第100話 全部捨てて詰め直せ<ソード視点>

〈ソード〉

 インドラに冷却魔術をかけてもらい、外に出た。

 片付けだから、マグマに当たっても死なねー魔術にしたってよ。

 何だよそりゃ?

 アイツ、確実に俺よか実力が上だろ。

 別に一人でもこのダンジョン突破出来たんじゃねーのか?

 って、不貞腐れつつ、マグマに向かった。

 袋の中身をザラザラ捨てる。

 …………なんでこんなの取ってたかなー…………。

 初めて冒険者になったときに買った、仲間とそろいの安物の剣だの、ようやく落ち着けるって思ったパーティの、恋人になった女からもらった腕輪だの。

 全部捨てたと思ってたのにな。

 マグマに飲み込まれ、消えていく。

 それをぼんやりと見ながら思った。

「……全然熱くねーな」

 ギリギリに立ってるのに、熱すら感じねぇ。

 …………アイツは心配性なんだよな。

 命を軽く見てるくせに、わざと危険な真似をするくせに、そのくせギリギリで死なないようにしてくる。

 俺のことを不死身とか意味わかんねーこと言い出すくせに、マグマでどうにかなったらって心配して、魔術をかけてくる。

 マナ切れだって、寝てりゃ徐々に戻るんだ、そんなモンなんだ。

 なのに、心配して、変なドリンク作ったりするんだぜ?

 アイツ、自分はマメなお節介焼きだって自覚してんだろうかね。

 んでもって、俺よか実力があるのに、俺と組んでるばかりに俺のオマケ扱いされて正当な評価をされてないってことに気付いてるのかね。

 アイツはそのことに気付いたとしても何とも思わな……いや、拷問するネタが出来たとか言って喜びそうだな。

 アイツ、絶対ドSだよな。つーか、かなり病んでるよな、やっぱ。

 ため息が出る。

 …………本当は、優しいやつなのにな。

 見切りつけて壊れなきゃやってらんねー境遇だった。

 それは、俺もか。

 だから俺たちは一緒にいる。

「ソードさーん。そろそろ戻りましょーよー。お母さんが心配しますよー」

「おう。悪いな、ちょっとボーッとしてたわ」

 リョークに言われて、踵を返す。

 袋の中は空っぽだ。

 今までのガラクタ、全部捨てた。

 これから、新たにここに詰めていく。

 アイツがよく言う、ワクワク感から得られた戦利品と、アイツが作った玩具が詰まってくんだろうな。

「うっし。空にしたところで、アイツに五十階で使った[ガン]とかいう玩具を早速詰めるか」

「僕とどっちがいっぱい当てられるか競争しましょうねー」

「お、そりゃ面白そうだな!」

 ……コイツって、ゴーレムだよな?

 なんかもう、フツーに会話出来てるんだけどよ?

 ……ま、いっか。

 アイツが作ったんだから、何でもアリなんだろ。

 きっと、もう生き物になっちまってるんだろうな。

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