第101話 火山地帯のボスと言えば?

 翌日。

 何事もなく、起きて、ボスに向かった。

 予想としては、ボスはサラマンダーのデッカいの。

 あるいはフレイムドラゴン。

 またはアカ○トルム!

 今までのパターンだと、デカサラマンダーだけど……。

 でも、敵が明らかに強くなってるし、マグマの階は恐らく本気で殺しに来てると思う。

 ソードでも、ソロは厳しいと言っていた。

 一度地上に戻り、再度準備して突入しないと無理だと。

 私はどうだろう?

 まぁ、いけなくはないだろうが、楽しくはないな。

 間違いなく魔石は足りなかっただろうから、リョーク背負って駆け抜けることになるだろうな。

 うーわ、つまらない。

 ダンジョンに入る意味が無い。

「どーした?」

「うーむ、次はデカサラマンダーか、フレイムドラゴンかどちらだろうと考えていたのだ」

 ソードが私をじっと見た。

「やっぱ、ドラゴン出てくると思うか?」

 うなずく。

「出てきたら、次は氷雪地帯でボスがアイスドラゴン、そして、その下が最深部なんだろうな。デカサラマンダーなら、まだまだ続きそうな気がする」

 ソードが頭をかいた。

「うーん、どっちが出てきてもありがたくねー結果だな」

 ソードを見上げた。

「まぁ、千階続こうが、ドラゴンが出てきてあと少しだろうが、どのみちもうすぐだ。飽きてきたらシャールで爆走すればいい」

 ソードが横目で見た後、私の頭をくしゃくしゃにした。

「頼りにしてるぜ、相棒」

 …………うん?

 …………なんか言われた。

「…………お前は、一人で、ドラゴンをやっつけたんだろう? 私が居なくたって、ホントは、出来るくせに…………」

 そういうことを言うのか?

 ソードが笑った。

「何モジモジしてんだよ。お前だって、ホントは一人でダンジョン踏破出来るだろうが」

「それって、すごーーーくつまらなくないか? 私一人だと確実に魔石が足りん。リョークを背負って、ひたすら走るだけなんて、なんの罰ゲームだ?」

 ソードが今度は声を出して明るく笑った。

「うーわ、確かにつまんなそうだな。ワクワク感の欠片もねー踏破だ」

「…………だから、私も、その。…………何でもない」

 アイアンクローが来た!

「ぎゃー! なんでだ⁉」

「言いかけて止めるな」

 それでアイアンクローされるの⁉

 理不尽じゃないか⁉

「お、お前が声かけてくれて良かった! って思ってるぞ!」

 手を離された。

「よーし、よく言えた」

 ナデナデされる。

 …………こういうことするから、お父さんの年齢かと思うんじゃないか。

 ちょっとオッサン臭いぞ? 若さが足りな……

「ぎゃー!」

 またアイアンクローされた‼

「お前、今、また、変なこと考えただろ?」

 コイツ、絶対エスパーだ‼


         *


 ボス部屋へ突入。

 ソードがつぶやいた。

「もうすぐ最深部、って方だったな」

 明らかにサラマンダーじゃない、デッカい、立派な鱗が生えたトッケーが鎮座していた。

 フレイムドラゴンらしい。

 咆哮しそうだったので、遮音魔術!

 まんまと咆哮した。

 うーわ、遮音してもすごいな、咆哮特大だ。

「なんかしたか?」

「遮音した。だが、それでもすごいな。高級耳栓でも防げんぞ、これは」

「……なんだよそりゃ? またそんな魔導具作るのか?」

 ソードが呆れた声を出す。

「お前には必須だな」

 笑いかけると、ドラゴンへ向かった。

 とりあえず、小手試しの一閃。

「……おぉ!」

 カキーンと弾かれたぞ!

 これは、本気でかからねば!

「見たかソード! コイツは強そうだぞ!」

「わー、それで喜ぶお前って、ホンット尊敬するわー」

 って言いながら、ソードも走り寄って一閃。

 あ!

 ソードは傷つけたぞ!

 ドラゴンが咆哮して悶えた。

 ソードが息を吐いた。

「……なんとかなりそうか」

 よーし、私も頑張っちゃうぞ!

 気合を入れ、フンワリさんを集めて攻撃しようとしたら、ドラゴンがモーションをした。

 あ、これは……。

「インドラ! 火を噴くぞ! 気をつけろ!」

 ソードが叫び終わった時。

 ドカーン。

 って音がして、ソードが唖然とした。

「うん、これならイケそうだ」

 ドラゴンの頭部がボロボロになった。

「……何やった?」

「恐らくだが、ドラゴンの火炎は、真空魔術では防げん。燃え続ける火を鎮火させるのには効果的だが、火を吐く場合、燃料と共に吐き出すので、効果が無いのだ。だから、吐き出すその手前で引火爆発をするように頭部に爆発する空気を集め、周りを真空にした」

 ソードが口を開けて呆気にとられたようだが、気を取り直した。

「ま、対策があるならそれでいっか。火は、気にしなくて良いっつーことで」

 油断は大敵だけどな?


 火が吐けないドラゴンは頭にきたのか暴れまくり、踏み潰そうとか尻尾でたたきつけようとかしてきたけど、鈍いので当たらない。

 ここで、かの名台詞「当たらなければなんちゃら」を言うべきか?

 いや、そもそも当たっても死ななそうだから、言う必要ないか。

 ――ソードが地味に切り刻み、私は隙を見て、大技を決めた。

「……食らえ! 斬竜剣‼」

 尻尾切ってやった。

 素材はぎ取ってやるぞ!

「フハハハハ! 斬竜剣よ! 戦野を斬り拓き全てを灰にせよ!」

 木刀を愛でながら高笑いした。

「いや、お前のソレ、木剣だろうが」

 こんなときにもツッコむソード。

 そして粒子になる尻尾!

「おおおおおお? 尻尾が粒子になって消えたぞ⁈」

 はぎ取り不可だった!

 尻尾切られ、怒って咆哮し、さらに暴れるフレイムドラゴン。

 これは、ア○ムというよりか、怒れるティガ○ックスだな。

 最終的に、隙を見たソードが首チョンパした。

 粒子になって消える。

「さて、部位破壊報酬は出るかな?」

「尻尾切ったら高得点ってルールがあったのかよ。初耳だぞ?」

 冗談なのにソードにグリグリされた。

 宝箱を開けて二人で覗き込んだ。

「おー、すげー入ってるな」

 ソードも感心するほどにいろいろ詰まってた。

 私は、唖然。

 宝石が……カット加工されてる宝石が出たんですけど?

「…………。ちょっとー、原石の宝石が入ってるならまだ理解出来るけどぉ、もう加工済の宝石が入ってるって、どーーゆーーコトーー? コレ、誰が加工したってゆーーワケェーー?」

 ソードが私を見て呆れた。

「お前って、怒ると、柄の悪い女みたいなしゃべり方になるな」

 って言われたんですけど、私、女です。

「まーま、いーじゃねーかよ? ダンジョンコア様、奮発してくれたぜ? かなりの高額商品だぜ、こりゃ」

 ふーん。

 でも、ソードも私もお金に困ってないから、あんまりうれしくないんじゃないかな?

「金にもなるけど、それだけ稀少ってことだ。ドラゴン素材もザクザク入ってるし、いろいろ作れるだろ」

「そっか!」

 新たな魔導具や、リョークやシャールの素材に出来るかもだ!

 ソードが私を見て笑った。

 で、頭をなでた。

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