奴らはそれを恋と呼ぶ
葵葉
第1話 奴らはそれを恋と呼ぶ
俺、桐谷
大学卒業後、単身海外に2年間の旅に出た。その後、英語教諭として母校の珠之江高校で教鞭を取り9年間過ごした。
10年目となる今年からは転任が決まり新しい学校、
この学校では初年度からクラスを持つこととなっていて、2年生の担任になった。
引越しの後片付けや新しい職場のための勉強や引き継ぎ、周辺地理の確認と3月いっぱいは時間が足りないほど忙しかった。
担任として自分のクラスを持つのはこれで4回目であり、初めての学校という以外は慣れたものだ。そこは社会人10年目の意地というか。
「桐谷先生、まだ赴任して短いですから分からないことがあれば遠慮なく聞いてください。桐谷先生が受け持つことになったクラスの中にはよく思わない生徒もいるかと思われます。前任の先生は寿退職しましたが、あの人は生徒から随分と慕われていましたからね。まあでも、いい生徒ばかりですからあまり心配しなくても大丈夫とは思います。」
2年の学年主任の
斎藤先生はこの学校に10年以上務めており、赴任したての桐谷に学校の説明や案内をしてくれた人である。
「ありがとうございます。自分も直ぐに受け入れてもらえるとは思っていないので、まずは今日1日頑張ってみます。これでも、自分のクラスを持つのは8年目になりますから!」
朝8時40分、校内に響くチャイムと同時に桐谷は自分の受け持つこととなる2年3組のドアを開けた。
桐谷が教室に入るとザワザワしていた生徒は次第に静かになり、教壇に立つ桐谷に注目した。
「おはようございます。昨日の始業式で軽く挨拶したので覚えていない人もいると思うので改めて自己紹介をしたいと思います。」
黒板に白いチョークを走らせながら自己紹介を続けた。
「桐谷 徹、今年34歳の教師歴10年です。大学卒業後、2年ほど海外に行っていました。教科は英語を担当します。趣味は特にこれといってないですが、一人暮らしが長いので家事全般は出来ます。
聞きたいこととかはありますか?特にないようでしたらホームルームの続きを始めます。」
その後、出席確認やこの日の予定、プリント配布を済ませ何とか10分に収めることが出来た。
このクラスはいい生徒ばかりで特に問題なく朝のホームルームを終えることが出来た。
新しい先生を警戒なり、見定めているだけかもしれないが。
この日、桐谷が受け持つ授業は2時間目からなのでそれまでの時間は授業準備などをする。
職員室に向かうために廊下を歩いている時、気にかかることがふと頭をよぎった。
出席番号8番、神田
そういう子が他にいない訳では無い。
だが、何かが引っかかる。引っかかるというか気になるというか。独特な雰囲気の持ち主だとその時は感じた。
初めて持つクラスで誰かに意識が向くことはこれまで何度かあった。真面目そうな子、ムードメーカーな子、悪巧みをしようとしてる子など。
でも今回はそのどれにも当てはまらなかった。
「まだまだ経験不足、だなぁ……。」
違和感とも言えるそれを振り払い、職員室の戸を開けた。
「よし!今日から頑張るぞー!」
今日から心機一転、新しい生活が始まった。
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