第540話 転職



「マスター! あ…………、テンルさん………」


「ヒスイ! テンルが来たよ! ヤッホー!」



 地下室の入り口前まで戻ると、見張りをしていた秘彗から声がかかる。


 間髪入れず天琉が反応し、能天気な挨拶をかますが…………



「………………」



 秘彗は何と返してよいのか分からないような表情。


 急に強くなってしまった天琉との距離の取り方を未だ計りかねている模様。



「どうしたの、ヒスイ。ちょっと元気ない」


「……………私はいつもと同じです」


「??? 変なヒスイ……………………、そっかぁ! テンルの方がちょっと背が高くなったから怒ってるんだぁ。あいあい! 秘彗の怒りんぼ!」


「ムッ………、そんなこと…………、関係ありません」



 一瞬声を荒立てかけたが、すぐに尻すぼみとなり最後は聞き取れないくらいの小さな声。

 いつもなら猛反撃しているのであろう秘彗は、眉をしかめただけで、それ以上の言葉を続けない。

 


「あ~い~? ヒスイ、やっぱり変」


「………………私、別に変なんかじゃ………」


「あい? 何か言った?」


「…………何も」



 お互い手を伸ばせば届きそうな距離で向かい合ってはいるが、どこがチグハグな交流を見せる2機。

 今までの姉弟みたいなやり取りは欠片も見当たらない。

 どこまで行っても噛み合わなさそうなやり取り。 


 

 仲が良かった2人が思春期を迎えてギグシャクする青春ドラマのほろ苦いエピソードみたいなワンシーンだ。

 まさか従属機械種同士でこんな場面を見られるとは思わなかった。

  


「ふう…………」


 

 そんな2機の様子を見ながら嘆息。

 

 自分が小学校の先生になったような気分だ。



「秘彗が強くなれば解決するのかねえ?」



 しかし、秘彗が強くなれば、天琉だって強くなる。


 永遠に差が縮まらないイタチごっこ。


 だからこの場合、必要なのは…………









「さて、廻斗隊員。今から『司書』のスキルを授けるぞ」


「キィ!」



 地下室へと入り、奥に鎮座する白式晶脳器を前に廻斗へと宣言。

 

 天琉、秘彗、毘燭、剣風、剣雷、胡狛が並ぶ中、廻斗はビシッとした敬礼を以って答える。



「このスキルを入れることによって、お前は白式晶脳器を扱えるようになるはずだ。打神鞭によればお前が一番使いこなせるらしいからな」


「キィキィ!」


「では、この翠石を投入する。『晶冠開封』」



 廻斗の頭を開いて晶冠を露わにさせる。

 

 そこへ5cm程の小さな碧色の翠石を指先で抓んで差し込むと、



 スゥ……



 晶石に溶け込むように消えていく。




「…………どうだ?」


「…………キィキィキィ!」


「そうか、成功か」


「キィ~!」



 空中でクルクル回りながら喜ぶ廻斗。



「あ~い~!」



 天琉も同じようにその場でクルクルと回転。


 おそらく事情も分かっておらず、単に廻斗の真似をしただけだろう。


 いつもならこの辺で秘彗から注意が飛んでくるのだが、今の様子ではその任を果たすのは荷が重そうだ。


 だから注意するのはマスターである俺の役目になる。



「コラ、天琉。騒ぐな。狭いんだから」


「あい! テンル、騒がない!」


「…………ったく。じゃあ、廻斗。早速だが白式晶脳器の操作を頼む。目的はストロングタイプへの職業の追加だ」


「キィ!」



 了解とばかりに敬礼をしてから、白式晶脳器の前の椅子に座………らず、少し腰を宙に浮かせた状態でキーボードを叩いていく。



 タン、タン、タン、タン、タン、タン…………



 流れるようなブラインドタッチ。

 素早いキー操作。

 まるで一流のプログラマーのよう。


 白式晶脳器のモニターが廻斗の操作によって目まぐるしく移り変わる。


 しばし、廻斗が叩くキーボード音だけが地下室内に響き渡り、



 タン、タン、タン、タン…………ターンッ!



