていた袋を村長に手渡し伝える。


「これは俺達には必要ないから、村の為に使ってよ。なぁ、ランズベルク。」


「あぁ、今までたっぷり迷惑もかけたしな。」


 2人の言葉に村長は言う。


「お前達、これから軍に入るんじゃろう。ならば金も必要じゃろうて。ここに置いていくことは無い。2人の為に使え。なぁに、子供は大人に迷惑をかけるもんじゃで、村の事は気にすることは無い。」


 村長はそう言いながら袋を返そうとすると、ランズベルクが大声で叫んだ。


「クソジジイ!俺達は自分に必要な分は取った。後は村の為に使えって言ってるんだよ。わかんねーのか?ぐだぐだ言ってねーで受け取れよ。このモウロクジジイが!」


 これが本来のランズベルクなのであろう、集まっていた村人を指差すと、


「お前らもさっさ家に帰れよ!そこに突っ立てると邪魔なんだよ!どけよ!」


 と悪態をつき、その場を立ち去ろうとする。これを見たランズベルクの父親が、ランズベルクに近寄り、声をかけようとすると、村長が涙を流し、ランズベルクの父親に言う、


 「メレディアスいいんじゃ、ありがたく受けとろう。ありがとう2人とも。ありがとう。ありがとう。ありがとう。メレディアス立派な息子を持ったなぁ。」


 それからも何度も感謝の言葉を続けると、ランズベルクの父親もそれ以上は何も言わなかった。


 マイトランドとランズベルクは、その場を後にすると、村近くの小高い丘に向かった。

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