塩むすび

 米を炊く。


 知らない銘柄。

 なんてことない

 5Kg1500円ぐらいの米だけど、

 炊きたては美味い。


 今夜の僕の晩御飯は

 豚汁に焼き鮭に、

 塩むすび。


 鮭を入れようかと思ったが

 あえての塩むすび。


 お笑い番組を見ながら

 ご飯の時間だ。


「いただきます」


 誰もいないのに、

 僕は

 いつものように

 手を合わせ

 いただきますと

 小さく声に出す。


 僕だけの

 咀嚼音が部屋の空気に

 溶け込む。


 美味いのに、

 なんでだ。


 泣いていた。

 なんでか分からないが、

 僕は上手くいかない

 ことだらけで

 泣いていた。


 友達に言えば良いのに、

 こんな晩は

 誰かと居ればいいのに

 平気なフリ。


 ふたつめの塩むすびを

 食べようと

 テーブルの皿の上に手を

 伸ばした。


 そこで携帯電話が鳴る。


 カナコ。


 今さらなんで

 電話してきた?


 二股された彼女。


 僕は電話に出なかった。



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