乙女ゲームのヒロイン辞めます!~転職先はRPG~
カシマ シノ
プロローグ さようなら乙女ゲーム
優しかった幼馴染の
可愛い後輩の
俺様な
ちょっと変わった転校生の
乙女ゲームのヒロインである私は、彼らと何度も何度も恋をした。
特に、人気キャラクターである東條先輩とは胃もたれを起こすくらい恋をしたと思う。
あまりにも恋をしすぎて途中から数えるのはやめてしまったけれど。
そんな彼らのことが、本当に好きだった。
この気持ちに嘘偽りはない。
でもこの際だから正直言いたいと思う。
私は飽きてしまった。
ただひたすら出会って恋をするこの
というか私、恋愛ものより冒険ものの方が元々好きだし。
どちらかと言えばRPGの主人公になりたかったし、そもそも乙女ゲームのヒロインという立ち位置が私に向いていないんだと思う。
だから、私は決めたの。
この乙女ゲーム『ドキドキ! 学園メモリーズ♡』のヒロインを辞めるって――。
…とまあ、意気込んでみたものの、もちろん私の意思だけで簡単に辞められるものではない。
そう思っていたのに、奇跡は起こってしまったのだ。
「貴様、中々愉快な願望を抱いておるのう」
いつものように学校へ向かおうとしていた私の前に、今まで出会ったことのないイケメンが現れてそう言った。
「だ、誰ですかあなた……!?」
イケメンはふわふわと宙に浮いている。
しかも、まるで天使のような神々しい格好をしていた。
直視すると少しまぶしい。
「余か? 余は
「
ちょっと待って、
「
「はあ……」
そんなドヤ顔を決められても反応に困ってしまう。
本当に何しに来たんだろうこの
「随分
私の願い?
それってもしかして……!
「私を、RPGの主人公にしてくれるってことですか……!?」
「要するにそういうことじゃ。自分の住む
「
ずっと憧れていたRPGの主人公についになれる。
夢の実現を前に、私の胸はイケメンに壁ドンされた時より高鳴っていた。
「ただし、
先程まで陽気な雰囲気だった
どんな条件をつけられるのかと、私は思わず息を呑んだ。
「もし
意味深にそう告げる
「もっと難しい条件をつけられると思ってましたが、それなら大丈夫です」
「ほう、余裕そうじゃな。それほど条件を満たさない自信があるということか?」
「ええ、恋愛なんてもう一生分しましたから。誰かにキスすることも、されることもありません」
「ふっ、力強い良い瞳じゃ」
その瞬間、私の体が白い光へと包まれていく。
「これから貴様をRPGへと送り届ける。初心者の貴様のために、余の部下を先に送り出しておいた。まずはその者と合流し、RPGに慣れることじゃ」
白い光が強くなっていく。
それと同時に、意識もかすみだしてきた。
ああ、本当に……
さよなら、イケメン達。
それと、なぜかやたらとユーザー人気があったお兄ちゃん。
私、立派な主人公になるからね。
「それでは、健闘を祈る」
楽し気なその声を最後に、私は完全に意識を手放した。
――誰かの声が聞こえる。
これは、男の人の声……?
「……ねえ、ねえってば」
体を揺すられる。
どうやら私は眠っていたみたいだ。
どこの誰かはわからないけど、起こしてくれてるのかな。
ありがとう、今起きるね。
「あ、やっと起きた」
目を開けると、すぐ近くにとんでもない
それこそ、唇が触れそうなくらいの距離に。
「おはよう、寝坊助の勇者様」
誰もが見惚れるような麗しい笑みを浮かべ、
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