天真爛漫な美少女レスラー♪
まな@桜庭愛
第1話 リングにあがる少女
煌々と光輝く照明の明かりに照らされ、ふたりの女子レスラーは対峙していた。
薄暗い会場に整列された客席には人影のシルエットしかわからない。会場に熱気が充満し、高揚感が空気を昂らせている。
「今日も頑張るからねー♪」
天真爛漫な笑顔を観客にむけつつ愛嬌を振りまくのは、腰まで伸びた黒髪に豊満な胸元の元気な印象を見るものに与える健康的な可愛らしい顔立ちの少女。
あどけない幼さが残る童顔に蒼い光沢のある胸元に白いラインの意匠のハイレグ水着を試合の衣装にして元気いっぱいに客席に手を振っている女の子はチューブトップの形状の水着はしなやかな曲線を描き、太腿から伸びる戦闘的な脚線は膝下から蒼く水着と同色の爪先まで覆ったロングブーツによって引き締まった印象を与えている
私は対角線上にコーナーポストを背にして私に強い光彩を投げかける視線を一瞥した
プロレスのリングにあがってファンサービスに終始している私に対して敵意を剝き出しにしている怒りや嫉妬とも思える感情を投げかけられ…
(ふんっ、怒ってるんならかかってくればいいわ。)
っと内心、勝気に相手を真っ向から睨み返した。剣呑な視線はまずます光彩を強く射すくめるように睨みつける。
―まさに、一触即発。ここで試合開始のゴングが鳴り響いた。
私とは対照的に、栗色の長髪の対戦相手は猛然と掴みかかり五指を開いて指を通し、リング中央でがっちりと握手を交わしように力比べにはいった両者は一進一退の攻防(ううっ、…強いっ)
力任せに押し付けようと体重をかけてくる相手に大粒の汗とともに焦燥感。
歯がみしつつ自分の思いとは裏腹に後ろ、一歩、…また一歩と後退していく肢体は最後に決壊するように相手の力のベクトルの前に押し流されてしまう。
「ああっ、くぅ、うううぅ」
優位にたった相手は身体が崩れた私の胸元に肘打ちの連打,連打!鈍痛の様にじんわりと痛みが熱を帯びて痛みにあえぐ私の前髪を掴んで自分に引き寄せる素振り。
「ああぅ、痛ぃ、ああああっ…」
痛みに身を縮めていると強引に相手に引っ張られロープに振られる。
身体の意思とは反して跳ね返る様に相手にむかって走らされた自分の身体に相手の腕が大きく振りかぶっていた。
「ああああっ、ううっ、あん、あん、…」
相手のラリアットが首筋に突き刺さりマットに背中から叩きつけられ身体の芯まで響くような痛みに顔を顰めてしまう。
下半身を大きく相手の体重をかけて後ろごと身体を倒して相手の腰にダメージを与える逆エビ固めに震え、断続的に軋みをあげる腰の圧迫感。
「あああっ、ロープゥゥッ…」
自力で技を解くことを困難であると私は見切りをつけた私はリングの四方に張り巡らせれたロープの一房を掴んで技を解除すべく痛みにみ身震いしながら手を伸ばす。
こういう所はプロレスがより洗練された格闘技であると愛は思う。
腰に乗った相手の体重ごと、マットを這うのはとても困難な事といえるが、大粒の汗が体中からあふれる様に蒼いハイレグ水着は汗と疲労で重くなってきていた。
「よしっ、ロープブレイク!」
はっしとロープの一束を掴み、舌打ちする相手を尻目に私は立ち上がる。
疲労感でふらふらになりつつも未だその強い黒い光彩は衰えも、翳りも見受けられない再び組み合って肩に首を乗せられた体勢から背後に叩きつけられた。
「ううっ、あうっ…!」
ブレーンバスターで背中をマットに強打して起き上がれなくなっていた私を再びロープに走らせる。今度は相手もロープに走り、反動をつけて腕を大きく振り上げようとした。さっきまでとまったく同じ動き…愛の黒い瞳が反撃を意識する。
「…舐めないでよね♪、同じ技が通用するなんて思わないでよね!」
振り上げた腕に組みつくとその腕を逆手に捻って、肘から相手の振り上げた腕を巻き込むように体重をかけて絞ろうとする動きに相手が痛みに戦慄いた。
「こらっ、イタタタァ…この馬鹿娘、親にむかって…!」
「えっ、ええっ!、お母さん?、お母さんが対戦相手なんて…」
ぎゅっ、ギュギュユーっ
「痛いっ、痛いっ、このっ」
外そうにも腕を巻き込み体重をかけて腕関節を極めた脇固めに悲鳴をあげる。
「あはっはーっ、どう、お母さん?、私の寝技きくでしょ♪」
「こぅんの、大馬鹿娘ぇー…!」
ベッドから転げ落ちて寝ぼけた眼でじっとあたりを見回すと…そこはリングじゃなくて、私の部屋? あれえ、…私の試合は、まさか…夢だったの?
「夢だったのじゃないわよ。もう。お母さん仕事にいくんだから起きなさいよね」
そう、仁王立ちしている母の形相にビクッと身震いして
「んー…でも、夢でもお母さんを苦戦させたなら御の字かな」
そう笑顔で微笑む娘にため息ひとつして…
「そういうのは正式に女子プロレスにデビューしてからいいなさい。特にお母さんはまだまだ現役ですからね。わかったら顔を洗ってきなさい。朝ごはんできてるよ」
母親に大張りされて素直に従う。
寝巻代わりのランニングシャツに下着姿。年頃の娘の格好としてはもう少し慎み深くいなさいよねと苦笑してしまうものの娘は大らかにそだった。
(…さっきの脇固め。しっかり極まっていたと思ったけど…)
とたとたっと階段を降りて洗面台に向かう愛は自分が未だ未熟だと痛感していた。
…でも、それが何よりも楽しい。
今のところ、目標はお母さん。フロール亜希子だね♪
そう、愛はうきうきしつつ洗面台に写る自分の姿にがくぜんとした。
「ナニコレ…」
もはや、絶句。
愛の長い黒髪は様々な角度で寝癖がついてしまっていたのだ。
素早く時計を見つめてさらに絶望。
「おかーさんっ、何でもっと早くに起こしてくれないのーっ!」
こうして桜庭愛の一日がけたたましく、いつもと変わらない日常がはじまった。
「ほらっ、皆勤賞なんでしょ。さっさとシャワー浴びてきなさい」
慌てて乱暴に寝巻を脱ぎ捨てて浴室のドアを閉める音に母はやれやれそういう所は治らないねぇと苦笑しながら二階から降りて階段を降りる音は軽やかに。
「まぁ、バカは風邪ひかないっていうし、大丈夫でしょ」
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