脱衣所に従妹の下着が置かれていました(短編)
葵蕉
脱衣所に従妹の下着が置かれていました
いや……、落ち着け。
これは絶対にわざとでは無いはずだ。
偶然……、偶然に過ぎない。
なぜ……、従妹の
・~~~・
俺には、来年に高校生になる
従妹というのは血のつながりはあれどやはり似てないもので、よく周りから怖い顔と言われる俺の顔と違って、柚華の顔はとても朗らかで言わば普通に可愛い。
腰ぐらいまである長いロングへアが、一切の枝毛も無く綺麗で、その顔はまだあどけなさは残るものの、段々と大人びてきているのが分かり、ふとした仕草や表情にドキっとしてしまう。
俺の家では年末になると必ず田舎のおばあちゃんの家に行く。
他の人も何人か来るが、だいたい泊まっていくのは俺の家と柚華の家のみ。
それは小さい頃から今まで続いている。
今年も家に残っていたところで何もすることがないし、なんとなくおばあちゃんの家に来ている。
というか行かないと柚華がめっちゃ怒る。多分。
柚華とは小さい頃こそ、仲良く一緒にお風呂に入ったりしていたが、今はそういうわけにもいかない。
何故かって……それは俺が我慢できる気が到底しないからだ……色々な事を。
一緒にお風呂に入ったりなんかしたら、なんとか精神的な衝動を抑えることは可能だろうが、絶対に身体が反応してしまう自信がある。
そんな自信があるのはどうかと思うが、柚華だってもう身体が子供じゃない。
服の上からでもわかるぐらいに、しっかりとその胸はふくよかな湾曲を描いていて、出るところは出てる……という印象だ。
俺はこの通り既に従妹を遠ざけるという選択をしているのだが、柚華の方は一切その気が見られない。
何なら、去年の年末も俺と一緒にお風呂に入りたいと駄々を捏ねたぐらいだ。
その時は、なんとか柚華の親に抑えてもらって一緒に入ることを避けることができた。
だが、今年来てみて驚いた。
去年あんなに一緒に入ると駄々を捏ねていた柚華が一切お風呂に入りたいと言わなかった。
むしろ率先して先にお風呂に入っていってしまった。
柚華ももう来年は高校生になる。
そろそろ羞恥心というものを覚えてきてたとしてもおかしくない。
こう……急に積極的だったものが無くなると、少しさびしい気がしなくもないが、柚華もようやく精神的にも成長してきたいということだろう。
だが、未だに俺のことをにぃにと呼ぶのは止めてほしいな……。いや、最初にそう呼ばせたのは俺なのだが、まさかこの歳になってまでその呼び方で呼ばれるとは思っても見なかった。
なんて……思ってたのが数十分前。
「私お風呂上がったから、次にぃにが入っていいよ?」
と言われて意気揚々と脱衣所に来てみたら……。
明らかに柚華の
今、家にいるのは俺と従妹と、おばあちゃんのみ。
互いの両親たちは、おばあちゃんが預かってくれるからと4人で何処かに飲みに行ってしまったので、この家にいるのは3人。
おばあちゃんが先にお風呂に入り、その次に柚華、そして今俺が入っているから、この下着は俺以外の2人のどちらかということになるが、うちのおばあちゃんが可愛い下着を着ているとしたら、それこそ恐怖なので、必然的にこれは柚華のブラだろう……。
そう……推測できたのはいいのだが……。
何故、柚華のブラジャーがこんなところにあるんだ!?
せめて脱衣所にある洗濯機からずり落ちたとかだったらまだわかる。浅く入れすぎて何らかの拍子で落ちてしまったのかもしれない。
だが、明らかにそうじゃない。
洗濯機がある反対側、脱衣所の扉を開けたすぐ目の前に落ちている……。
これは故意か――。
これをわざと柚華がやったのだとしたら色々と問題がある。
わざと俺の目に付く位置にこれを置いた……?
いや、訳わからないだろ……。なんのためにこんなことを……?
はっ――!!
俺は慌ててブラジャーを避けつつ、脱衣所の周辺を調べる。
まさかと思うがカメラとか、置いてあったりしないよな!?