 最後にエンターキーを叩きつけるような音を鳴らして、



「キィ~~(ドヤァァァ~)」



 誇らしげにこっちを向いてドヤ顔を見せる廻斗。

 妙に決まった仕草であり、子猿の外見もあってどこかコミカルチックなポーズ。


 一体誰の真似だよ、それ。



「ドヤ顔はいいから…………で、どうだったんだ?」


「キィ! キィキィキィ~~キィキィ、キィ」


「………ふむふむ。職業を追加したいストロングタイプを筐体の向こう側にある円の中に立たせる…………、ではまず秘彗から行ってみようか」


「ひょえっ! 私ですか?」



 ビックリした顔を素っ頓狂な声をあげる秘彗。



「ストロングタイプではお前が一番先任だからな。さあ、早くその円の中に入ってくれ」


「は、はい…………」



 緊張しながら筐体から少し離れた床に描かれた直径1m程の円の中へと移動する秘彗。



「キィキィキィ…………」


 

 タンタンターンとキーボードを叩いて作業を進めていく廻斗。


 そして、10分ほどの作業の後、



「キィ!」



 廻斗から完了との報告が上がり、



「どれどれ?」



 廻斗の後ろから白式晶脳器のモニターを覗き込むと、そこに映し出されていたのは、たった一つの職業。




 ストロングタイプの魔術士系で最もオーソドックスと言える『メイガス』。




「これは………………、秘彗にはこの『メイガス』が追加できると言うことか?」


「キィ!」



 廻斗からは短く『是』との言葉。



「ふーむ…………」



 腕組みしながら、出てきた『職業』を秘彗に追加するかについて頭を巡らせる。


 順当と言えば順当。

 当たり前すぎて面白味が無いほど。


 しかし、この『メイガス』を追加すれば秘彗の長所を伸ばせるのは間違いない。


 多彩なマテリアル機器による攻撃も、

 使用頻度の高い亜空間倉庫の容量も、


 ストロングタイプの枠を超えて、レジェンドタイプの位に届かないまでも、後数歩の位置くらいには近づくことができるだろう。

 魔術師系としては至極真っ当な進化と言える。

 

 ただし、弱点である機体の貧弱さはカバーできない。

 相変わらずポジションは後衛だし、護衛も無しに単独の任務に就かせることも難しい。


 

「むむむっ!」



 幾度も俺の頭を悩ませたストロングタイプ達の職業の組み合わせ。


 悩みに悩み抜いて未だ結論を出せず、結局、白式晶脳器を稼働させてからと先送りにしてしまっていたのだ。


 もし、ここで魔術師系以外の職業が並んでいたら、俺はその場で結論を出せなかったかもしれない。



 姿は幼い少女ながら、魔法を使いこなし、さらに剣も一流の魔法剣士。

 

 若しくは、多彩な術を行使しながら夜の街を飛び回る魔法盗賊。


 さらには、遠距離魔法と銃を扱う真の砲撃型、魔法射手。


 そして、攻撃魔法と防御・回復魔法を使い分ける賢者。



 実にロマン溢れる職業の組み合わせ。

 これに心をわくわくさせない男の子はいない。

 


 だけれども、今、選択肢として出たのは同じ魔術師系である『メイガス』一つだけ。


 ここまで来て保留は在り得ない。

 外連味はないけれど、確実に強くなれるのだ。

 しかも今までと運用は変わらないから連携もしやすい。


 ならばそれを選ばないわけにはいかないだろう。


 

 …………しかし、気になるのは、なぜモニターに現れた職業が『メイガス』だけであったかだな。

 

 何かしらの基準があるのであろうか?


 元々、経験値は足りていると思っていたから、職業が現れたのは不思議ではない。

 何せ素種である天琉が色々すっ飛ばしてランクアップしたほどなのだ。

 同じ戦場を潜り抜けた秘彗が足りていない訳が無い。


 だが、同じ魔術師系でも、召喚術師系の『デボアリスト』や付与術士系の『グランドエンチャンター』、精霊術師系の『エレメンタルマスター』ではなく、この魔導士系の『メイガス』だけが現れたのは何か理由があるのだろうか?

