5.

 僕が十三歳の時、祖父は右足をゴキブリに喰われ、ひざから下を失った。

 町の小さな病院で手術を受け、安い中古の義足を買って、失った膝に装着した。

 この町には、判断ミスや油断から体の一部をゴキブリに喰われて失った猟師が何人も居た。彼らのほとんどは、傷口がふさがると再び猟に復帰した。

 だから、いずれ祖父も仕事に復帰するものとばかり思っていた。

 義足を装着し再び二本足で歩けるようになっても、祖父は家にこもりっきりで猟に出ようとしなかった。

 唯一の収入源であるゴキブリ猟に出なければ、ぐに生活に困る事くらい、当時十三歳の僕にも分かっていた。

 義足のローン返済もあった。

 一ヶ月後、僕は一人でゴキブリ猟に出た。

 それまでも、祖父が猟をするとき僕も一緒に〈大糞穴おおくそあな〉の中へ降りていた。

 その事自体……十代の少年が、年長の家族と一緒に危険なゴキブリの巣へ降りる事自体は、この町では当たり前だった。

 この町で生まれた子供は皆、十代後半には立派な猟師となって家計を助けなければいけなかった。

 危険な猟師の仕事をせず学校に通う事を許されているのは、ごく一部のお金持ちの子供くらいのものだ。

 もちろん、縦穴に降りるといっても、最初は、安全な場所から祖父のバックアップをするのが仕事だった。

 祖父が怪我さえしなければ……そして、生きる意欲を失って廃人のようにならなければ……僕は、一年一年成長し猟師の技術を会得するたびに徐々に危険な領域に近づいて、十代の終わりまでに一人前の猟師になるはずだった。それが、猟師の子としてこの町に生まれた者が受け入れるべき人生だった。

「他の奴らより、独り立ちの年齢が五年早まっただけだろ」

 防護服を着ながら、十三歳の僕は自分自身に言い聞かせた。

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