第95話 ゾンビゲーにガンは必須ですよ
さて、次の階だが。
「お化け屋敷をこの面子で行くのか……」
さぞかし脅かし甲斐のないお化け屋敷になるだろう。洞窟だけど。
「とっとと抜けりゃいいだろ」
「そうだな」
……と、思ったんだけど。
「わ! 結構、趣向を凝らしてあるんだな!」
フロアに降りてびっくりした。
墓地風になってる!
そもそもここは洞窟の中だというのに、階を降りるには屋敷の地下へ入るような演出だー!
「ダンジョンコア様が頑張ったんだろ」
ソードが投げやりに言ってる。
「うーむ、折角だから、敬意を表してちょっと遊ぶか。気乗りしてないお前のために、ゲーム風にしてやろう」
マジックバッグから取り出した。
ソードの目が見開き、キラキラする。
ホント、こういうのが好きだなー。
「いくつかあるが、それぞれ特徴がある。頭にたたき込めよ?」
有名ガンシューティングゲーム風に、いくつか魔素ガンを作ったのだ!
「ショットガンは単発で、クールタイムが六発ごとに二秒。打ったら装填……するような動作をしなくてはならない。サブマシンガンは十連連射可能で、十連終わると五秒。これも十連終わった後に装填だ。レーザーガンは貫通するが、使用時間制限があり、一分を超えるとクールタイムに一分。十秒使って十秒休ませればまた最長一分連続使用出来る。ガトリングは、延々と打ち続けられるが、内部にクズ魔石が必要で、魔石が切れたら終わりだ。最後に、手榴弾だ」
五発渡す。
「投げれば半径百……まぁ、中心から広範囲に渡り絶対に死ぬだろう。巻き込まれないように遠くの敵に投げろ」
「お前、凝ってるなー! ホンット、楽しむために全力使ってるな!」
「当たり前だ。この日のために、コツコツ用意したぞ!」
お化け屋敷を淡々と進むなんてつまらんことをしたくない!
でも、これなら楽しい!
ガンシューティングゲーム、超好き!
しかも、縛りも用意するのが楽しむお約束だ!
「あ、ちなみに、人だろうが何だろうが死ぬだろうから気をつけろよ? それが例の有害光線の魔術弾だ」
「ワーオ!」
なんかクレーム言うかと思ったのに言わなかった。
それどころか、超うれしそうにそれぞれのガンを確認してる。
「お前が乗り気で良かった」
「ん?」
「ここから、別世界でのお作法だ。これらのガンを駆使し、ボス部屋前まで、私たち……もちろんリョークも含め、点数争いだ。何が出てくるかわからないので、倒した数とガンの性能により点数を加算する。ショットガンで倒すのが一番点数が高い、が威力も一番低い。お互い魔術が使えるだろうが、魔術だと点数無しだ。点数の確認及び順位は、リストバンドで確認出来る。話し掛ければ出てくるぞ? 敵が肉眼でしか見えない分、お前が不利だろうから、一.五倍に点数を増やしておいた」
「いらねーよ。お前等と同条件で結構だ」
ぶっきらぼうに言ってきた。
お、ソードがかなり殺る気だな?
「わかった。じゃあ、加算条件を戻すぞ」
プログラミングを修正し、ソードにニコリと笑いかけた。
「私の人生の愉しみ方は間違っているか? こんな、生死の狭間で、点数争いを愉しむなんておかしいと思うか?」
ソードが目をパチクリした後、笑った。
「あぁ、お前はぶっ壊れてる。頭のおかしいやつだよ! でも、どーせやるなら、これくらい楽しまねーとな! 俺たちは、生死を賭けたゲームを楽しんでるんだ! チップは自分たちの命! 上等だな!」
ソードは叫ぶと、壊れたように笑った。
「はは! 俺よか壊れてるお前がいて、ようやく人生が楽しくなってきた! ダンジョンの意味なんて考えたこともなかったぜ! そうか! こうやって楽しむものなのかよ! なら思いっきり楽しんでやるさ!」
「いや、かわいく脅える女の子がいたら、それはそれで楽しいぞ?」
ツッコんだら白い目で見られた。
「そりゃ、ドSのお前はな?」
って…………。
「地図は確認しろ。地図ばかり見て足下を掬われてもまずいが」
「わーってるって。伊達にSランクじゃねーから」
むしろゲーマーだよな。
初見のゲームをやったことないのにハンデなしでランキング首位を狙うとは。
「まぁ、上位はリョークだろうけどな。連中に縛りはない。つまり、上位ガンを使い放題だ」
「うっわー。それを早く言って欲しかった」
ソードと視線を合わせると、笑い合った。
「では、行くぞ!」
――掛け声と共に思い思いの方向に散っていった。
「うっひょー! やりますよー!」
って言ったのはソード専用のリョーク。
いきなりランチャーぶっ放したし。
そしていきなりランキング一位。
私お供のリョークも、負けじとジャンプして、ガトリング連射。
ちくせう。
私は、遠くにあるゾンビの巣に、手榴弾を遠投でお見舞いした。
ソードは……あ、チクチクショットガンで撃ってる。
*
それから三時間経過。
とうとう、全員がボス部屋前に集結した。
「途中から順位が出なくなったのは仕様か?」
「そうだ。ボス部屋のある階に一人でも到達したら、以降出ないようにした。面白くないだろう?」
リポップを考えずに先に行くのもまたよし、リポップを全部駆除して到達するもまたよし。
一応、到達順位も総合ランキングに入れてる。
ランキング情報で確認出来る。
「さぁ! リョーク、順位を!」
リョークが、「じゃらららららららららららららららららん!」って言って、ボス部屋の扉にホログラムを出す。
「おし、やった」
「のおおおぉおぉぉおおお!」
ソード、一位。
私、最下位。
「なんでー⁈ なんでなんで!」
ガンを作った本人なのに⁉
ルールも作った本人なのに⁉
最下位ってどういうこと⁉
地面をたたいて悔しがったら、三人から慰められた。
ちなみに、リョークは同点なのだった。
「なんで一度もやったことのない素人のやつが一位なのだーーー! 私なんて、別世界でやりまくったのにぃ!」
「そりゃ、実戦経験の差だな。お前は別世界でやりまくったんだろうが、ここじゃ初めてだろ? 俺は一度ここで単独クリアしてるからな。そのときの情報は頭にたたき込まれてるんだよ」
なんですとーーー⁈
ビービー泣いて悔しがった後、ボス部屋。
盛り上がらないこと夥しい。
「一位のやつが勲章として始末しろ」
「そう拗ねるなって」
キングスケルトンって、会話すら出来ないヤツでますます盛り上がらないのでソードに倒させた。
……ぶっすー!
膨れていたら、ソードがよしよしとなでた。
「拗ねるなよ。面白かったぜ? 心置きなく、俺も楽しめた。だから、ありがとな?」
…………不意打ちで言ってきて、拗ねる気持ちが吹っ飛んだ。
「…………なら、いいけどな?」
「俺も楽しむ。お前と勝負したり、一緒に楽しんだり、お前に勝って高笑いして、お前に負けて悔しがって、一緒に楽しむよ」
「…………うん」
…………そんなに楽しかったなら、うん、まぁ、作って遊んだ甲斐はあったけどな。
…………。でも。
「やっぱ、負けて悔しい‼」
叫んだら笑われた。
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