TURN.17「超絶山場!究極のミッション!!(その1)」
飛空艇爆破。黒と深紅に染まった暗雲の中。黒い霧が立ち込めるステージへと真っ逆さまに落ちていく。
高原地帯である着地地点には当然マットなどのアイテムなど置いていない。運が良ければクッション代わりにはなるであろう木々や水辺も見つからない。ヒビ割れや小石の山など、覚束ない程度では済まない不安定な足場だけが皆を出迎える。
「よいしょっと」
ユーキはうまく体のスナップを利かせて着地。
『大丈夫かい?』「うわわっ」
メグはエイラに受け止められ不時着を免れる。
「危ない」
シラタマもその種族の特徴からかこの程度のアクシデントには何のリアクションもしない。段差から飛び降りた程度の表情で着地する。
「やれやれ、派手な演出だな」「仰る通り」
叉月とヴィラー・ルーの二人は言わずもがなだ。こんなアクシデントも一つのイベントとして頭に入れ、焦る気配を見せはしない。
「「げふっ!!」」
そして最後の二人。ホッパーとオーヴァー。
二人は他のメンツとは違って不時着。オーヴァーは頭から不時着で地面と一体化、ホッパーもダイノジで地面にクレーターを作り上げた。
「おーい、生きてる~?」
「生きてまーす……」
穴の中、ユーキはホッパーの生存確認をした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
各自連絡を取り合っている。
見渡してみると他のメンツが見当たらない。何処か違うエリアへと飛ばされたようである。
「なるほどな。最初は分断されるってわけな」
『お互い別のステージを攻略することになり、最後でボス戦に合流することになる。そういう考えてよろしいかな?』
「そう考えるのが妥当じゃないかなァ~? スノーハイトさんやウチのボスとかは攻略を開始したみたいだし? コッチも迷わず動きますかい?」
叉月、エイラ、そしてヴィラーの三人は推測する。
最初はそれぞれの三つの班に分かれ、目的地まで移動する。
ストーリー的には『黒騎士トリニティを倒すための特捜班として二十四人の戦士が戦場へと運ばれていたが、その最中で攻撃を受けて不時着』……という流れではないかと。
『ロビンソンさん達の班も動いたみたいだね。待たせるといけないし動いていいかも……もちろん、最低限のトラップとかの模索はするけどね』
「そんな小細工な罠でやられるようなメンツじゃないだろうよ」
メニュー画面のマップにはこのステージの地図が表示されている。どうやらミッションは始まっているようだった。味方として表示される他のメンバーはマップの奥へと移動を開始している。
「ここにあの黒騎士が……うーん! ウズウズしてきましたなぁ!」
「クネクネすんな気持ち悪い。おっさんが悶えてるところなんて誰も得しねぇんだよ、コラ。とっとと行くぞ~」
目的地。そこに黒騎士トリニティはいる。
今から始まるのは大ボスへ挑む前の準備運動のようなもの。向こうからしても軽い挨拶程度のデモンストレーションという事だ。
「ホッパー、脚を引っ張るなよ! 俺の活躍の邪魔をな!」
「こっちのセリフだ! 後ろから撃ったりしたら承知しないからな!」
ホッパーとオーヴァーの二人は相変わらずの対応である。
軽く受け流しているが、仲はそれほど悪くないという二人だ。『信頼してる』程度の言葉など交わす必要もないのだろう。
「……」
「あのー、タマちゃん? 私の顔に何かついてるの?」
シラタマはずっとユーキの背中を睨み続けている。
ジロリと眺めるのみ。体は小刻みに震えている。気のせいか知らないが『ふしゃーーー』と呟いているようにも見える。
(嫌がってるんだろうなぁ……)
ユーキは敵。手を組むなど真っ平御免。そんな真意がもう表情から読み取れるようだった。
「ガキども。気合入れるのはいいが先行しすぎんなよ。油断だけはすんな」
叉月は手ごたえのありそうなステージを前に首を鳴らす。大層なお祭りの気配にテンションは上がるばかりだ。
「そう心配すんじゃねぇよ。余計なお世話だぜ、そいつはよォ~? ボスに到着するまでの雑魚なんかに苦戦なんかするかっての、この俺様がな~?」
オーヴァーも気合十分である。
黒騎士トリニティの尋常ではない強さは軽くネットで情報を集めてはいたようだ。とはいえ道中の敵まで恐ろしく強いなんてことはないだろう。
そう思っているからかオーヴァーは自信満々に先陣を切っている。
「ああ、雑魚モンスター相手に……負けたら笑われる」
ホッパーは別の意味で気合を入れていた。
……この日まで、沢山の失態で仲間の足を引っ張った。
ボスに到着するまでの間にやられるなんてことがあったら笑い話にすらならない。もう足を引っ張るわけには行かないと両頬を叩いて、オーヴァーと並んで前に立つ。
「オラッ! さっさとかかってきな! 黒騎士トリニティ様の前に俺達を案内しろって言ってんだよ! ズべこべ言わずにトットとよぉ!」
高らかな咆哮と共にオーヴァー達の目の前にエフェクトが。
敵が出現したようだ。どうやら戦闘エリア内に足を踏み入れたようである。
「……ん?」
ひび割れた地面。モンスターの好む瘴気が立ち込むこのステージの中。ついに最初のモンスター達が彼らを出迎えた。
「「……んんん~??」」
オーヴァーとホッパーの二人は並んで首をかしげ、その敵を見上げている。
モンスター出現。その名は……【バーサクドラゴン】。
「「んんんんんッ!?」」
レベルは”150”。超大型モンスター。何が恐ろしいかと言えばこのモンスター。
「「ぎゃぁあああーーーーーーッ!?」」
本来であれば、別の高難易度ステージのボスキャラなのである。
「待て待て待て待て待て待て待て待てぇええーーーーーッ!!」
それが同時に“三体”。雑魚キャラなんて枠に当てはめるのなんておこがましい洗礼。先陣を切っていたホッパーとオーヴァーは悲鳴を上げながら逃げ出す。一時撤退というやつだ。
「どうした~? ザコ相手に負けるもんかって意地張ってた勇敢野郎は早くも尻尾を巻いて背中見せてトンズラってか~!?」
「いやだってアレ……いや、そんなことするわけ……ダァアアッ! クソがッ!」
ミッション開始数分後。ホッパーとオーヴァーは二度目の醜態を悲鳴と共に晒す羽目になった。全力疾走でその場を離れようとしたオーヴァーに叉月の挑発。
その発言が……まだ子供のオーヴァーの気合に火をつけた。
「ホッパァアア! テメェだけは間抜けに逃げるんだなァア! クソッ!」
「誰が逃げるかクソがッ! この野郎やってやるぅうーーーちくしょぉおおおおおおおおーーーーーーーーッ!!」
ヤケクソというか、無謀というか。
ホッパーとオーヴァーは涙目になりながらも三体のドラゴンへ突っ込んだ。
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