 

 さらに奇しくも、秘彗が晶石合成した職業でもある。


 果たして、これは偶然なのか……………


 もし、晶石合成した職業しか出てこないのであれば、毘燭達は………





「キィ?」


「んん? ああ…………スマン。そうだな………」



 廻斗から催促を受けて、思考の沼から脱却。



「俺的にはこれで行こうと思うんだが………」



 もう俺の中での意思は固まっている。

 あとは秘彗の意思を確認するだけ。



「秘彗。モニターに出てきたのは同じ魔術師系の『メイガス』だ。俺としては今、この場でお前にこの職業を追加してストロングタイプのダブルになってもらたいと思っている」


「……………………」


「どうだ?」


「マスターのご随意に…………」


「いや、お前はどうしたいかを聞きたいんだ? 強くなりたいか?」


「…………強くなりたいです」


 

 躊躇いがちではあるが良く聞こえる声でそう答えた。


 見れば、青く輝く瞳は不安に揺れがらも真っ直ぐにこちらに向けられている。



「もっともっと強くなって、マスターのお役に立ちたい!」


 

 地下室に秘彗の幼い声が響き渡る。

 

 秘彗からの本心から零れた言葉が俺の耳に何度も木霊する。



 

 床に描かれた円の中に立ち尽くす秘彗の姿は普段以上に小さく見える。

 

 ストロングタイプでは数少ない軽量級。

 珍しい魔術師系ではあれど、それだけで全ての敵を薙ぎ払えるほど強くは無い。


 さらに秘彗が俺のチームメンバーとなって以降、次々に新しい人員が増えてきた。


 やがて自分よりも強い機種が多くなり、最初は格下であった天琉もいつの間にか格上へとランクアップ。

 凄まじい勢いで戦力を強化していく俺のチームのスピードに、己の力量不足を感じていたのであろう。


 だからマスターである俺の『強くなりたいか?』の問いにはっきりと答えたのだ。



「その言や良し! 秘彗、約束しよう。お前を必ず強くしてやると」



 大きく声を張り上げ、秘彗に向かって言い放つ。


 そして、 後ろに立ち並ぶ毘燭達へと振り返り、1機ずつを見渡しながら宣言。



「これは秘彗だけではないぞ。強くなりたいと思うなら、マスターとしてお前達の強化に注力するつもりだ。覚えておけ」



 すると、視線を向けられた毘燭、剣風、剣雷、胡狛がさっと膝を突き、臣下の礼を取る。



「この非才の身をそこまで気にかけて頂き光栄ですな。この御恩は強くなることでお返し致しましょう」


 コク、

 コクコク


「マスターのお言葉、毛頭疑うことなど在り得ません。全身全霊を以ってご期待に応えてみせます」



 そして、少し遅れて天琉も皆と同じように膝と突き、



「あい! テンルももっともっと強くなって、ますたーの役に立つんだ!」



 顔を上げて目をキラキラさせながら大きな声で宣う。



「うむ、皆からの答え、確かに聞き入れた。これから皆の強化について一緒に取り組んでいくぞ!」



 皆の強化は俺が中央へ進んで行く為には必須。


 俺とて従属容量は無限ではないはず。


 ならば今いるメンバーを強化することが戦力を増加させるには一番早い。


 そして、ストロングタイプであれば、経験を積み、白式晶脳器で職業を追加すれば強化できる。


 進むべき道の方向さえ分かれば、あとは前に進むだけ………



「では、秘彗。お前に『メイガス』の職業を追加する。良いな?」


「はい! 同じ魔術師系としての能力を伸ばしていきたいです」



 もう秘彗に迷いはない。

 その目には新しい自分への興味しかない。



「よし! 廻斗、作業開始せよ」


「キィ!」



 タンッ!



