第90話 王都で依頼を受けてみよう

 翌日。

 ベン君が売り捌いたお金を持ってきた。

「いつもは六対四か七対三なんスけど、今回経費の殆どソードさんたちに持ってもらっちゃったんで、八対二で!」

 ということで、また金貨が増えた。

 でも、これらは酒造りチームの汗と涙の結晶なので、帳簿に付けて以降の資金繰りに使う。

 良い酒というのは、確かに環境も大事だけど、根本にあるのは良い素材!

 それらをそろえるため、あと、資金を提供してくれたソードに換金だね。

「俺はこれから仕入れながらイースに向かいますけど、ソードさんたちどーするんスか?」

 ソードと顔を見合わせた。

「ま、ダンジョン踏破だな」

「そこそこ楽しめるらしいからな」

 ベン君が驚いてる。

「えぇっ⁈ 王都のダンジョンですよね⁈ まだ誰も踏破してないアレ、ッスよね⁉」

 うなずいた。

「食料は、一年分くらい積んだ。水その他は念のために積んだが、そもそも私は水を生成出来るからな」

「え……水魔術の水は、飲めなくないッスか?」

「純度百パーセントの水だからな。石と炭を入れておけば、そのうち飲めるようになるぞ」

 ソードが首を振った。

「確かに、『俺たちが使う魔術』の水は飲めない。けど、コイツの魔術のは、飲めるんだ。旅で水が尽きて近くに川も無かったとき、コイツが造り出した水を飲んでいた」

「そもそも、なぜ雨が降るかって、理解しているか?」

 と、メカニズムを話そうとしたら

「いや、大丈夫ッス。インドラ様は神様と同じ事が出来るってわかってれば、充分ッス」

 って遮られた。

 うん、全然わかってないよね?

 神様じゃないよ? メカニズムだからね?


「スパイスと、穀物をよろしくな?」

「分かったッス! インドラ様がほしがってる穀物、目星がついたッス!」

 おぉ!

 マジか!

 米がほしくて穀物でこんな感じのがあったら探しておいて、他にも変わったのがあったら買い取るから、とリクエストしてたんだけど、その第一希望の米の当たりがついたらしい。

 それは楽しみだ!


 ベン君たちと別れの挨拶を交わし、私たちは冒険者ギルドへ。

 いくつかの保留案件を片す予定。

「緊急性はないが、コレは俺じゃなけりゃ無理かな。後のはBランクでもいけるだろ」

 って選んだのは…………


  ワイバーン!


  ワイバーーーーン!


「おぉ! お前もようやく冒険が何たるかがわかってきたか!」

 って叫んだら、ソードに笑われた。

 ギルドマスターが目をパチクリさせてる。

「ハイハイ。面白そうだろ?」

「もちろん! ワイバーンは、定番の魔物だからな! 肉質は、うまいという説とまずいという説があるが、どちらなのだ?」

「うまいよ。皮も丈夫だけど……ま、お前の皮膚の方が頑丈だろ」

 って、私の肌が鉱石で出来てるみたいな言い方された。

「こんな、玉のお肌に何を言うのだ?」

「超絶固い玉石のお肌だから、傷一つつかないんだろうな」

 って切り返された。


「この案件が終わったら、ダンジョンに潜る。無期限で登録しておいてくれ」

 ギルドマスターが目をむいた。

「もしや…………」

「あぁ。コイツと一緒なら踏破出来るだろ。前以て言っとくけどな、途中の遭難者は助けないぜ? 遭難者救助で入るんじゃない、踏破で潜るんだからな」

「わかってます。アナウンスしますのでお任せ下さい!」

 ギルドマスター、凄まじく乗り気。

「ん? 乗り気だな? やはり、冒険者にとっては、ダンジョン踏破はなかなかワクワク感があるイベントなのか?」

 と聞いたら、ソードとギルドマスターが私を見た後顔を見合わせて、笑った。

「……なかなかの肝っ玉。さすが【迅雷白牙】のパートナー、気に入った」

 え、なんでだ?

「そうか……? 私はそこまでダンジョンに関しては盛り上がらないのだけどな。魔王城くらいになると盛り上がるのかもしれないが……」

 ギルドマスター、今度は唖然とした。

 ソードが私の頭をグリグリなでる。

「コイツ曰く、ダンジョンとは、ダンジョンコア様の作ったアトラクション、なんだそうだぜ? まぁ、否定する要素がないからその話に乗って、王都のダンジョンを楽しむさ。魔王城も、魔王に頼んで殺さずでいくから遊ばせてくれ、って頼みゃ、遊ばせてくれるかも、ってな」

 ギルドマスターが口を開けて呆けた後、大笑いした。

「……それは、すごいな! 私もなんだかワクワクしてきた!」

「だろう? 冒険者とは、未知を冒険してワクワクする職業だと思うんだけどな。ソードは冒険者のくせに小市民的に考えすぎて、面白がらないから困るんだ。……ぎゃー!」

 両拳で挟むようにグリグリされてるー!

「小市民で悪かったな。それでも英雄なんだよ!」

「自分で英雄とか言っちゃってる、プププ。……ぎゃー!」

 グリグリグリ。

 ギルドマスター、大笑い。

 笑ってないでソードを止めてくれ!

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