転生する前に何か忘れちゃいませんか

きゅうご

第一話 トラックに轢かれる

 俺は宙を舞っている。

 文字通り舞っている。

 暴走トラック(一瞬ではあったが運転手は年配の男だったのを見た)にふっ飛ばされぐるりくるりと宙を舞い、そしてグシャッと着地した。ものすごく痛くて目の前が真っ赤で腹が痛い目の前は真っ赤だし腹の中が痛くて咳き込むと鉄の…血の味のなんかを吐き出した。耳はキーンとかカーンみたいな感じで聞こえない。体は動かなかった。赤かった視界が徐々に…暗くなる。

 俺死ぬのか。

 それなら…最近流行りの…ファンタジーな世界に転生して…可愛い女の子ヒロインと痴話喧嘩してえなあ…。


と、小鳥遊賢治の意識はそこで途絶えた。

 彼を慈しんでくれた父母への思いも友人達への思いも浮かぶことなく、そのまま彼は死んだ。

 これはそんな彼のトラックに轢かれたその後の物語である。

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