これは明らかに俺の考えすぎなのだが、柚華がわざとブラを置いたとして、俺がそれを見て何かをする様を録画しているのじゃないかと勘ぐってしまう。
と脱衣所をくまなく探してみたものの、なにかある様子はない。
こ……これは……。
もしかして本当に何らかの拍子にここに下着が落ちてしまっただけなのではないだろうか……。
そもそもあんなに精神的に子供の柚華が、わざとこんなことをするとは思えないし。
それはそれとして……、
そのまま置いておくのはちょっとなんか嫌だし、そうなると俺が洗濯機にぶち込むしか……。
俺は一度脱衣所を出て、廊下の方を確認する。
よし……、誰も来ていない……。
そして念には念をと、脱衣所の扉を閉め鍵をかける。
よし、これで誰かに見られる心配はない。
ふぅ……、と一息ついてから、地面に置かれてあるブラジャーを見る。
白を基調としたそのブラジャーは、水色の綿レースがカップにあしらわれており、柚華のイメージにぴったりだった。
いや、何をそんなまじまじと観察しているんだ俺は……。
俺は爆弾を持つように慎重にブラの肩紐の部分を指でつまむように拾い上げると洗濯機に入れようとした。
だが、ここで男としての本能が邪魔をする。
少しぐらい……例えば匂いを嗅ぐぐらいならやってもいいんじゃないかと。
浴室の扉の鍵は閉めてあるし、今なら誰かに見られる心配は0だといっても過言では無い。
それに、ここでなにかアクションを起こさないのはそれはそれで男としてどうなんだ……。
という謎の言い訳を自分にしまくって、なんとか自分の行動を正当化しようとする。
ここまでくるともう思いとどまることはできず、俺は柚華のブラジャーを鼻に近づける。
……汗を含んだ少し甘酸っぱいような、だけどちゃんと女の子の優しい香りがする。
全然嫌な香りじゃないし、むしろずっと嗅いでいたような――
っと!
あっぶねぇ!!
俺は自我を取り戻し、慌ててブラジャーを自分から遠ざけ、そのまま勢いで洗濯機に突っ込む。
危ない……危ない。
危うく、柚華に如何わしい感情を抱いてしまうところだった。
いや、もう既に抱いてしまっているのかもしれないが、俺はそれを認めない……。
いくら下半身に熱を感じてしまっていても俺は……認めない……。
Mission complete――
(思ったよりも簡単な任務だったな○ズ……)
そう心の中で金髪のオールバックサングラスに無線をすると、俺は風呂に入った。
……普段より入浴時間が長かったのは、ほら、あれだ。証拠隠滅のためだ。
・~~~・
その後、何事もなかったかのように、こたつに入りながら蜜柑を食べていると、柚華が「さむいさむいー」と言いながら隣に入ってきた。
いや、向こう側開いてるんだから、わざわざ俺の隣に来る必要ないだろ!
そう思ったものの、変に嫌がるわけにもいかず、柚華の侵入を許してしまう。
俺にぴったりと体をくっつけて、少しひんやりとした足を、俺の足に絡ませてくる。
そ……そんなにくっつくな……!さっきの件もあって変に意識してしまうだろうだろ……!
それに、お風呂上がりの石鹸の香りがまだ仄かに残っていて、それが鼻をくすぐり、さらに変な気持ちを抱きそうになってしまう。
「そういえば、にぃに」
そう俺が静かに悶々としていると、蜜柑の皮を向きながら、突然柚華が口を開いた。
「ん、どうした?」
「あのね?私の……ブラ」
「え……?」
「……可愛いと思った?」
え……まさかと思うが本当に……
「えへへ、洗濯機に入れてくれたのにぃにでしょ?」
わざと、だったのか――!?
「……でも、洗濯機に入れてくるなら、ちゃんと洗濯用ネットに入れてほしかった……かも」
俺がほうけたような表情をしていると、柚華はそう言いながらこっちをみてにっこりと微笑んだ。
脱衣所に従妹の下着が置かれていました(短編) 葵蕉 @Applehat
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