 廻斗が勢い良くキーを叩くと、床に描かれた円の縁が輝き出し、内側にいる秘彗の姿が見えなくなる。

 七色に光るヴェールで覆い隠されたかのように。


 それは機械種の存在を塗り替える白式晶脳器による儀式。

 『司書』のスキルを入れた機械種を祭司とした転職の儀。


 その儀式に費やされる時間は僅か数分。


 たったそれだけの時間でストロングタイプは職業を1つ追加され、新たな力を手に入れる。




「秘彗…………」


「はい、マスター。確かに『メイガス』の力が私に宿りました」



 光が収まると、現れたのは古き良き魔女っ娘スタイルの幼い少女。


 藍色の三角帽子に炎の揺らめきをイメージした模様が入った藍色のローブ。

 

 いつもの秘彗の姿ではあるが、少しだけ違うとすれば、濃い紫色の髪に一房金色が混じったくらい。


 まるで黄金の髪飾りをつけているような映える金髪。

 ほんの一房でしかないが、異様なくらいに存在感を放つ輝きを見せる。



「機械種ミスティックウィッチと機械種メイガスのダブルとなりました」


「そうか…………、それでどのくらいパワーアップしたんだ?」


「以前と比べてマテリアル機器の出力は2倍以上です。あと空間制御、燃焼制御、重力制御、放電制御、錬成制御、収束制御が最上級。磁力制御と幻光制御が上級となりました。それから新たに虚数制御が生まれています」


「へえ? 虚数制御も」


「はい、下級ではありますが…………」



 確か割と物騒なスキルだったよな。

 身を削って敵にデバフや即死を与えるような。



「使い所には気をつけてくれ」


「ご安心を。スキルやマテリアル機器の効率的な運用は、魔王型よりも精通しているという自負があります。マスターにご心配されないような使い道を編み出して見せます!」



 今までの秘彗からは見れらなかった強い自信。

 姿形こそあまり変わらないが、中身は間違いなく成長している。

 


「ふむ……………、あと、制御系はランクアップで上がったんだな…………最上級スキルが随分と増えた」


「私の得意とするマテリアル制御系が伸びましたね」


「でも、戦闘系や知識系は上がらないのか。天琉と同じ………」


「…………そうですね。多分、制御系スキルの上昇は機体内のマテリアル機器の成長に引きづられたのだと思います」


「今回上がらなかった制御系スキルもあるな」



 秘彗の持つ多彩な制御系スキルの内、冷却制御と生成制御が上がらなかった様子。


 生成制御の翠石はこの白の遺跡で手に入れたが、残念ながら上級。


 最上級の制御系スキルなど滅多に見つかるモノではない。

 

 

「んん? 幻光制御が上級になったのか? ということは………」


「はい。これで隠身スキルの上級を追加しますと、光学迷彩が使用可能となります」


「ほう? 隠身スキル上級を購入すれば、光学迷彩が使用できるメンバーは5機となるのか。ステルス部隊を作ることができそうだな」



 元々、俺のチームで姿を消すことのできる光学迷彩を使えるのは、ヨシツネ、森羅、浮楽の3機。

 そして、今回仲間になった玖雀だけだ。

 これに隠身スキル上級を追加さえずれば、ストロングタイプのダブルに成長した秘彗も加わることとなる。



「マスターのおかげで得られた力です。マスターのお望みの通り、いかようにもお使いください」



 軽くローブの端を両手で掴んでお辞儀する秘彗。

 まるで貴族令嬢のような立ち振る舞い。


 白兎や天琉と混ざると、外見年齢相応な子供っぷりを発揮していたこともある秘彗だが、ストロングタイプのダブルとなったことで、随分と大人びた性格へと成長した模様。



「ヒスイ! 強くなったの?」



 俺との会話が終わったと見たのか、天琉が駆け寄って来て秘彗へと声をかける。



「あい? ヒスイ、ちょっとだけ背が高くなった?」


「背だけではありません。テンルさん程ではないですが、以前とは比べ物にならないくらいに強くなりましたよ」



 つい先ほどは天琉に対して、戸惑いを見せていた秘彗。

 

