第69話 仮免運転中
町の人々が手を振ってるぞ?
しかも上の方?
「おい、これを押すとな、カメラが作動する。サイドとバックは常時これで確認出来るが、広範囲や頭上はこれだ。どの方向からも見えるようになる」
下部にあるモニターと、タッチパネルを示した。
「へー……。……っと! ソードさん! なんで押すんスか⁉」
ソードが押しちゃったよ。
「作動させるくらい、いいだろ別に」
いじりたかったんだ、きっとそうだ、絶対そうだ。
思わずニヨッとしてしまったら、ほっぺ横に引っ張られた。
「いひゃい!」
「いじったっていいだろ!」
何も言ってないよ!
――と、触手型全方位可動カメラがニョーッと上に伸び、上部を映し出して、手を振ってる原因が判明。
「リョーク!」
が、上に乗ってたよ!
「ありゃ~、もうバレちゃいましたか~」
テヘペロしてるし!
なんって、かわいいんだ!
お前、かわいすぎるぞ!
これは屋敷のリョークか!
くそうくそう、なんで私がお供にしてる子はこういったことが言えないんだー!
「ハァ、あのゴーレムもスゴいッスよねー。でも、俺はこれを借りるだけで満足ッス! もうちょっと飛ばしますよー!」
アクセル踏み込んだらしい。
ぎゅーん、と速くなった。
ソード、気のない素振りしてるけど、ソワソワしてる。
たぶん運転したいんだね。
端から見てると楽しそう……つーか端から見なくてもベン君は楽しんでるもんな。
車の運転が好きなタイプらしいぞ。
平原まで出た。
ここで、通常モードの説明。
バックも出来るので、リョークに手伝ってもらって、縦列駐車の練習。
ほか、クランク、S字カーブ、もやってもらう。
「ベン君、なかなか運転がうまいじゃないか!」
「いやー、それほどでも、あるッスかね~?」
謙遜しないベン君。
さすがソードの知人だけあるね、ちょっと変人。
「よし、じゃ、リョークもいるので、迎撃モードを試そうか。説明すると、盗賊やモンスターに襲われた場合、リミッターが解除され、速度制限解除、魔術砲使用許可、他、防護のためにこのフロントガラスにシャッターが降りて、外の映像をカメラで映し出すようになる。追われてる場合は速度を速めれば逃げ切れるだろうが、応戦するなら一人だと厳しいかもな」
オートで照準は合うし、スイッチポンで銃撃するけど、大勢からだと一人で全部やるのはキツいかもね。
「昔の冒険者仲間がいつも護衛してくれてるんスよー」
へぇ。
冒険者だったのか。
「そうか。でも、あんまり多いと乗れないぞ? 体格にもよるが成人男性だと六人がマックスだろう。運転席一人、助手席一人に後部座席二人の四人が最適人数だ」
「や、贅沢仕様だなー。六人くらいでも全然イケますって!」
まぁ、運転席は影響ないけどね。
でも、輸送中何日間もずっと乗ってるって思ったからゆったりと作ったんだけどなー。
「あ、そうだ。迎撃モードになったら運転に注意しろ! 馬車は知らないけどな、こういう乗り物は、急停車すると、中の人間が壁に激突してクラッシュするんだ! 死人を出したくなかったら、急停車はするなよ! 乗ってる人間には何かにしっかりつかまるように指示をしろ!」
「おぃーッス」
……大丈夫かな、ナメてないといいけど。
下手するとホントに死人出るよ?
リョークに命令して攻撃してもらう。
ベン君、ノリノリで運転してます。楽しそう。
ソードが横でソワソワしすぎてるんですけど。ウザい。
「ソード、ついでだから銃撃の試運転もだ。
やりたそうだからやってみろ」
「リョークにか⁉」
うなずいた。
「この出力でリョークがどうにかなるものか。そういう風に作ってある」
リョークもノリノリで攻撃してる。
が、リョークの攻撃もこちらにダメージは無い。
そういう風に作った。
目の部分はカメラアイ&ライトだが、ハッチをずらせばガトリング銃が出る仕様。
よっぽどガタイの良いやつじゃなければつっかえないだろう。
ソードが立ち上がり、
「おっ! 結構良い眺めだな。……おーい!」
リョークに挨拶してるし。
しかも、挨拶したら迎撃されてるし。
「おわっ! テメ、やりやがったな!」
リョークに連射、だけど急転換して回避するリョーク。
「ソードさん、ノリノリッスね」
「間違いなく運転したいと思ってるぞ。
お前のこと羨ましがってるぞ」
ってヒソヒソ話してたら蹴られた。
理不尽な!
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