第345話 おにゃのこだった!(責任はとらないよ)
「ぱ、ぱんつはいてるからいいじゃないか! 下の階のお人形さんなんて、ぱんつはいてないのにソードが縦切りにして丸見えにしたんだぞぅ!」
「別に、わざとじゃねーよ! そもそもはいてねーなんて思ってなかったし!」
ソードとギャーギャー言い合う。そして、仕草と一言でわかった。ラセツちゃんはおにゃのこだった。ごめんね。でもなら、上も下着つけててよ! なんでじかに鎧を着ているのよ! 女子としてどうなんだ!
「悪かった。責任はとらないが、詫びはしよう」
とりあえず綺麗な布(式部メイド)を取り出してふんわりとラセツちゃんを覆う。
「……鎧下に着る服をプレゼントしよう。今はとりあえずこれを巻いておけ。――ソード、クーラさんとの戦いは任せた。私はこの階では服を作らねばならないようだ」
「あーはいはい。ほんっと、戦いにならねーダンジョンだよな」
ソードが手を振り、クーラさんに向き直る。クーラさん、憤怒の表情。
「ラセツに恥をかかせた罪、私が断罪してくれよう!」
「ちょっと待ってよ、俺のせいにしないでよ。アレ、インドラがやったんじゃん。俺だってまさか、鎧をはぎ取るとは思わなかったんだよ」
とかクーラさんとソードが言い合いながら戦い始めた。
ちょっとちょっと、まるで私が痴漢みたいに言わないでよ。そもそもけしかけたのお前等二人じゃんかよ!
……って考えつつも、パターンとって服を作っています。
「まっちっのー、お針子さーん 今日も元気にチクチクチク!」
歌いながらも裁断機レベルで早く裁断し、ミシンより速く縫う! おまけに手でプレス!
さっそく完成!
「どうだ! 前側にタックをいっぱいとった、かわいい下着だ! 裾にスリットを入れたし、身体に沿うようにパターンをとって縫ったので、着やせ効果もある! さぁ! コレを着てみろ! さぁさぁ!」
膝を抱えていじけていたラセツちゃん。服をチラッと見た後、小さくうなずいた。
魔術で段幕を張ってあげて、お着替え中。
女子が好きそうなベビーピンクで作ってあげたから、完璧さ! ついでにペールブルーで替えも作ってあげたぞ! やっさしーい!
「……そういえば、私が女子のかわいい下着を作ってあげても、みんな着てくれないんだよなぁ。かぼちゃぱんつとか、とってもかわいいと思うんだけどなぁ」
「ちょっと、独り言がデカい。気が散るからやめて」
ソードがツッコんできた。けど聞こえませーん。
「ラセツちゃん、かぼちゃぱんつもどうだ? 伸縮性のある魔物の紐をウエストと裾に入れてるので、着脱が楽、そしてふりふりティアードでかわいいのだ!」
「…………はく」
手早く作って、渡す。
そしてはいたらしい。段幕から出てきた。ご機嫌も直ったようだ。
「うむ! なかなか似合ってるぞ!」
うんうんうなずく私。まんざらでもないラセツちゃん。
「ちょっと、ホントに気が散るから、そこで勝手に盛り上がらないで」
戦いつつもソードがまた言ってきた。
「お前なら気を散らせたって戦えるだろうが」
なにを今更、普通の人アピしてきているのだ。
「……ラセツ!? お前、何を普通の女の子みたいな格好をしてるんだ!」
あ、本当に気が散ったらしい。クーラさんが剣を止めてしまった。
私は手をヒラヒラ動かしてクーラさんに言った。
「こちらは気にするな。ラセツちゃんにお詫びしただけだ。それにこれは鎧下。この上から鎧を着れば、下にどんなかわいい下着を着ていようともわからないのだ。見えないオシャレというヤツだな!」
「ほう。それはなかなかいい響きだな」
と、ラセツちゃんも気に入った様子だ。
うむうむ、と二人でうなずいていたが、気が散っている二人、こちらを見ています。
同時に何か言いそうだったので、振り返って手で制した。
「シャラップ! お前たち、この程度で気を散らしてどうするんだ! 魔王様が観てるんだぞ! もっと気張って戦え!」
で、ハッとしたのはクーラさん。ソードが苦笑した。
「やっぱ魔王様、観てるって思う?」
「ダンジョンに入ってから、がっつり逐一観てるな」
魔王様、よっぽど退屈だったらしい。四天王の話を聞く限りでもそんな感じだったしね。
ソードが肩をコキコキ鳴らした。
「じゃ、気合い入れて戦うか。そっちも入っただろ?」
「…………魔王様に、無様な姿は見せられぬ」
クーラさんも気合いが入ったらしい。構え直した。
ラセツちゃんは青くなった。
「…………私の無様な姿も見られたのだろうか?」
「無様な姿は見せていないので見てないと思うがな。ソード相手に頑張っていたぞ? 扉前を守護していた連中は、心折れて、膝をついて首を差し出したからな!」
「…………そうか」
安心したようにうなずいたが、その後ジロリとにらまれた。
「だが、私が言いたいのはその後の話だ。お前が私の鎧をはぎ取ったことを言っている!」
……だってぇ……。ちょっと茶目っ気出しただけじゃん。着てないなんて思わなかったし、鬼に性別があるとも思ってなかったんだもん。大抵の魔物って無性だしさ。
「まぁまぁ、それは悪かった。だから今度からは鎧下をつけてくれ。紳士淑女たるもの、鎧の下もオシャレをせねばならんぞ? 私だって下着はかわいいのをつけているのだ!」
フリフリのティアードぱんつだ!
※クーラさんの代わりにラセツちゃんが脱ぎました!
ちなみにラセツちゃんたちオーガは無性です。
インドラが「性別あり」と誤解したままにしておきたいので注意書きにしておきます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます