拠点従業員増員編

第148話 妖精を紹介したよ

 そんなこんなで寄り道しつつ拠点に着いた。

 さて、アマト氏はたどり着けてるだろうか。まだだったら、迎えに行ってやろう。死んでなければ。


 ……と、メイドと使用人たちがずらりと勢揃いでお出迎え。

「「「お帰りなさいませ」」」

「ただいま。アマト氏は無事着いたか?」

「はい。ロブさんは酒作りのメンバーに、アマトさんは魔物の世話係を行っていただいております」

「お、無事に着いてたか。ま、インドラが玩具渡してたから、やすやすとは死なねーとは思ってたけどよ」

 ソードが軽く言う。


 それにしても、魔物の世話係?

 確かに魔物をお世話してくれる係は重要だ。でも、アマト氏、魔物大丈夫だったのか? ウチの子は魔物としてはかなり大人しい部類だと思うけど、牛や鶏とは違うぞ?

「アマトさんは、インドラ様と同じく、魔物と会話出来るスキルがあるようでして」

「マジかよ!」

 ソードがショックを受けた。

「牧場の魔物と意思疎通が出来る人間がアマトさんのみでしたので、お願い致しました」

 へー! それは勇者スペックなのかな? やっぱ勇者はチートだなー。私はこれでも努力してこうなったのにさ。


「まぁ、二人と仲良くやっていけそうならなりよりだ。――それでな、さらに追加だ。今回スカウトしてきたのは、なんと! 酒造りチーム喜べ、お前等待望の、蒸留酒を製造する魔導具を作る職人だぞ!」

 オオオオオー! と拳を振り上げて喜ぶ酒造りチーム。

 プラナがドン引きした。そして血の気を引かせた。

「ボ、ボ、ボク、こ、こんなに期待されても……」

「期待に応えろ。出来ないとは言わせない。作るんだ! 別に、たった一度で成功しろなどとは言ってない。何度、何十回、何百回失敗しようとも創り上げろ。エルフとは長寿……だよな?」

 ソードを振り返った。

「そうだよ。つか、聞くなよ。締まらないだろ」

 しょーがないだろ! 確信がないんだから!


「長寿ならば、それを生かして、一つ一つ試していけば良い。失敗を恐れるな。試行錯誤しろ。別に、息抜きもせずひたすら作れとも言ってない。いつか、完成させろ、と言っている」

 プラナ、それで血の気が戻ってきた。

「うん! 頑張る!」

 ガッツポーズ。

 うん、かわいい。かわいいは正義。

 頭を撫でた。


「……お前って、性別種族関係なしに何でも愛でるよなー」

って唐突にソードが言い出した。

 いいんだ。かわいいは正義。


「では、次だ。主にレストランチーム、料理人チームのお助け人、そして一部酒造りチームに関連するな。コイツはなぁ、なんと! 土から美しい食器を作るんだ!」

 シーン。……あれ? そんなに感動がない?

「……銀食器を使っているだろう? 毎回、黒ずんだ食器を磨くのは大変だろう? コイツが作る食器は、その磨きがいらなくなるのだ。木のように、匂い移り色移りを気にすることもない。しかも、料理に合わせた色や形の食器に出来る。つまり、より美味そうに見える食器を作りあげるんだ!」

 理解出来たらしい。

「おぉ……!」

「なるほど、さすがインドラ様……!」

って、私が作るんじゃないから。

「で、コイツはガラスも扱える。今まで瓶の蓋に難儀してただろう? 瓶を買い漁るのも面倒だし、形が揃わない。そこを解決してもらう!」

 で、酒造りチームがまた盛り上がった。

「他にもやってほしいことはたくさんあるが、まずは問題を片してからだな。……お? ロブさん、いたか。どうだ、調子は」

 ロブさんが最後尾で控えていた。

「インドラ様の叡智のおかげをもちまして、非常に溌剌とした毎日を送らせていただいております」


 …………おや?

 なんか、雰囲気変わった?


「このような素晴らしい酒が存在することを私は今まで知らず、そしてその作り手の一人になれることを非常に感謝しております。この酒を生み出されたインドラ様の叡智に、永遠の忠誠を捧げます」

 騎士の礼をされたし!

 うん! なんか酒が好きすぎて壊れた人がいた!

 なんだよ、どうしてそうなった?

「あー……。また信者が増えたかー……」

 ソードがげんなりしている。

「そういえばアマト氏は?」

「魔物たちに遊ばれて……いえ、魔物たちの世話をしております」

 うん? またなんか変なワードが出てきたぞ?

 遊ばれてるって?

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