第121話 俺にとっての一番<ソード視点>
暫くアレクハイドとシャドの顔を見た後、顔をそらした。
「……それなら、そう頼めば良かったんだよ」
ため息をついた。
「アイツにあんな態度を取って、それで頭ごなしにやれっつってやるやつだと思うか? 『神』に等しい魔術を使う者に、
二人が固まった。
「もう一度言う。俺は、インドラの味方だ。俺を使うなよ? 俺は、アイツの足枷になるつもりはない。なら、魔法陣ぶっ壊して、王都を吹っ飛ばしてアイツとこの国をオサラバするさ。俺の一番は、アイツだ」
それだけ言うと、席を立った。
「じゃーな。もう、呼ぶな。俺は冒険者、お前たちは王城という魔窟に棲む、ボスとその筆頭の側近だ。お互い昔とは立場が違うだろ。勇者の情報はありがたく受け取っておく。……出会ったら、最悪、殺すことになるかもしれないとは伝えておくよ。謝礼は今日のその酒だ」
ドアを開けると、目の前に騎士団長が立っていた。
「話は終わったので、退出する」
「…………」
どかねぇ気だな?
俺は、ニッコリ笑うと、俺をにらむように見つめる騎士団長を、横にスライドさせた。
「残念だけどな、お前程度じゃ脅威にもならねぇし、邪魔にもならねーよ。もっと精進しな」
手を振って歩き出すと「出会え!」と号令を掛けてきやがった。
……オイオイ、犯罪者扱いか?
「よくもまぁ、勝手に呼んでおいて犯罪者扱いするよな? だから王城なんて来たくなかったのによ……。つーか、インドラ呼ばなくて、ホント正解だぜ。アイツだったら、コイツら喜び勇んで生皮はぎにかかるだろうよ」
舌打ちして、ちょっくら暴れてやるかと身構える直前で「騎士団長、控えよ!」って王が命じた。
「……ですが!」
「余の命が聞けぬか。……シャド」
「はっ!」
「いえ、決してそのような!」
後ろで茶番が始まってるらしいが、どーでも良い。あ、やべぇなって気配感じたと思ったら、壁が吹っ飛ばされた。
俺は額を手で打ったが、ま、しょーがねぇ。
「ソードさん、緊急事態?」
「お前がやらかしたおかげでな。ハァ……ま、いっか。んじゃ、行くか」
「「あいさー!」」
現れたリョークに飛び乗った。
つーか、二匹とも来てるじゃん。インドラが向かわせて見張らせてたな?
「じゃーな! 王城をこれ以上壊されたくなかったら、もう呼ぶなよ!」
手を振って、唖然としてる連中に笑って挨拶すると、リョークと外に出た。
リョークは手から縄みたいなのを出して、壁やら屋根やらをぴょんぴょん跳ぶ。
「はは! すっげーな!」
「ブロンコよりすごいー?」
「……あ、やっぱ、聞いてた?」
「聞いてましたよ、ソードさん、ヒドイー!」
ヒドイヒドイと連呼された。
うん、コイツらってもう、生き物。決定。
*
リョークに乗って連れて来られたところは、人だかりが出来て、なんか盛り上がってた。
「お、戻ってきたぞ!」
訝しんでたら誰かが声をかけてきたけど。
……えっと? 何してるんだ?
って考えてたら人垣を割り、インドラが出迎えた。
「おぉ、大丈夫だったか? ……でもないな。リョークに乗ってきた、ということは、何かしらトラブルが遭ったんだろう?」
うーわ、鋭いね。
リョークがインドラに向かうとインドラがリョークをなでる。
「ソードさん、緊急事態」
「お前が壁を吹っ飛ばしたせいでな。……ま、いいけどな。連中の阿呆面が見れたし、あの騎士団の連中も、壁壊されたとなったらコッテリ絞られるだろ。
……って、それはともかく。何? この騒ぎ」
リョークにツッコんだ後、周りを見渡した。小さな村のフェスタみたいになってるんだけど?
「お前が王城で悪鬼のような貴族の連中に悪意と嫌味を浴び続けて神経を磨り減らせて戻ってくると想像が出来てな、皆で慰労してやろうと、屋台を作ったのだ!」
ワーッと盛り上がってる。
……ちょっと、もう飲んで出来上がってません?
「お前はいい子にし過ぎなんだ。黙って聞いてやってる理由なんてどこにもないんだぞ? ほら、皆も言ってやれ!」
「まぁまぁ、【迅雷白……じゃなかったか、ソードさんよ、堅苦しかったと思うが、飲みましょーや」
「王城なんて大変なトコ、よく行ってきたねぇ、ホラ、これも食べな」
…………。
「はは!」
笑い声が出た。
……ホンット、俺の相棒は、バカで陽気で……優しいやつだ。
「よーし! 堅ッ苦しいトコに呼ばれて疲れてヘトヘト、嫌味もいっぱい言われた! 呼ばれて行ったのに、犯罪者扱いもされたぞチキショー! 全部、飲んで忘れてやるからな!!」
「「カンパーイ!!」」
大声で怒鳴り愚痴り、みんなで乾杯した。
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