応援団について

黒田寛実

第1話 応援団

新年になって、正月に行う事柄の由来について改めて考えてみると、まったく知らないことに気づく。なぜ門松を飾るのか。なぜ雑煮は地域によって餅の形が違うのか。そこから伝統について思考が膨らんだ。すると、母校の伝統について思いが至った。母校に応援団があったので、応援団について考えている。なぜ母校の応援団には「伝統」の力があったのか。元々、応援団は明治時代に旧制高校(今の大学)から生まれたようだ。とすると、旧制中学の流れを組む母校は、旧制高校の応援団をコピーしたのだと思われる。応援団の演舞はおそらくどこかの旧制高校の演舞を取り入れたもので、2次創作と言うことができるかもしれない。母校の応援団はなぜか権力を持っていた。「伝統の力」があって、応援団の演舞中に声を出すとか、拍手をするタイミングとかが細かく決められていた。それを破ったときに、応援団長が怒る場合があった。そして、毎年新入生に、校歌指導を行っていた。校歌、応援歌を、暗記して大きな声で歌えるようになるまで指導するのだ。これは一種の通過儀礼と言えるだろう。その学校の生徒になるための通過儀礼。ところで、元々は2次創作であったであろう応援団が、なぜここまで影響力を持つに至ったのか。ここからは妄想の域になってしまうが書く。


戦後の男女共学化が、暑苦しい感じの応援団への敬遠を招き、全国的に応援団が奮わなくなった。その中で、母校は男子校のままだったため、応援団文化が比較的損なわれることなく残った。その特別感が「伝統」としての特権化を生んだ。


普通だったものが、周りの状況の変化の中で、たまたまそれだけは変わらなかったとき、その普通は「特別」になり、「守るべきもの」、「伝統」へと変化していくのかもしれない。それが良いのか悪いのかは分からない。母校の応援団を批判する気はない。その「伝統」が権力になってしまったところに興味があるのだ。

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