第107話 更に先に人がいたよ

 ソードはすぐさまレーザー剣に手を伸ばす。

 待て待て、気が早い!

 会話が先!

「こんにちは」

 ソードが急にガックリと肩を落とした。

「ホンット、お前って、冷静で頼もしい。どこでも通常運転! マイペース!」

 うるさい。

 ソードを無視してその人を見た。

 ――その人は、やはり美しい造形をしていた。

 だけど、人では無いのは、先程の者と同じように、作り物めいていたから。

 人型、と言おう。

「初めまして」

 その人型は返してきた。

「あなたは誰ですか?」

「私は、貴方方が【ダンジョンコア】と呼ぶものです」

 言われた瞬間、ソードと私の目が点になった。

「ダンジョンコア様ですか!」

 それはとんだ失礼を! ソードが!

 ソードの剣を構えた手を思いっきりたたいた。

「でっ‼」

「それは失礼を、このソードが致しました。初めまして、私はインドラと申します。お目にかかれて光栄です」

 騎士の礼を行った。

「私に興味を抱いてくれて、うれしいです」

 全くうれしそうじゃないけど、喜んでいるらしい。

 私は社交辞令が通用しないタイプです。

「そうですか。いくつか質問をしたいのですが、よろしいですか?」

「答えられる質問は少ないでしょうが、どうぞ」

 うん?

 前にもリッチさんに質問して、秘匿が多かったけど、そんなものなのか。

「ダンジョンコア様は、創世からいらっしゃるのですか?」

「いいえ」

「それは、全てのダンジョンコア様がそうですか?」

「秘匿とします」

「ダンジョンコア様は、最初からその姿ですか?」

「はい」

「ダンジョンコア様は、外界をご覧になったことがありますか?」

「はい」

 おぉお? この質問は、「はい」なのか!

「……それは、もしかして、人の姿のダンジョンコア様が、実は、外界に降臨されておられる、ということですか?」

「秘匿とします」

 うーわ、そうなのか!

 うっかり人を殺せないな。

 ダンジョンコア様を殺してしまうかもしれん。

「……私からも質問をしてもよろしいですか?」

 と、ダンジョンコア様が尋ねてきた。

「どうぞ、私に答えられることでしたら喜んで」

「……その光はどうやっています? とても幻想的です。まるで夜空の中にいるかのようです」

 ん? ダンジョンコア様、ケミルミネッセンスに興味がおありか。

「これは、ある物質とある物質を混ぜた反応エネルギーで発光しています。魔素を変換して行ってます。これは、このくらいの暗闇で無いと光が見えません」

 ここで化学式をベラベラしゃべろうとして、ソードのウンザリした顔で思い止まった。

 説明しても、わからない、と。

「…………やってみせたら、真似出来ます?」

「試してみます」

 さすがダンジョンコア様。

 やってみせたら、早速試したらしい。

 ホワホワと、光が舞いだした。

 ダンジョンコア様、うっとりと、舞う光に手をかざす。

「あぁ……綺麗」

 いや、そういう貴方の方が綺麗ですよ。

 と、口説き文句みたいなことを言いそうになった。

「――ちなみに、夜空に例えていましたが、正確には、夜空の星は、この星レベルの大きさです。あれは、それほど大きくて光っているので、ここまで光エネルギーが到達して、私たちの肉眼に見えているのです。近くで見たら、直視出来ないほどの大きさとエネルギーです。例えるなら、[蛍]でしょう。暑い夜の水辺で舞う[蛍]のイメージです」

「おい、その何とかって何だよ?」

 ソードがツッコんできた。

 ダンジョンコア様も、キョトンとしてる。

「光る虫だ」

「また虫かよ‼」

 ソードが間髪をいれず叫んだ。

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