小悪魔少女が純情熱血王子に教える下克上ハーレムの作り方!

兵藤晴佳

第1話 北の国の熱血王子がセクハラぎりぎりの試練にさらされる

 北の果てにあるヘカテ王国が魔女や悪魔憑きといった者たちの占いやまじないの追放を始めて、これで2代目になる。

 人払いした玉座の前にひざまずいて、王弟ホレイントは直言した。

「兄上は変わってしまいました」

「別に変わらん。多く子を儲けるのは、王たる者の務めではないか」

 聞き流す兄王エインファルデュールに、弟も負けてはいなかった。

「父上は宮女を駆り集めてまで、そのようなことはなさいませんでした」

「即位してすぐ迎えた妃は22年前、私をすぐ生んだ。その6年後にもお前が生まれた。世継ぎに何の心配もなかっただけの話だ」

 黒髪の流れる兄も言い淀みなく、自信たっぷりに返事する。

 今年、16歳で成人となった短い黒髪の弟は、言うまいとしていたことを口にした。

「妃を迎える前の兄上は、もっと女性に控えめな方でした」

「だからこそお前は、そうでない市井の娘を連れてきたのではないか?」

 鼻で笑い飛ばされて、ホレイントは唇を噛みしめる。

「今は、それを悔いております。だから……」

「宮女のひとりを逃がしたのか?」

 そこで、金色の長い髪を揺らして、その傍らに立った女がある。

 王妃グレムジュは、兄王の耳元で囁いた。

「あなたの命じたことを妨げたのです。相応の罰をお与えください」

 兄は、その場で態度を変えた。

「ホレイントよ。お前はかつて、私に免じて許された罪がひとつあったな」

「兄上が成人なさったときのことですね」

 王妃を睨んで答える弟に、国王は、ゆっくりと頷く。

「お前は、かつて王位継承の儀式を妨げたではないか」


 6年前のことだ。

 兄は成人を迎えたとき、王位継承者となるための儀式を行った。

 遠方から高僧を招いて邪念を祓ったのだ。

 このとき、その邪念に巣食うものが、実体を伴って現れたのである。

 小さな2本の角と、コウモリの翼を持った娘。

 護衛の兵たちが、剣を抜いてその何者かに襲いかかったときだった。

 幼い王子ホレイントは、刃の前に身を晒していたのだった。


 弟は毅然として答える。

「あのときは、分別のない子どもでした。見過ごすことはできなかったのです」

 その記憶も、おぼろげなものになっていた。

 ただ、後で分かったのは、それが女の夢魔サキュバスだったということだけだ。

 夢の中に現れては、男を誘惑し、堕落させるという。

 兄王は黙り込んだが、妃は違っていた。

「なかなか堂々としていますね。では、これで許してあげましょう」

 意味ありげに笑って、兄の耳元で再び何か囁く。

 兄王のほうも苦笑いして、ホレイントにこう告げた。

「宮女たちの下着に、数字が隠してある。それを当ててみよ。明後日の朝に間に合わねば……殺す」

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