展示NO.5 回天

満ちる刻──人はその静の中に動を見る


 普段はニューヨーク現代美術館に展示されているこの作品も、今回は特別に展示することができました。


 二十六枚のレンズがぐるりと使用者の頭部を囲む異様な構成と、伸び縮みしながらもその伸縮を目立たせない機構のブリッジ兼テンプル部分。控え目に、しかし確かに入った七箇所の速度ブレ表現。これらの意匠はメガネ単体ではなく、人が装着した時に初めてその真価を現します。そう。使用者が高速で回転しているかのような錯覚を見る者に与えるのです。

 この視覚効果は、使用者自身が鏡を見た時に最も強い印象を与えます。

 体感覚では静止している自分が鏡像では高速回転している。

 回っているのは世界か、自分か。その両方でないとしたら、この感覚はなんなのか。

 メガネを通して自己と世界の関係性を問い掛ける美術メガネの枠に収まらないこの怪作は、本邦のみならず世界中の美術メガネ賞を総なめにし、美術メガネ作家としての空刻究人の名前を不動のものとします。


*この作品は御試着頂けます

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