第8話『頼子はそんな美住を許さない』
今日は美住が学校を休んだ。
美住はズル休みした事なんて一度もなかったし、体調管理も完璧だから
休むという行為自体が異質中の異質だ。
結論、黒峰関係で何かあったと考える方が妥当
あたしは美住を無理やりにいつものコーヒーショップに連れ出す。
トークアプリじゃあ要領を得なかったからな
死にそうで泣きそうな顔をしている。
「どうした?」
「別に」
よく見たら目の下が腫れている
ずいぶん泣いた証拠だ。
「なんかあったんだろ」
「・・・」
言葉より先に美住の目から涙がポロポロ漏れ出す。
「私、黒峰君の役に立ちたいって思ってたのに、全然考えれてなかった」
美住の話
黒峰が舞浜に気があることに気づいてしまったらしい。
「・・・私なんてむしろ邪魔なストーカーでしかなかったし」
(・・・そこは半分ぐらい同意だが・・・)
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(ちっ・・・気づいちゃったか)
頼子は考える。
しまったな・・・
その可能性を考えていなかった。いや、軽視していたというべきか
舞浜には白馬がいるし、絶対叶わない横恋慕だぞあれ、
黒峰のそれはアイドルを好きになるヲタク程度のそれだろうに
美住が告白すれば確実に成功する自信はある。
普段は何考えてるかわからない無表情人間だが、
コーヒーショップの美住は可愛い、絶対、舞浜よりも可愛い、さらに美人と可愛いが合わさって最強にすら見える。
最高かよって言葉が何度洩れそうになったかわからないほどだ。
むしろ・・・
黒峰程度の男に美住はもったいない。
これはチャンスだ。
黒峰の事なんて忘れてもらおう。
そう・・・
理性では考えていた。
だが、感情は、ひどく苛立っていた。
目の前に涙を流して弱っている美住が居る・・・
その事実に心は燃えるように怒っていた。
許せない、許さない。
あたしの中の美住はいつだって凛としてカッコいいヒーローだ。
こんな美住をあたしは認めない。
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「おい、何弱気なこと言ってんだよ・・・」
突然の怒気を含んだ声色に美住は狼狽する。
「そんな事はなぁ・・・あきらめる理由のひとつにすら、なりゃしねーんだよ!」
「え、でも普通は」
「相手に好きな奴が居るなんて些細な事に心乱されてるんじゃねーよ、馬鹿かお前は」
「お前の想いはそんな脆弱なのか?そんなちっぽけなのか?・・・違うだろ!!」
「頼子ちゃん・・・」
その熱意に美住の目に光が灯る。
「・・・そう・・・そうだよね、ありがとう、なんだかまだまだ頑張れそうな気がする」
「おう、良かったな」
・・・
(何やってんだあたしは)
気づけば・・・
美住の恋の後押しをしてしまっていた。
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