取り扱い注意な少女現る

第1話 取り扱い注意な少女

 ゴマ村に襲われて以降、観光客が減ってしまうかと心配されたが、オミソ村の対応がよかったこともあって、それほどに客足を落とすことはなかった。しかし、オミソ村の自警団の強化は必須の課題だ。


<゜)))彡 <゜)))彡 <゜)))彡


 村長室で、ラルフがムギに相談を持ちかけている。

「能力者をスカウトしに行って欲しいんだ。だって、せっかく観光地化したのに治安が悪かったら、お客様が減ってしまうでしょ?」

「まあ、そうですね。この前のゴマ村のようなことがあっても怖いですし」

「能力者の数が、村の防衛に直結してしまうからね。是非とも我が村に能力者を招きたい。そして、この仕事をムギ君にお願いしたい」

 

 ラルフが真面目な目線をムギに向ける。

「でも人形売りの仕事が。おやっさん一人じゃ回せないし」

「それは私に任せたまえ」

「え。またやるんですか」

「私の売り上げは、ムギ君の3倍だよ」

「はい。何も言えません」

 

 村長室をノックする音がする。部屋に入ってきたのは、ゴマ村の自警団の少女だ。思わずムギが後ずさる。

「ゴマ村と友好を結んだんじゃ! また強奪に?」

「違う、違う。彼女はもう仲間さ。ライラ君って言うんだ。ムギ君と同い年だよ」

 

 ムギがあまりのことに驚愕する。

「え!」

「いやね、ゴマ村の村長が友好の証にと、優秀なライラ君を我が村に派遣してくれたんだよ! スカウトはライラ君と行っておくれ」

「『おくれ』って! この人、僕に相当な殺意を」

「だって、一人じゃ危ないでしょ。人さらいにでも合ったら、ご両親に面目が立たないからね。さあ、握手して」

 

 ラルフがムギとライラを無理やり握手させる。

「よろしく」

 そう言い、ライラがムギの手をきつく握り、ギラリとムギを睨む。

「痛い、痛い。すっごいお約束やめて」

 ムギが恐怖と痛みで、思わずライラから手を離す。そして、すがるような目でラルフを見る。そんなムギを見てラルフが言う。

「大丈夫! ペットにも付いていってもらうから。結構な能力者なんだよ」

 

 どこから、ともなくペットが飛んでくる。

「ムギ! 俺もついてくぜ。よろしくな」

「それは大丈夫に入るんですか?」

 ペットが腰に手をあて、自慢げに胸を付き出す。

「それは大丈夫だろう」


 いや、これは大丈夫なんだろうか、ちゃんと断った方がいいやつで、流されたら絶対にいけないタイプのやつじゃないかと、ぐるぐる思案しているうちに、ラルフがムギの背中を押す。

「ほらっ! 仲良く行った、行った!」

 ムギの思案むなしく、見事に流され、そのままムギは村長室を出ていった。

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