第66話 レストランを作ろう
次はレストラン。
酒? 酒はとっくに大量に仕込んだよ。
それはさておき、レストランの場所は、イースでも一番の繁華街、その最奥。
私が思う高級レストランをイメージして建て替えた。
普通の土壁魔術の家じゃつまらないので、レンガ張り風!
柱はイオニア式オーダー。
窓はアーチ窓で、床は私がとってもとっても苦労して染色した石を敷き詰めたぞ!
テーブルも、脚の部分は鉄で、私が自ら装飾した逸品だ。
椅子は普通のだけど。
光魔法で間接照明もバッチリ。
トイレも最先端の水洗だ!
観葉植物(という概念が無かっただろうが作った)も配置し、なかなかに良い感じに仕上がった、と思う。
「おーい、ここ、王族が来てもおかしくない出来になってるぞー? 少しは自重しろよなー?」
途中でソードが来てグリグリやられた。
「えぇ? そこまでじゃないだろ。貴族の部屋は、派手なのはもっと派手だぞ? あの、金ピカ教会だってもっと派手だったじゃないか。テーブルや棚がちょっと装飾されてるくらいじゃ、まだまだだ」
ソードがハァ、とため息をついた。
「そんなんじゃねーんだよ。なんつーか、この世界にない技を使ってる、っつー意味だよ」
あ。
……なんとなく理解した。
あの、ご飯食べるときに長ーいテーブルで食べる無駄さはないけれど、観葉植物はなかった、間接照明も無かった。
大量の蝋燭に火を灯してた。蝋燭臭かった。
「……それはそうだが、でも、これくらいの装飾だと貴族には不満だろうな」
メイドや使用人たちがうなずいた。
「絵画がほしいところですね」
「本格的にするのならば、演奏者のスペースも必要です」
「いらん、そこそこで構わない。コンセプトは『貴族の家庭のおもてなし、風』だ。上流貴族の社交場をイメージしてはいない。だが、ま、絵は気に入ったのが見つかったら飾ろう。演奏がほしいというニーズもあるかもしれんから、スペースのみ設けることも考慮に入れておく。後は任せる」
私、別世界の知識はあるけれど、貴族の知識はそんなにないんだよね。
レストランの細かな内装は働くスタッフにお任せした。
スタッフ募集! なので、メイドや使用人や料理人が知人に声をかけてくれるそうだ。
「レストランの名前はいかが致しましょう?」
と聞かれて
「傲慢なオーナーにより気に入らない客はたたき出されるレストラン」
と答えたら、みんながフリーズした。
ソードは額を手で打ってるし。
「……本気か?」
「半分くらいな。名前に拘りが無いから、自分たちの名前をつける以外の選択肢があるなら勝手につけろ。ただ、先程言ったことは恐らく行うので、客に説明するより名前にした方がわかりやすいだろう?」
「……お前、本気で客呼ぶ気がないだろ?」
ってソードに言われたので肩をすくめた。
「まぁ、一見さんお断りだからな。二~三日に一組来るくらいでも問題ない。いわば、道楽の一環だ。元々私は冒険者だからな」
――メイドたちに給料を金貨で払おうとしたら怒られた。
そんなにもらうほど働いてない、と。
そうなると、ポケットマネーで十年以上給料が支払えてしまう。
途端に会社が道楽の様相を表してきた。
私、冒険者だもん。
こないだのアンデッドのダンジョンでもらったアクセサリーも高値で売れたし、でも、料理人たち、使用人たちはレストランとか酒造とかやってみたいんだから、失敗したっていいじゃないって感じでやってみればいいじゃない? 的なノリだ。
料理人やメイドや使用人は理不尽な貴族にも対応できるだろうが、私が出来ない。
よって、理不尽なこと言われたらたたき出す、の前に来んな。
――そうそう、ソードから教わったが、基本、平民は銅貨、貴族は金貨、ちょっと稼いでいる冒険者は銀貨だそうだ。
銅貨、銀貨、金貨で価値が違うため互換性はない(例えば下級回復薬は銀貨五枚、銅貨では買えない)けど、両替は変動レートであるそうだ。
大体が
銅貨五百枚 ⇒ 銀貨
銀貨百枚 ⇒ 金貨
金貨二百~千枚 ⇒ 白金貨
こんな感じ。
白金貨の振り幅がでかいのは、高額故に相場が揺れるそうで。
発掘された古代の貨幣が使われているそうで、絶対に複製できないほどの精密なデザインと稀少金属を使っているので、綺麗な白金貨だとそれこそ千枚いくし、綺麗じゃないのは値段が安いそうだ。
ソードはいっぱいもってるぽいよ?
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