第136話 <閑話>勇者アマトの冒険 弐

 その英雄さん。明らかに、俺と同郷の人っぽい。いや、髪の色とか顔立ちから、国は違うっぽいんだけど。一緒にいる一見蜘蛛みたいなでっかいロボってさ、蜘蛛型だけどアレを参考にしてるよね? あと、海に乗ってったボードも、絶対にアニメ参考にしてるよね? ちょ、羨ましいんだけどそのチート! ちょっと話を聞いて、作り方教えてもらおう!


 そう思って話し掛けようとしたら、殺されそうになった。

 超、ビビった。

 ――ちょっと、この世界、怖い。

 そんなにすぐに人を殺しちゃうの?


 ……でも、話したら良い人だった。既に、もう一人に王都で迷惑を掛けられたらしい。……アイツ何やらかしてんだよ⁉ 俺、とばっちりで殺されそうになったんだけど!

 聞いたら、英雄さんじゃなくてもう一人の少年の方が転生者だった! すげーチートしてるらしい。だよなー。ロボ作ってるもんなー。


 詳しい話を聞いてると、俺には無理そう。元々の知識量に差があるね。俺、プログラムしかわかんないし。ある程度PCとかもわかるけど、でも、マザーボードの部品までを全部一から作れ、って言われると……。料理も、(作ったことないけど)マヨネーズくらいなら作り方知ってる……あ、完全には無理だわ。材料くらいはぼんやりわかる程度。

 ところが彼は、いろいろ知ってる。勿論マヨネーズの正しい作り方も知ってるし、しょうゆも味噌も作ったことあるらしい。発酵食品に興味があって、好奇心の赴くままにいろいろ調べて作ってたそうだ。

 うへぇ、こういう人がチート主人公って呼ばれるのかよ。

 ミルクが手に入らなかった時期には、アレルギー対応食品を作ってた知識を活かして豆からバターモドキやらチーズモドキ、ホワイトルーモドキを作ってたんだって。……俺、チート無理だわ。


 その彼が故郷の料理を作ってくれて、食べたとき思わず泣いた。……それは、確かに彼が言うように、何かが違う味だった。

 だけど、それがどうした。これは、まさしく、ここにくる前までに食べてた味だった。


 その後、英雄さんが自力で拠点に着けるなら匿ってくれる、というようなことを言ってくれたんでその話に飛びついた。ロブさんも一緒に来てくれるらしい。

 英雄さんてば、インドラ様(敬意を込めて敬称をつける)に間違った別世界情報を植え付けられてるぽくてさ。

 インドラ様の言ってることは間違ってない、間違ってないけど、ソレ、俺とかその世界にいた人間じゃないと伝わらないから! って伝え方してて、俺に正しい情報をくれ、って言い出した。

 ……確かに、蜘蛛型の喋る戦車は、俺の世界にいなかったよ。知らないだけかもしれないけど。空飛ぶ箒って……そんなん作ったのか?

 いや、箒は飛ばないな。飛ぶのはヘリと飛行機。あとドローン。

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