弱小ショタなのでビキニアーマーを嫁にした

ろーくん

◆第一編

第一章:ショタっこ王子様の生存戦略

第01話 お嫁さんはビキニアーマーです




 結婚式が終わった日の夜。



「ふっ、ふふ、ふちゅっ、ふつつ…ふ、不束者ではありますがっ、す、末永くよろしくおおおお願いいたしましゅっ――――ああ、か、噛んでしまったぁ~~っ?!」


 広く豪華なベッド。閉じられた天蓋の幕に二つの対面した影が映ってる。


 目の前で三指みつゆびつきながら頭を下げ、挨拶の言葉をたった今噛んだ女性は “ 僕 ” のお嫁さん―――今日から妻になるヒトだ。



 カチャッ…ガシャッ……


 顔を赤らめながら着用していた鎧を脱ぎ始める。


 両肩を覆う過剰な装甲パーツは三重に重ねられてて、肩から二の腕の上のほうまで守るようにおおってる。

 お嫁さんが固定具を外して上へ持ち上げると、繋がってる首回りの部品パーツも一緒にはずれた。首、そして肩まわりから金属の鈍色にびいろがなくなって、肌色だけになる。


 重さなんかこれっぽっちも感じない、慣れた手つきでベッドの脇に落とされ……


 ――――――ドッ…シャッァララァァ…ガラン、ガラン!


「(すごくけたたましい音が……ものすごく重そう)」

 ちょっとだけ呆れながら、僕はあらわになったお嫁さんの肩や二の腕を眺めた。とっても細い。


 確かに、並みの女性と比べたらすこし堅そうな、筋肉の凹凸が肌の表に薄っすらと見えるような見えないような……。

 でもパッと見たら、か弱い女のヒト独特の柔肌と表皮のソレ。重そうな鎧の一部を軽々と持ち上げる力があるようには、とてもじゃないけど見えない。


「………」

 恥ずかしそうに脱いでる様子は初夜に挑む、初々しい女性そのもの。


 事実、お嫁さん はまだ16歳―――――その胸の鼓動は今、それはもうすごい勢いで打ち鳴らされてるはず。



 ガチャッ、カチャカチャ……カシャン!

 ガチャッガチャッ……ドスッ、ドスンッ!


 腰の側面からお尻を覆ってるスカートのように付いてた装甲を外して、やっぱりベッドの脇へ。


 床に落ちる音が生々しくて重低音がきいている。一体何キロあるんだろう? 音の感じからして、最低でも2……ううん、3キロ以上はあると思う。

 しかもそれは半分に分離したもの。なので両方合わせたら、腰の覆いの部分だけで5キロ以上を身に着けてたってことで……



「(前々から薄手な鎧だなーって思ってたのに、全部合わせるとこれでも20kg以上になるんだ……)」

 残ったのは彼女の鎧の核心部分だけになった。


 F…ううん、Gカップはありそうな豊かなバストを抑えている金属のブラと、保護できている領域が本物の下着と比べても明らかに半分以下しかない、かなり際どい金属製パンツ――――――俗に言う、ビキニアーマーだ。



「(鎧の下は本当に下着も何もつけてないんだ。冷たくないのかな?)」

 せめてアンダーウェアくらい着ればいいのに、なんて考えかけた僕はすぐに思い直した。

 この世界・・・・にはまだそんなものはないんだった。


「(化学繊維とかそーゆーのもないし、どんなに薄く仕立ててみても鎧の下に着る服としては厚手になっちゃうんだっけ。伸縮性とか通気性とか、機能美を追求したものなんて、技術的にもまだ思いつく事もないんだろうなぁ)」


 カチャッ、カチャッ……ン…


 さすがに次からは自分の恥ずかしい部分を晒すことになるので、鎧を外す手が少し遅くなる。


 けれど後ろのホックにあたる留め金が外れると同時に、その重さから自然と金属ブラが落ちた。また抑えつけられていた胸が、そのお肉の重さでこぼれ――――ううん、爆発するように飛び出した。

 これで自由だー! と乳房の叫び声が聞こえてきそうなほど、迫力たっぷりにたゆんと揺れる。




「………っ」

 さすがに恥ずかしすぎるみたいで、お嫁さんはすぐ両腕でバストを隠した。そして金属ブラを摘まみ上げると、手首のスナップだけでベッドの外へ投げ捨てる。


 次は最後……もっとも大事な部分。他のヒトに見せるのはためらう、股間部分の覆いを取りはずしはじめた。


 カチャン、カチャッ…


 顔は真っ赤、もう恥ずかしすぎて今にも目を回して卒倒してしまいそう。


 けれど、意は決しているんだと自分の中で言い聞かせたみたい。首を数回左右に振ると表情がいざ決戦に向かわん! みたいな感じに変わった。


 カシャン! …ガチャッ


 無造作に投げられた金属パンツがベッドの脇……床の上で先に待っていた他の鎧の仲間達パーツに迎えられ、金属同士がぶつかり合う音を立てて、一番上に乗っかった。

 ベッドの上には、胸と股を隠しながら羞恥に染まってる彼らの、全裸になった主がいる。




 そして脱衣を終えたお嫁さんに、対面している僕はにっこりと微笑んだ。


「…じゃ、寝よっか♪」

「……へ? え、あ…、はい?? ね、寝る…とは…ええと」

「何いってるの、言葉通りだよ? ほら、こっちこっち! もっとそばに寄って。ちゃんと寄り添ってくれなくっちゃ駄目だよ、僕のお嫁さんなんだからっ」

 ポカンとしている彼女の手を引っ張って近くに寄せ、一緒に掛布団をかぶる。


 そして布団の中、寝巻きパジャマのままの僕は全裸の彼女に抱きついた。


「あの…あの…? その、わ、私めはその、どうしたら…?」

「寝るの! ほら灯りけすよー? 夜更かしはお肌のたいてき・・・・なんでしょ? はい、いい子でおやすみなさ~い」

「???? は、はぁ…お、おやすみなさいま、せ…???」


 

 こうして僕の新婚初夜は終わった。お嫁さんは、全裸で僕の抱き枕となって睡眠を共にしただけ。


 覚悟して臨んでくれて悪いけど、彼女と夫婦の営みを行う気は今のところまったくない。だって……


「(だって僕はまだ8歳だもんっ♪)」




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