 しかし、ストロングタイプのダブルとなったことで自信が生まれたのか、俺が約束したことで心構えが変わったのか…………

 以前と変わらない様子で天琉と会話を交わす。



「テンルさん。いずれ追いついてみせますからね。マスターが約束していただいたんです。私を強くしてくれると…………、だから…………」



 秘彗はそこで言葉を切って、黙って右手の拳を突き出す。


 それは戦友同士で執り行われる簡易的な儀式。

 拳同士を突き合わせて、互いに健闘を祈る友情の証。



 秘彗に促され、天琉もゆっくりと右手を前に伸ばす。



 この2機に間にあるのは、友情や愛情と言ったモノで一括りにされるモノではない。

 もし、ただ一つの言葉で言い表すのであれば、きっとそれは『絆』というモノ。



「良かった…………、元通りの関係に戻って…………」



 思わず漏れる安堵。

 やはり天琉と秘彗には、今まで通りの関係で居てほしい。



 そんな2機の様子を感慨深く見守っていると、




 天琉の前に差し出された右手は、なぜか秘彗の突き出された拳を避け、そのまま通り過ぎて………




 ペタペタペタ




「あ~い~…………、ヒスイの胸、全然大きくなってな~い」




 右手で秘彗の胸をペタペタ触って、言ってはならないセリフを口にする天琉。




「……………………(怒)」




 ニッコリと微笑んだまま、こめかみに青筋を立てた秘彗は、亜空間倉庫から自身のオプションである杖を取り出す。


 以前はネジくれた枝を絞ったような杖であったが、『メイガス』が追加されたせいなのか、高位神官が持つような装飾華美なモノへと変化している。


 自分の背丈よりも長い杖を両手で握り締め、無言のまま思いっきり振りかぶって、未だ自分の胸をまさぐり続ける不届き者へと振り下ろした。




 ゴチンッ!


「あい!!」




 堪らず床へと倒れ込む天琉。


 しかし、それだけでは腹の虫がおさまらない秘彗は、倒れ込んだ天琉を指さして宣告。



「固有技、『魔女の楔』」



 次の瞬間、倒れた天琉の四肢がビタッと床にへばりつく。

 見えない鎖が天琉を縛り付けたように。


 完全に天琉を拘束した秘彗はトドメとばかり飛びかかり、馬乗りになってマウントポジションを確保。


 そして、そのまま………



「ふん! ふん! ふん! ふん! ふん!」


 ボコッ! ボコッ! ボコッ! ボコッ! ボコッ! 



 両手の拳を交互に天琉の顔面へと叩きつけていく。


 マウントポジションを維持したまま、天琉への制裁を続ける秘彗。



「あい! あい! あい! あい! 」



 拳が振り下ろされる度、天琉から気の抜けた悲鳴が上がる。


 天琉は手足をバタつかせ、何とか逃れようとするが、おそらくは重力制御を利用した秘彗の固有技『魔女の楔』がそれを許さない。

 重力の鎖に囚われ、床に貼り付けにされた生贄のようになっている。



「ふん! ふん! ふん! ふん! ふん!」


 ボコッ! ボコッ! ボコッ! ボコッ! ボコッ! 


「あい! あい! あい! あい! あい!」



 ひたすら秘彗にタコ殴りにされる天琉。


 ストロングタイプのダブルになったとはいえ、秘彗は完全後衛機種。

 その非力な力ではどれだけ殴っても、超高機種となった天琉に差してダメージが通るとは思わないが…………

 

 

「秘彗! もうそれくらいにしておけ! 子供が子供をボコっているのは絵面が悪すぎる!」



 慌てて止めに入る俺。

 本当に最近の俺は仲裁ばっかりになっているな。



「でも、マスター! このスケベ天使が私のおっぱいを…………」


「あい? おっぱいじゃないよ。だって全然膨らんでないんだもん。おっぱいはもっと大きくて柔らかいモノだよ」



 秘彗の言葉に、仰向けに縛り付けられながらも天琉が反論。

 殴られ続けている割にはぜんぜん応えてない様子。


 故に秘彗の怒りに油を注ぎ、



「いっぺん死ね!」


「あい!」


「だから止めろって…………」



 はあ……………

 元通りの関係に戻ったらいいなとは思ったけどさあ…………



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