現実.13

ワゴンの中に布団を敷き志織が入る。

時間つぶし用の漫画に小説。懐中電灯。適度な食料も。


俺はワゴン車の上にあがり民家にあった小説を開く。暗くなったら小説を書くつもりだ。


ゾンビは三体だけ増えていた。やはりこの辺りにはゾンビは少ない。

車の中を覗く。志織は漫画を読んでいた。


最初の頃、志織はゾンビの唸り声をイヤがったから、ゾンビに口ぐるわや、頭からビニール袋とかをかぶせていたのだが、慣れてしまったのか今では何も言わない。

逆に静か過ぎる方が落ち着かないと言っていた。


太陽が沈み、オーロラが現れ始める。

電気がないせいで夜空だけは別世界。だが三年も見続ければ当たり前になる。それでも綺麗だ。


七色に動き続ける夜空。眠らない身体。白く冷たい肌。唸り声をあげるゾンビ。ゾンビの歩き回る足音。真っ暗な周り。

異常な世界だが今はそれが正常な世界。


全て慣れてしまった。これが俺と志織にとっての普通で当たり前の世界だ。


俺は携帯を開いた。

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