第9話 そして時が経ったよ

 一度のお茶会で懲りたプリムローズがお茶会を拒否るようになったのと、広めた醜聞がものすごくうまいこといったらしく、もう二度とお茶会には出席させない、夜会も決して出さないと決まった。

 やったね! これで稽古に集中出来る。


 そういやこの世界、日付や時間は魔導具! 魔導具で! わかるんだそうだ!

 魔導具かぁ……。ほしいなぁ。

 たいていの人(貴族はおろか使用人までも)が持っているソレを私は持っていない。理由は推して知るべし。

 しかたないので日付は自分で書き留めている。久しぶりに数えてみると、大体別世界でいう二年ほどたっていた。


 その、二年の間毎日欠かさず行っていた魔術の訓練ですが。

 ふんわりしたものは意識しなくても常時集まってくるようになってきた。意識すると、ちょっと遠いところからでも吸引力の違う掃除機のように吸い寄せられる。

 ……身体能力が異常なまでにアップしたのは、このふんわりさんのせいじゃないかと思う。――ふんわりさんがなくなったら私、やっていけるのだろうか?――ってちょっと怖くなったのでさらに筋トレの練習メニューを増やす。

 ……なんかもう、木剣で枝がスパッと切れるようになってきたんだけど……。下手すると手刀で枝が切れそう。少年マンガみたいになってきたな。そのうち木剣で岩とか切れるようになるんだろうか。


 そしてですね! 独学で試行錯誤ながら、魔術らしきものが使えるようになったよ!

 ふんわりさんはやはり魔術の素だった!

 このふんわりさんに水のイメージを伝えると、水になる。いや、簡単そうだけど、相当大変だったけどね?

 火とかお湯とか氷とかもなんとか出来た。これはエネルギーをふんわりさんに伝えることで解決。

 ――ひとつ出来るといろいろ出来るようになる。

 結果でいうとせっけんが出来た。すっごくすっごく大変だったけど、出来た。

 しかし……これは正しい魔術の使い方なのか?

 というか、私が使っているのは魔術なのか?

 いつかこの場所を出て行って、魔術が使える人に出会ったら、教えを乞いたい。魔導具も以下同文。


 物理攻撃に関しては……どうなんだろう?

 闘ったこともなければ闘いを見たこともないので、自分がどうなのかわからない。別世界基準では人間離れしすぎててマンガや小説レベルになってるのだけど、この世界基準だとまだまだ最弱なのかもしれないし……少なくとも愛人の娘よりは強い気がするんだけど、よくわからない。

 今はそれこそマンガみたいな鍛え方をしてる。自作の罠を使って攻撃を避けたり、目隠しして山の麓からてっぺんまで登ったり降りたりしたり、それも簡単になってきたので岩を背負ってそれをやってみたり。

 実際闘ってみたいけど、相手がいないんだよな……。ここって貴族の屋敷の裏だしたぶんうちの敷地だろうからな、何かが現れるわけないか。


 ――って、それが別世界でいう〝フラグ〟だと気がついたのは、稽古を終えて一息ついたところに、人が現れたときだった。

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