第3話 ドリルさんって、なんで村長にあんな感じ?
役場の会議室にムギ、ラルフ、ペット、おやっさんなどの村人達が、今後の村の方向性の説明のため集まってる。ラルフがドリルからの話を共有する。
「というわけで、林にはみなさん近付かないようにしてください」
村人達がうなずく。
「では本題! 村も潤い、帝国に税金を払い、福祉も充実。それでも、みなさんのお手元にお金が残るようになりました!」
村人達の拍手が起きる。ラルフが続ける。
「商売も上々で、もっと大きくしたいと思っている方々もいらっしゃるでしょう。そこで村の人からお金を集めて、希望の商店がそのお金の交付を受けることができるというシステムを考えました。実際この前の応募では、興味を持たれる方がたくさん。しかし、投資に危険は付き物。しかも村の人達の大切なお金」
村人達が頷く。
「そこで、この問題をムギ君が解決しました!」
村人達がムギを見る。一気に視線が集まる。ムギが焦る。
「いや、あの、僕はアイデアで、村長がいろいろ調整してくれて、良くなったっていうか。いや、村長の話を聞いてから!村長とりあえず続きを」
「私からでいいかい? ムギ君から説明した方が」
「いやいや、緊張しちゃうんで、村長から」
ちょっと、ラルフが残念そうにするが、ラルフが説明する。
「では、勿体つけるのもアレなので、私から。まず、交付を希望される方は、まとまったお金を役場に預けてもらいます。残念ながら事業が上手く行かなかった場合は、ここから負債を補填させていただきます。これなら、みなさんの大切なお金が極端に焦げ付くことはありません! もちろん双方のために審査は厳密に行います」
おやっさんから声があがる。
「それなら危険は少ないかもしれないが、儲かってる奴だけが、出資してもらえるようになっちまわないか?」
ラルフが頷く。
「そうなんです。それでは村の中で格差が生まれてしまいかねない。そこで、事業が上手くいった場合がミソです。出資を受けた商店は儲かったお金を、投資した方だけでなく、村に還元してもらいます。そして、生活の苦しい方に再分配します。これで格差が生まれないよう調整。オミソ村から悲しい想いをする人は出しません。それこそが村の繁栄! それだけでなく助成金などにも回すことで、村全体が潤い、次に出資が受けられる方も出てくるでしょう!!」
村人達から歓声が上がる。
「もちろん、この還元額や再分配の額などは厳密に計算します。先程、ムギ君は謙遜してましたが、ほとんどムギ君が考えました!」
また村人達が一斉にムギを見る。村人が言う。
「ムギ、お前そんなに賢かったか?」
「偉いぞ!ムギ!」
あんまり、みんなが褒めるので、ムギは恐縮してしまう。なぜか隣で浮いているペットも誇らしげなのも気恥ずかしい。でも本当にラルフのおかげだとムギは思う。会話をしてるうちにラルフが引き出してくれたようなものなのだ。
ムギがデメキン様クッキーと在庫の集計をしていて、ペットがそれを手伝っている。箱に入っているデメキン様クッキーをムギが数えて、ペットが一覧に記入する。ペットが真っ赤な着色がされているクッキーを見て言う。
「ていうか、これ何だ」
「デメキン様クッキー。おやっさんの新作」
「ふーん」
それとなく、ムギが聞く。
「ドリルさんってなんで、村長にあんな感じなの?」
ペットが語り始める。
「ああ。当時ドリルが軍の上層部にたてついてな、ドリルの意見が、まっとうだったんだが、明らかに圧力っていうか、迫害っていうか、そんな目に合ったのを、ラルフが掛け合ったんだよ。当たり前のことをしただけなんなけど、王族でちゃんとそういう仕事する奴珍しいからな」
「へー。村長、昔からそんなんなんだね」
ムギが嬉しくなり、顔がほころぶ。
「ムギもドリルみたいになんのか?」
そんなムギの顔をペットが覗き込む。
「え? ドリルさんみたいに? ならないよ」
「だって、今キモイ顔してたぞ」
「え。ひどくない? ならない、ならない。村長、たまにヒドイし」
ムギの顔を見て少し安心したペットが真面目な顔をする。
「そうしてやってくれな」
ムギがペットの反応を不思議に思う。ドリルに慕ってもらうのは、いいことではないのだろうか。
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