ミコの女たちⅢ パープル・ウィドウ・コレクション 【ノーマル版】

マニトゥーリン島

　アメリカの東部地域の政府はそれなりに機能しているが、西部は本当の四級市民地域、かなりひどいことになっている。

　アメリカ東部第四帝国政府の、実質的な支配地域はアパラチア山脈の東、つまり独立当時の領域に近い状態である。

　それ以外はかなり無政府状態で、五大湖周辺も治安が良いとはいえない。

　アメリカ東部第四帝国政府は、この際、二級市民地域昇格を考慮してくれるなら、このアパラチア以西を提供するといってきたのである。

　さらに東部地域にいる女奴隷は、全てアパラチア以西に追放し、貴重な男奴隷は解放。

　アパラチア以西の男もひきとる、ただし女は受け入れない……こうすれば男女の比率は七・三程度になり、なんとか女性婚多妻制を併用すれば社会が維持できる……

　忍が「誰かの入れ知恵ですかね」と、聞こえるように呟くので、肩をすくめたセレスティアである。

　どうやらアメリカ東部も社会体制が崩壊寸前だったようだ。

　身勝手な話だが、ナーキッド幹部会は忍の説得で受け入れる事にした。

　当然、ナーキッドの絶対的な統治権を承認すること、そして二級市民地域昇格はミコ様の承認が条件として付いた。

　忍はアメリカ東部第四帝国政府に極秘の回答をした。

　受け入れる方向で考えるが、ミコ様への説得はどうなるか約束はできない。

　それでもアパラチア以西を提供されるなら、今一度努力をしてみると。

　アメリカ東部第四帝国政府は、提供するから努力していただきたいといってきた。

　アパラチア以西は、アメリカ東部が生き残る為に女を置き去りにし放棄する。

　ナーキッドがお守を引き受けなければ、この地の女たちは一割も生き残れない。

　中国大陸と対して変わらない、いやそれより悪い、もともと産科システムはこの地には提供されていない。

　とりあえずナーキッドは、アパラチア以西の州都に産科装置を設置した。

　同様の事は、カナダの三級市民国家でも起こった。

　こちらの提案も国土の集約、オンタリオ州以西の、オンタリオ、ケベック、ニューブランズウィック、ノバスコシア、プリンスエドワードアイランド、ニューファンドランド・ラブラドールの六州とし、後はアメリカ東部第四帝国政府と同じような提案で、勿論州都に産科装置を設置した。

「技芸学校の候補地は、将来的には北米の中心になりますね……といって、大陸の都市ではまずい……防衛もしなくてはならないし……」

「ねぇ忍さん、私としては五大湖の一つ、ヒューロン湖にある島なんてどうかと思うの、マニトゥーリン島というのだけれど……」

　マニトゥーリン島とは、ヒューロン湖に浮かぶ島で面積二七六六平方キロの島、橋がかかっている。

　すこし調べた忍は同意した。

「たしかにいい場所ですね、ヒューロン湖なら当方のＵＳー３も着水できる、多分防御バリアも張れそうですし、防御バリアが張れれば変な生物も持ち込まないでしょう」

「島内には有意義な建物も目白押し、寄宿舎にも事欠かないですね」

　そういうと忍は、その場で国際電話をかけた。

　相手はトロントにあるカナダ地域の三級市民地域の政府である。