第135話 <閑話>勇者アマトの冒険 壱
ハロー。俺は
28歳の立派な社畜だ。恋人? ナニソレ食えんの? な、もう少しで魔法使いになれる恋人いない歴イコール年齢……うっさい! そんなことどーでもいいわ! 恋人は会社! ……だった俺は、今、知らない世界で馬車に揺られてます。
ようやく、ようやく! 度重なる修正が終わり、テストも終えてプログラムを納め、もうろうとしながら家に帰ったあの日。
電気をつけてもないのに明るくなり、いきなり眠気と疲れがぶっ飛び、何が起こった? って思ったら、見るからに! 神殿! なところに来てました。
夢かと思った。つーか、今でも夢なんじゃないかと思ってる。
「勇者よ、よくぞ参られた」
って、いかにもラノベの定番のセリフを聞いて「コレ、あかんやつや」と焦ったよ。だけど、呼び出されたのは俺の他にもいた。超、ホッとした。
で、ラノベ定番の!「私にはそんな能力がありません」お断りをしようとしたんだけど!
……どんどん話が進んでいくんですけど? ちょっと待って、普通「それでは、鑑定でステータスを見てみましょう!」とかあるじゃん? ないじゃん!
これ以上進むと魔王倒しに行かなくっちゃならなくなるー! ってトコで腰を折った。
「あのー……。二人呼び出された、ってことは、どちらか勇者ではない、ということでは……」
もう一人は、中学生?高校生?くらいの、右手に包帯してる!絶対コイツ特有の病を患ってる!ってやつだったので、恐らく勇者は断るまい、と踏んで奴を生け贄に逃げようとしたんだけど。
「勇者召喚の魔法陣が呼んだ者ならば、全て勇者であろう」
とか言い出してますけど!
いや違うだろ! ホラ! もう一人も不満そうな顔をしているじゃん?
「勇者は、俺一人で十分だろう。あんなオッサン、足手まといにしかならないな!」
……オイ今、オッサンて言ったかコラ? とは思ったけど、俺は大人の事なかれ社会人! 無視だ!
「ホラ、彼もそう言ってますし、ハハハ……俺は勇者じゃないですって」
言ったけど聞き入れられない。……なんか、槍を持って踏ん反り返ってるごっつキラキラした甲冑着てる人がこっちを刺したそうに睨んでるけど、それでも俺は勇者じゃないよアピしてたらさ。王様の隣にいる仕事出来そうな側近の人が前に出てきて、曰く。
王様たちが呼んでるワケじゃなくて、魔法陣、勝手に召喚するんだって! で、事情を説明し、魔王討伐に向かってもらうんだって! なんだよその夢も希望も無い話は!
「何も知らないまま呼ばれても困るであろうと、王宮が援助の手を差し伸べています。ひとまず王宮に滞在していただき、ある程度の訓練を受け、供の者をつけて魔王を討伐しに向かっていただく。こちらとしても、魔法陣を止めたいのは山々なのですが、
終わった。絶対、終わった。
もう一人は、わかってないのか喜んでいる。
「私が必ず仕留めてみせよう!」
とか言っちゃってる。むしろうらやましいかもね、そのわかってなさ加減。とりあえず、向かうフリして逃げるか。
「すみません、じゃあ、向かいますので、当座のお金をいただけますか? あとは一人で……」
「いいえ? ひとまず王宮にて、基礎魔術と基礎剣術の訓練をしていただきます。出立も、勝手がわからないでしょう。共に魔王を倒す志を持つ者をつけ、道案内させますので」
ニッコリと、笑いかけられる。あ、逃げだそうとしてるのバレてーら。
仕方なく訓練を受けた。もう一人の勇者、ちょっとお馬鹿ちゃんらしくってさ。学生卒業して暗記力が落ちてる俺ですらなんとか詠唱を覚えたのに、全然覚えられない。
そして、彼、かなりヤバい。厨二の上にイキッてる。
痛々しいし、変なこと言いまくって、プライドも高いのかあっちこっちで不評を買い、喧嘩を売りまくってる。
俺、無理だから。あんなんと一緒に魔王討伐は、絶対無理‼
「もう基礎は出来たし、とにかく! アイツと一緒に魔王討伐だけは勘弁してくれ! じゃないと、貴方、一緒に行ってもらいますよ? お目付役として!」って、俺を逃がさんとしていた奴目がけて直訴したら、先に出立する許可を得た。そして、逃げるように出た。
お供の人は、一人だけ。逃げやすくて有り難いような、心もとないような……。
お供の人は、ロブさんと言うらしい。少し腕慣らしがしたいから、海の町とかある? 海洋生物なら殺しやすいから、って言ったら、怪訝な顔をされたけど了承された。
そうして連れて来られた海辺の町で、彼等に会った。
英雄【迅雷白牙】だって! うわー、みんなカッコイイとか言ってるけど、本気? 確かに見た目は割と男前だけどさぁ、その二つ名、痛々しくない? 恥ずかしくないのかな?
つーかさぁ、英雄って何? そんなんいるなら、ソイツが魔王倒せばよくね?
って思ってロブさんに英雄とはと聞いたら、彼、ドラゴン撃退したそうです。
魔王じゃなくてドラゴンか……。俺、どっちも無理そう。でもどっちかっつったらドラゴンの方が……あ、そのドラゴンに王都が灰にされるところだったと。魔王の方が、まだ勝てる可能性がある、と。
うん、そっか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます