第173話 夫婦の閨は秘密練習場です




 身体の怪我が治ってから、当然だけどお嫁さん達との夜も再開してる僕。だけどアイリーンとのねやは最近、夫婦の夜とは少し違ったことをしていた。




「! できた……できました旦那さまっ。ほらほら、色がつきましたよっ!」

 はしゃぐアイリーンはカワイイけど、今は深夜だ。


「しーっ、お静かに。嬉しいのは分かりますが、抑えてくださいねアイリーン?」

「……あっ」

 慌てて両手で口を閉ざす。


 すると、目の前にいる彼女も・・・、アイリーンと同じように両手で自分の口を閉ざした。


 <アインヘリアル>


 僕のスキル<恩寵>おんちょうで、アイリーンに与えた彼女の新スキルだ。

 (※「第129話 王弟殿下のスキルです」

   「第137話 秘密のリモートなお嫁さんです」参照)


 アイリーンそっくりな形をした、真っ白な彼女の分身なソレは今夜、はじめて髪と肌の部分にだけ色がついた。



  ・


  ・


  ・


 レイアという一人娘ができたので、アイリーンとの夫婦の営みは自重することにした。

 理由は、アイリーンがすぐにまたお腹を膨らませてしまうと、母親としてレイアのお世話に支障がでてしまうかもと、僕が慎重になった。


 何せレイアはまだすっごく幼い。


 子沢山は望むところだけど、レイアの妊娠中にも襲撃を受けたことを考えれば、頻繁に妊娠と出産を繰り返すのはアイリーン自身にとっても、娘にとっても危険だ。


「(やっぱりもう1人2人はハーレムに戦える人が欲しい……)」

 一応、エイミーたち他のお嫁さんにも配慮する気持ちもある。子供が出来るかどうかは中々狙っては難しいことだけど、やっぱりハーレム内でバランスよくって思う。

 そう考えた時、ハーレムで一番戦えるアイリーンが身重でない状態にあるかどうかは、とても重要だ。


「(で、苦肉の策だけど<アインヘリアル>を安心して運用できるようにこうして夜、こっそり練習を重ねてるわけで)」

 アイリーンの性格からして <アインヘリアル> を封印したままじゃいられないだろうし。それに、イザって時にはなりふり構わず使いかねない。僕が襲われた時もそうだったし。

 (※「第137話 秘密のリモートなお嫁さんです」参照)


 なので使ったとしても大丈夫な状態にする事を目標に、こうして二人きりになれる閨の時間を利用して、秘密の特訓をすることにしたんだ。




「時間はかかりましたが、色がついたことで遠目には白い服を着てるアイリーンっぽく見えますね」

「えへへ、これなら誰かに見られても大丈夫で―――あいた!?」

 僕はアイリーンのおでこをペチンと軽く叩いた。


「ダメですよ。まだ目が真っ白ですし、色がついたところも一色で不自然じゃないですか。むしろ近くで見られたら白一色の時よりも不気味に見られますよ」

「あぅう~、やっぱりまだダメですか~……結構頑張ったんだけどなぁ~」

 実はこの特訓、密かに僕のスキルの検証も兼ねてたりする。


 僕の<恩寵>で与えたスキルなわけだけど、本人の努力でどれだけスキルに影響を与えられるのか? それとも与えられないのか?。


「(自分自身を見ながら<アインヘリアル>で作り出す分身をイメージさせるのは成功みたいだ。まだまだだけど、鏡を使い出したら色がつくまで早かったし、形もよりリアルになった気がする)」

 ここまでで分かったのは<アインヘリアル>の場合、自分の分身を作るので、見た目はどれだけ自分自身を正確に想像イメージできるかがコツっぽい。


「(動きの方は、身体に染み付いてるから自然な動かし方がすぐに出来てるし、時々完全にシンクロした動きしてる時もある。やっぱり自分のイメージや感覚がかなり重要そう)」

 アイリーンが咄嗟に反射的な動きをすると、<アインヘリアル>もまったく同じタイミングで同じ動きをするのが面白い。


「目標はやっぱり、身体の大きさを変えるまででしょうか?」

「ええ。自然な色がつけば、とりあえずアイリーンと瓜二つにできますけど、それで行動させてしまいますと、妙な場所で見つかればおかしく思われますから。身体の大きさの変更が出来れば別人と誤魔化せます―――何なら髪や肌の色を違うものにできればさらに良いんですけどね」

 僕の掲げる目標を聞いて、アイリーンがどっと疲れたように ” はぅ~ ” と弱音を漏らした。


 正直、身体の形や大きさを変えるのは一番難しいと思う。


 何せ<アインヘリアル>はあくまでスキル使用者アイリーンの分身だ。アイリーン自身の姿形を取るから、自分の姿をしっかりイメージすることで色や形状が本人に近づく。


 けど形状を変えるってことは、本人そっくりから遠のくってことだ。


「(自分の背丈が高かったり低かったりだけでも、なかなかリアルにイメージしにくいだろうし)」

 だけど人に見られても問題ないようにするためには、アイリーンの姿からなるべくかけ離れつつ、それでいて自然な人間に見えないといけない。




 それが出来ないうちは<アインヘリアル>を自由に使わせられない。僕は心を鬼にして、アイリーンに深夜特訓の続きを促した。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る