土曜日の早朝

 土曜日の早朝。

 まだ外の景色は、夜と朝が混ざりぼんやりしてる。

 朝日の光は弱く柔らかい。


 洗面台の鏡の前で、にっこり微笑んでみる。

 その後百面相よろしく、色々な表情をつくってみた。


 にこ〜。

 むかっ。

 だら〜。

 きりっ。

 横斜め。決め顔。


 どんな顔をして、カナコに話をすべきか?



 朝食用に、帆立の缶詰をいれた簡単炊き込みご飯を仕込んでから、僕はまたソファに潜り込んだ。


 シングルベッドには、カナコがまだ寝てる。


 天井を仰いだら、ふと気になって。

 ソファ脇のサイドテーブルに、手を伸ばす。


 スマホを手に取り、カクヨムの画面を開けると、更新していないのに、ありがたいことに応援コメントが入っていた。


『私が元カノさんなら、フワピカ戦士さんといた方が幸せな気がします』

 応援コメントにはそう書いてあった。

『ありがとうございます。元カノとはじっくり話してみます』

 僕はそう返信をしてカクヨムの画面を閉じた。

 

 僕の家は1Kのひと部屋だから、ソファもベッドも同じ部屋。当然ベッドに寝てるカナコもすぐそばにいる。


 目を瞑ると、カナコの規則的な寝息が聞こえる。穏やかな気分になった。


 僕は睡魔に誘われウトウトとして、ふたたびの睡眠の入り口で、まどろみ始めていた。



 んっ?

 誰かが、僕を抱きしめてきてる。


「カナコ」

「しばらく、こうさせて」


 炊きあがったらしい、帆立の炊き込みご飯のいい匂いが部屋に漂っている。


 抱きついてきたカナコの細い体が、微かに震えてた。





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