今と昔のはなし、そして里守(今のはなし)

フレディオヤジ

第1話 ○○夫婦の子です


我が家の飼い犬、フレディがやって来て3ヶ月ほどたった頃の話。

フレディは今もそうだが、狭い我が家の庭に放し飼いになっている。

我が家の玄関口は近くの小学校へ行く通り道になっている。

そのせいで、フレディは犬好きな子供たちの人気者である。

ある日曜日の昼過ぎのことだ。

近所の犬好きの小学一年生二人がフレディと遊びたいので庭に入っていいかと言ってきた。

私は快く、子供たちを迎え入れた。

フレディも子供たちと楽しく遊んでいた。

その中に私も混(ま)ぜてもらい、フレディに「おすわり」とか「伏せ」「待て」などをさせて見せたりして悦(えつ)に入っていたものだ。

そのうちにこの子達の名前を聞くことになった。

「君の名前は」と聞くと。

一人は、「中村 俊一です。」などとお行儀良く答えてきた。

もう一人にも名前を尋ねた。

すると、思いがけない返事が返ってきた。

「・・・夫婦の子です」と本当にまじめな顔をして答えたのだ。

これは私に大いに受けた。

すると、その子は何が可笑しいのだろうという風な顔をするので、本当に可笑(おか)しかった。

「いやあ。面白いなあ。確かに・・・夫婦の子だよなあ。」

この話をわが娘に話したら、娘も腹を抱えて笑い転げた。

それからというもの、我が家では「・・・夫婦の子です」が少し流行った。

数日後、その子は私の顔を照れくさそうに見た。

少し意地の悪い私としては、その子に会う度に「・・・夫婦のお子さん」と言ったりしたものだ。

あれから五年経った。

久しぶりにその子に会った。

歳月はその子を成長させた。ずいぶんと大人になった。

もう、その子のことを「・・・夫婦の子」とからかう事が出来なくなっていた。



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