根回しの果てに


 その頃、セレスティアは長谷川元帥の七回忌に出席するための許可を、ハウスキーパー事務局に求めていました。

「サリー様、セレスティア様がこのような許可を求めてきていますが、別に寵妃候補でもありませし、寵妃の方はご自由ですのに」


 ハウスキーパーのサリーは、先ごろセレスティアからこのような許可を求める話を聞いていました。

 その真意も目的もはっきりと聞いていたし、テラの後始末のためには『止む終えない』と考えたのです。


 サリーは、セレスティアの北米での活躍を認めていたのです。

 そして急遽、このセレスティアの計画を、テラの管理を担当するエールと、マルス文化圏の女たちの最高責任者、ナイトマネージャーのエカテリーナ、さらにヴィーナス・ネットワークのナンバー2であるイシスも加わり、話し合って承認したのです。


 勿論ミコの承認をどうすれば得られるか、このあたりも詳細に検討され、方法論もおおむねセレスティアの計画が妥当と認められました。


「それにしても大した計画ね……アナーヒターの性格も良く読んでいる」

 イシスが感心したように言った。


「しかしイシス様、女としては多少落ち着かないのですが……未亡人でしょう、夜伽の方は激しいでしょうから……」

 エールが心配顔で云ったが、サリーがうすら笑いを浮かべながら、

「エールさん、お嬢様に秘め事でかなうものなど、この三千世界のどこを探してもいないでしょう」


「激しいのはお嬢様、私たちはお嬢様のベッドでは、最後は息も絶え絶えのはず、夜毎の順も厳密に決まっています」


「近頃は皆、夜毎をシェアしていますし、多少正式の順番が伸びても影響はありません、もうどうあがいても抱かれる女は増えていきます、減ることはあり得ません、諦めなさい」


「そうでしたね……」


 エカテリーナが、

「エール様、テラやマルスの女は、愛していただけると確信できれば、案外に待てるのです」

「私も未亡人ですからいえますが、その確信があれば、ミコ様との情事を思いながら、自らで身体を慰めても満足するものです」


「邪魔なのは倫理観ですが、これはミコ様が強固なだけで、対象となる女は、夫はいないのですから別になんの問題もない」


「いまマルスでは、ミコ様に対しては、婦女子を差し出すことを名誉と考える風潮が満ちています」

「未亡人がミコ様の相手をつとめる事に、貞淑を非難はされません」


「ねぇ、その風潮は貴女が広めているのでしょう?」

 とサリーが聞きますと、 

「そうです、マルスの女の地位向上に努力しています、なかなかエラムの方々のようにはいきません」


「私としては、テラの現状が足を引っ張っていると、考えているのです」

「今回のセレスティアさんの計画に、大賛成の理由ではありますね」


「よい心がけですが、エラムとは仲良くしてくださいよ」

 サリーが釘をさしています。


「サリー様、私はミコ様のお心は十分に理解しているつもりです」

「ミコ様はエラムを第一に考えておられます、これは仕方ないこと、でも私たちマルスの女にも、お心をと願っているのです」


「エカテリーナさん、まぁその話は、後日いたしましょうか、マルスとヴィーンゴールヴはいまや重要な惑星、このセレスティアさんの計画が上手くいけば、テラの四級市民地域はなくなります、直轄惑星への道も開けましょう」

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