展示NO.2 無題

空刻究人の原点、一歩目の足跡


「無題」という作品名は無論、空刻が付けたものではありません。

 文具の下敷きの透明ポリ塩化ビニルと、ホームセンターで購入されたと言われているアルミニウムの針金で作られたこの簡素なメガネは、空刻が最初に作ったメガネとされています。

 空刻は裕福な商家の次男として生まれました。高度経済成長の時代、両親は多忙で、空刻と兄の世話は専ら家政婦と家庭教師とが見ていました。

 空刻と兄にとっては四人の家政婦と出入りしていた二人の家庭教師が家族だったと言っても過言ではありません。

 このメガネは、当時中学生だった空刻が、理系の勉強を見てくれていた家庭教師の医学生の着用していたメガネをモデルに作ったとされています。

 研究者の中には、当時の空刻の彼女への思慕を指摘する者もありますが、空刻自身がこの作品を作った動機を語った記録はありません。

 このメガネは、空刻の私室で、油紙と和紙に厳重に包まれ漆塗りの茶筒に入った状態で発見されました。

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