終話 あとがきに変えて
これはただの記録書である。その記録はとある歴史を作ってきた一人の人間の魂が定着したもので、こんな文から始まる。
『歴史とは、誰かが生きた証である。しかし誰もが、歴史のすべてを把握することなぞできない。しかし、確実に今この瞬間が、過去のすべてが未来へと繋がっている。不要な物は何もない。
我々はあらゆるものを支配しながら、支配されながら、矛盾する世界をすべて抱え込みながらとりもなおさず進んでいかねばならない。何かわかったと思ったら、何かつかんだと思ったら、すぐにまた新しい世界が出てくる。わからないことをひとつ解明すれば、またさらにわからないことが十個出てくる。終わりなき旅と戦い。しかしそれは悲観すべきことではない。すでに誰かが歩んだ道をなぞりながら、さらに新しい道を作かねばならないのだ。それが今を生きるということなのだから。』
これには続きがさらにある。
それはすべてを受容するということだ。すべてを主体的に肯定することだ。ある者にとってはそれは只の許しに見えるかもしれない。しかしそれは他人や過去への許しではない。世界への、自己への許しであるのだ。
世界を受容できたとき、われわれは初めて次なる一歩を踏み出せることができるだろう。願はくは、その一歩を踏み出せる人間が現れることを待っている』
(了)
ディーン・オータスとラヴの秘密 阿部 梅吉 @abeumekichi
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