17歳、女子高生に告白されて狼の覆面をもらった僕は、27歳でプロレスラーになります!
杞優 橙佳
第1話 高校2年生の覆面男
誰の人生にも一度はモテキが来るのだろう。
僕にとってはそれが高校2年生、17歳の今日だった。
高校の体育館裏。
まだ寒さの残る春。
僕はクラスメイトから告白された。
背の低い、黒髪ロングの女の子。
普段は教室の隅で本を読んでいるような女の子だ。
その子が精一杯勇気を出して、僕にこういった。
「銀狼くんのことが好きです」
独島銀狼、それが僕の名前だった。
中学校のころ、友人に変わった名前だと言われた。
周りと同じことをしても、目立つ。
注目されることを楽しめる性格ならよかったのだけど、僕はそれが嫌だった。
みんなと同じになりたい。その一心で流行りのテレビを見て、漫画雑誌を読み、みんなが遊んでいるゲームをやった。
だけど次第に自分が人と違うことがわかってきた。
僕は、人に対して恋愛感情や性的興奮を覚えないアセクシャルだったのだ。
だから僕は――彼女の気持ちを拒否した。
「ごめん。そういうのよくわからない」
女の子の目元は黒髪で見えなかった。
彼女は泣いていたのだろう。
制服の袖で目元を拭い、そして。
「じゃあ代わりにこれを」
僕に差し出されたのは狼の覆面だった。
「もうあなたの顔を見たくないので」
「そうですか」
こうして僕、独島銀狼は覆面男になった。
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